過去を勲章にしない
過去の自分の蓄積は、今の自分を作り出しています。
ですので、誰かに「自分のことについて」話すとき、「今日に至るまで、自分がどういう経歴を辿ってきたか」というのを話すことは少なくないと思います。
ここ、noteでは特に自分の感じていることや経験を通して、何か発信していきたいと感じている人も多くいるでしょう。
例えばある人が、過去に何かつらい経験をしてきたとします。
「この経験をバネに、こういうことを伝えていきたいんだ～！」とか、そういう上昇志向のエネルギッシュな語り口になることがある一方、「この経験があるので、私はこういう人間なんです」というアイデンティティの証明のために「経験」を利用している人もいます。
はじめにお断りしておきたいのですが、私はどちらがいい悪いという話をしたいのではありません。あなたが思うことがすべてです。好きに生きればいいのです。
ですが、後者……自分の過去の経験を勲章として大事に持ち続けることは、場合によってはその人の人生の足を引っ張り続ける足枷にもなりかねないので、そのことを今日は記事にしたいと思いました。
自分が縛られていることに、気づかないことも結構多いからです。自分を振り返る材料として、聞いていただけたらと思います。
人は「それなりの器」を無意識に演じる
掲題では「過去」を持ち続けることについて、とスポットを当てましたが、見直してほしいのはそれだけではありません。
例えばＨＳＰであるとか、ＭＢＴＩ診断、医師から告げられた診断だったり、知り合いから貼られたレッテルだったり、親や上司から言われた「お前は〇〇なヤツだ」という人格評価だったり。
そういった外部から与えられた「自分が何者であるか」という見方を、自分の勲章にしていないでしょうか？
もしあなたが自分の中の感受性の強さを自覚して、「自分はＨＳＰである」ということを外界に大々的に掲げるようになったとき、あなたの気持ちは少し楽になるかもしれません。
ですが、本当は大勢の人と関わっていきたいのに「自分はＨＳＰだから、人の集まるところは行かない方が自分の為だ。その環境は自分に合わない」と本心に従わない言い訳にし始めたら、思い切ったことは何もできなくなるし、成長だって無いのです。
似た話題の過去記事『自分を「非力」の位置に置かない』も、よければ参考にしてください。
「自分はこういう人間だ」と決めてしまったとき、人は皆「こういう人間」に相応しい、それなりの器に収まろうとします。
あなたが「まだ入ったばかりで何もわからない新入社員」という立場を得たなら、あなたは無意識に「まだ入ったばかりで何もわからない新入社員」という役に入り込みます。
積極的に電話を取り、先輩のアドバイスのメモを取り、上司に逆らうことはなく、見様見真似で取引先の人にニコニコします。
その行動をとるのは、あなたが「自分はまだ入ったばかりで何もわからない新入社員である」ということに同意しているからです。
これが、「入社したばかりだけどハズレの会社だったので、来月にはさっさと退職することにした新入社員」だとしたら……あなたがそのことに同意しているとしたら……、振る舞いはもっと雑になるかもしれません。
つまり、「過去につらい経験をした」場合、それを勲章のように大切に持ち続けると「つらい思いをするのがお似合いのヤツ」に成り下がります。
ほとんどの人は「そんなヤツになりたかねーわ！」と頭では思うでしょうが、この世に存在する「つらい思いをするのがお似合いのヤツ」は（無意識の人が多いとしても）、ほぼ百パーあえて好んで「つらい思いをするのがお似合いのヤツ」という役をやってます。
「なんでわざわざそんなことすんの？？」と思ってしまうでしょうが、詳しくは過去記事『自分を「非力」の位置に置かない』に書いてありますので、今回の記事では省きます。
平凡な一般人がハイブランドの服を普段使いするのを拒絶して、着慣れた毛玉だらけの服を着てしまうみたいに……私たちは気づいていなくても、無意識に「自分の程度」に合った振る舞いをします。
気を付けていなければ、誰しも無意識にやってしまいがちなことなのです。
自分を低く見積もるための材料に、過去や外部評価を使わないように注意を払ってください。
「過去」が「今」の価値基準を鈍らせる
やりがちなことですが、就活生は「大学で学んだことを活かせる仕事は……！」と企業を探すことがあると思います。
過去からひと続きであることというのは、とても安心するものです。
その就活生はもしかしたら、振り返れば大学の進学先も「国語が得意だから人文学部かな」とかで決めていたかもしれません。
私は、この「得意」というのは結構罠だと思っています。
その「得意」は、純粋に好きで～とかではなく「経験を積み重ねてきたから、それなりの価値になっているだろう」と、自分が評価しているもの……という意味だったりするからです。
「心」で価値を感じていないのに、「頭」で価値があると思い込んでしがみついていると、当然「心」はついてこないですから、どんどん苦しくなっていきます。
他の記事でも何度かお話ししていますが、今の社会は特に「一途に努力を重ねること」「継続すること」が評価されるようにできています。
ですが、それは土の時代の価値観であり、これからの風の時代は「フットワークの軽さ」や「流動性」が重宝される時代になっていきます。
これはもう、絶対だと私は思ってます。30年後にそうなってなかったら「違うじゃねえか！！」と文句を言いに来てくれたっていいわ。
上に貼った『 “継続する”と決めないで』という記事も読んでみてください。
とにかく、「私はこれの才能がある！これで生きていくわ！」というのが見つからなかったとしても……興味のあることは何個でもなんぼでも出来たっていいのです！
むしろ、「その方がいい」まであります。
経験や蓄積という錘を引きちぎってください。
今のあなたがやりたいことが、今のあなたがもっともやるべきことであり、その現実以外はどうでもいいのです。
「実績がないし……」とか、「経験がないし……」とか、そんなんもどうでもいいのです。経験なんていうのは、人生のおまけみたいなものです。あなたの“人となり”を誰かに伝えるとき、多少は説得力出るかな～くらいのものと思ってください。
経験から“器”を拡大すること
何故「過去を勲章にしない」ことが大事なのかというと、一言でいえば「 “今”の自分に制約を設けないため」です。
制約を設けないで済めば、心理的に自由になれるしアイディアの幅も広がります。
そして何より、意識を使った“現実創造”の観点から言っても、よっぽど生きやすくなるのです。
自分で自分に貼った負のレッテルを掲げ続けることは、「望みの現象化」の足を全力で引っ張り続けるからです。
意識と現実創造の仕組みについては、上記の記事『「なぜ意識は現実を変えるの？」って話』をお読みください。
セルフイメージをアップデートすることに関しては、前回の記事『「名前」のセルフイメージは、幸福度の鍵』も合わせて参考にしてみていただけたらと思います。
さて、ここまで端的に言えば「経験なんかにこだわるな～！」ってことを書いてきたのですが……結局のところ“ものは使いよう、意味は捉えよう”であるということも、お伝えしておかねばなりません。
誰だって、自分の歩んできた歴史……その道のりには思い入れがあるものです。過去に経験してきた辛さや悲しさ、それらを「そんなもの意味がない！さっさと捨てちまえ！」なんて一蹴するつもりはありません。
意味があっていいのです。それは、あなたの大切な人生経験なのですから。
大切なのは、その出来事にどんな意味を与え、どんな風に活かしていくかです。
このことについて言えば、冒頭で例に挙げていたように「この経験をバネに！」というのは、とても健全な捉え方であり活かし方だ思います。
今が不幸だと感じるならば、今を「最終結果」の位置に置かないでください。
「（原因）あの出来事があった⇒（最終結果）だから今の自分は不幸だ」
じゃないのです。
「（原因）あの出来事があった⇒（途中結果）だから現状、自分は不幸だと感じてしまうけど⇒（最終結果）それを経験できたことで未来はより良くなる」
というように、その先によりよい最終結果を想定してください。
物語作品を読むと多くの場合のストーリーがそうであるように、あなたの辛い経験を、あなたが今後辿る「最高の人生の伏線」と決めるのです。
そしたら、あなたは自然と「自分に最高の人生を送らせる」という使命から目をそらすことができなくなってきます。
先に書いた表現を使うなら、自分に「これから最高の人生を送る人」の“役”を与えるということ……言い換えれば、自分にそれ（＝最高の人生）なりの器を与えるということです。
自分のこれからの歩みがより力強いものとなるよう、あなたの大切な経験を役立ててください。
あなたの“器”が、今までもそしてこれからも、より大きく大きくアップグレードされ、輝きを放っていくように。
あなたが大切にしている“経験”だって、そんな風に使われることを喜んでくれるはずですから。
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