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2022年6月の記事一覧
『それから』は植物小説なのか?
『それから』が緑と赤の世界が対比される小説であり、植物が多く描かれる小説でもあるという程度の話は今更繰り返すまでもないだろう。しかし案外、何故植物が多く描かれる小説なのかということはこれまで殆ど議論されてこなかったのではなかろうか。(新聞小説なので露骨に書けないところを花で誤魔化しているのではないかという見立てが小森陽一氏にはあるように思われる。後は江藤淳が山百合にアレゴリーを見出しているぐらい
もっとみる読み誤る漱石論者たち 阿刀田高③ 『それから』はどうしてそれから?
読み落としは読み誤りとは違うのではないか、気が付いていないことがあるだけで、読み誤りとは言えないのではないか、
この記事を読んでそんなことを思う人がいるかもしれない。しかし私が言っているのは、最低限ここまでは読めていないといけないという最低ラインに達っしていないのに解った風に書いてしまうのはどうなのかということだ。清を「ねえや」にしてしまうのは誤読だ。汚染データだ。漱石が意図して『三四郎』で
読み誤る漱石論者たち 阿刀田高① 『坊っちゃん』はそう単純な話ではない。
それにしてもどうしてこうも沢山の人が漱石について語ろうとするのだろうか。そしてことごとく漱石作品を読み誤るのは何故なのだろうか。そんな近代文学2.0の根本的な問題を改めて考えさせてくれるのが阿刀田高の『漱石を知っていますか』(新潮社、2017年)だ。
谷崎潤一郎作品に関しても阿刀田高の読みは迂闊であり、凡庸で型通り、しかも話を作るために読み誤っていた。丁寧にストーリーを追いながら、何の疑問を