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人はなぜ歌うのか。ダーウィンの問いと私の答え

7月に入り、晴れると30度を超えるようになりました。夏は好きです。8月生まれです。

暑い日が続くよ でも
僕にはそれが ちょうど いい気持ち

『MTN』忌野清志郎

記事を書き始めたときは晴れてたので。
田中弥三郎です。鍼灸マッサージ師をしています。

先週に引き続き、NHKの番組『フロンティア〜人はなぜ歌うのか』の感想記事です。
前回のはコチラで。

音楽と脳の報酬系が密接に関係している、ということでした。感動・感激してしまって長くなったので、その続きを。
前回の調査・研究は主にイギリスで行われました。つぎは異なる文化圏での調査が必要です。アフリカ中部、カメルーンにある『バカ族』の集落で取材されました。

音楽の民『バカ族』

「10~20万年前のDNA(もしくは遺伝的特徴)」を色濃く残している民族

葉っぱと木の枝でできた家に暮らし、食べ物を求めて森の中を少しずつ移動しながら生活をする、狩猟採集の生活をしています。
ブッペンジャーさんと妻のオディールさん、その子・孫や兄弟の家族など50人ほどの集落。
鍋とナタのような刃物、衣服など持ち物は最少減。
彼らの生活には、音楽が溢れていました。

音楽が言語よりも大きな意味を持つ

太鼓の手入れをする男性。革の張り具合を調整しがてら叩くうち、自然と音楽が始まりました。
用事も放ったらかして手を叩き歌う女性たち。歌うのは主に女性で、男性は太鼓や木を叩きます。

複雑に重なり合う歌声やリズム、盛り上がりのピークを迎える直前!
唐突に歌が終わり、それぞれの用事に戻り、それぞれの時間が動き出します。

川で洗濯をするときも、ウォータードラム(太鼓の代わりに水面を叩く)の音楽があり、
夜の火を囲んだ昔話にも音楽を組み合わせて、大人たちは子どもに大切なことを伝えます。
最も大事にされているのが、狩りの歌。狩りで獲物が獲れるように願う歌です。

「皆で歌うことを『ベ』といいます。私たちは言葉ではなく歌で、仲間になろうと望まれていることを理解します。森の精霊だって歌を聞くと『ベ』に呼ばれているんだなと思って、森から出てくることがあるんですよ」

最年長の男性の言葉

彼らの音楽と生活

完全4度とポリリズム

彼らの音楽をマルチトラックで録音・分解して、分かったことがありました。
7人の女性たちが歌う音楽は、一聴するとリズムもメロディもバラバラ。ですが詳しく見てみると、3つの旋律になっていました。

  • レとドの音を歌うメロディ

  • ソとファの音を歌うメロディ

  • ラとソの音を歌うメロディ

これらが同時に響いたとき、『完全4度』と呼ばれるとても美しく心地良い響きが生まれるのです。

さらに、異なる拍子が同時に進行する『ポリリズム』も発生しています。それぞれ違うリズムが重なることで、グルーブ(ノリ)を感じるようになっていました。

生活の中の音楽

彼らの音楽は、生活そのものに組み込まれています。誰かが手を叩けば自然と音楽が始まり、みんなで歌いだします。

「みんなで歌うのがバカ族のやり方です。妻も1人では歌わない。1人で歌うのを聞いても、誰も妻の歌を良いとは言いませんよ」

ブッペンジャーさんの言葉

彼らの音楽には楽譜はありません。即興で複雑なメロディやリズムを重ねて呼応しあうのです。
途中でパートが変わることもあります。すると空いたパートに別の誰かが入って歌い出すのです。もちろんそれも、即興で進行していきます。

みんなで歌うことで生まれる「完全4度」と「ポリリズム」。予測が複雑になることで、脳は喜び報酬系が活性化します。大量の快感物質が出ることで、身体を動かす「運動野」が働き、踊りたくなるのです。

彼らは初めて音楽に触れたときから、全体の一人として参加します。他の人が歌っていないパートに自分が入ることで、より緻密で充実した音楽になります。
それぞれが自分のメロディを歌い重ね合うことが、森の中の生活で集落全員が自発的に役割を果たし、協力することにつながっているのです。

バカ族の音楽から得られた、学者の見解

「集団の絆」というワードは、音楽の起源を考えるうえで外せません。
ビートには沢山の人を同時に動かす力があり、他人と一緒に身体を動かすことは、同じ体験の共有です。
ともに歌うのは、「助け合える」というサインであり、社会動物であるヒトにとって、「報酬」を感じる行動です。

報酬系は、食事など生存上に必要なもので活性化します。音楽が報酬系を刺激するということは、ヒトの生存に必要なものである証明になります。

動物は群れの中で、互いにグルーミング(毛づくろい)をしてコミュニケーションを取りますが、それは一対一の関係です。
ヒトは、共に歌うことで、無限大に関係を広げられます。大きな群れで行動するヒトにとって、重要なコミュニケーション手段なのです。


なぜ歌うのか、の答え。「集団の絆」

脳科学の観点から、異なる文化圏で音楽と脳の働きを考察し、また異なる動物や文化の側面も考察しました。
「ヒトは、人とつながるために音楽を手にした。」
つまり、「集団の絆」です。
これが現時点で最も有力な答えでしょう。ただこの実証は難しい。音楽は化石にはなりませんから。

では、一人で歌ったり聞いたりすることは、「集団の絆」説でどう説明するのでしょうか。
「誰かとつながっている」という潜在的なシグナルではないでしょうか。「集団の絆」に報酬を感じる脳の働きは、ヒトが最近手にしたものではありません。
太古のメカニズムが、現代でも働き続けていて、たとえ一人であっても歌うことで、誰かとのつながりを感じているのではないでしょうか。


自分の体験と重ねて考える

ここからは私の感想です。

「集団の絆」と音楽

人が集まる場には、必ず音楽がある印象です。
祭りでもそうですし、甲子園球場も音楽で溢れています。人の多い交差点も、信号にメロディが付きます。
音楽で行動が制御されている事実に、いま気付かされました。

コンサートのコール&レスポンスは、大きな一体感を生みますし、オリンピックの跳躍競技で手拍子をするのも、なんとも言えない高揚感を感じます。
反対にゴルフにおいては「QUIET」が示され、プレイヤーは孤独に戦う。体操競技も同じく、無音の中で演技が始まります。

最大エネルギー以上の爆発力を求められる競技においては、音楽でリミッターを外す役割があるのでしょうか。
そしてエネルギーの制御を求める場面では音楽を遮断し、集団の絆から離れることで自己のパフォーマンスだけに向き合うのかなと感じました。

茶道も無音のイメージですね。茶席に参加した経験はありませんので想像ですが。
無音になることで全神経を集中し、手さばきやお点前の音や香りを楽しみ、味わうということでしょうか。

「一人」と音楽

私が一人で音楽を聴くのは、ほとんどがバイク移動の際です。その場面を考えると、私は「自分の機嫌を良くするために音楽を聞いている」自覚があります。

その日の気分で、エレキギターが聴きたかったりスカのリズムが欲しかったり、気ままに聞き流しています。
忙しかったりして聞かずにいる日は、妙に機嫌が悪くなってしまったり、もやもやと落ち着かなかったり、いまひとつ調子が出ません。

バイクや他のクルマのエンジン音の中で聞いていますので、細かい音や歌詞は入って来にくくなります。外部の音が聞こえないほどの爆音で聞くのは危険ですし、そもそも違法ですね。

そのためか、単純なリズムの気持ち良さが1つの基準になっていますね。
バイクのブレーキレバーを叩いたり、足でリズム取ったり、たまに叫んでいます。
歌詞はほとんど分からないけど、洋楽も好きです。
『Thunderstruck』MAN WITH A MISSION

AC/DCのカバー。犬好きなのでオオカミさんのバンドも大好きです。

音楽と歌詞

メロディに乗っかると、言葉の聞こえ方が変わりますね。
話し言葉でも、同じ文句でも言い方や仕草で伝わり方も変わります。
メロディやリズムが付くと、言葉に込めたニュアンスがいっそう強まる気がします。

『歌詞』として聞いてたときには、
「いいこと言うな〜」くらいの感覚だったものが、

こちらのメンタルが弱ってたとき、天からの賜り物のように自分を包み込んでくれたことがありました。
『もうええわ』藤井風

もうええわ
言われる前に 先に言わして
もうええわ
付き合ってあげれんで ごめんね
もうええわ
自由になるわ
泣くくらいじゃったら 笑ったるわ

『もうええわ』藤井風

歌詞見なくてもアタマには入ってたんですがね、、、

ふわっと身体が軽くなったような気になって、迷いを断ち切れました。いろいろ引っくるめて、『もうええわ』と歌えたし、確信できたんですよね。

メロディに乗っかることで言葉が記憶に残りやすいのは、認知症のトミーの話からも、間違いなさそうです。
大切な言葉が、本当に欲しいときに、ここぞのタイミングで出て来てくれたら、ヤラれてしまいますねぇ。

おわりに

『音楽は、生きるために直接の役には立たない。それなのに、人はなぜ歌うのか』
このダーウィンの問いには、非常に興味深い考察がなされました。新生児の赤ちゃんにも、認知症の高齢者にも、ちゃんと音楽が届くのだということは、大きな希望だと思います。
さらに驚くべきことに、音楽で高齢者の脳機能が向上する結果が出ています。報酬系が活性化することで、内側前頭前野の働きが向上したのです。

超高齢化社会には老後の趣味だけでなく、要介護下の趣味、つまり『ベッドの上でもできる趣味』を持ちましょうと言われます。
音楽はその最適解だと私は思います。
せっかくなら楽しく年を重ねたいです。認知症だろうとニコニコ笑ってたいし、家族にもそうであって欲しい。
大きなヒントをもらえました。

オマケ。ポルノグラフィティと『ultra soul』

『ultra soul』ありますよね。B'zの。

「ウルトラソウッッッ!!」
「ハイッ!!」
の、あの曲。
めっちゃ盛り上がるんですよね。
B'zのライブは未経験なんですけど。

ポルノのライブ中のMCで、ギターのハルイチ君が
『ultra soul』のフレーズを弾いてふざけてたんですね。ペンペン〜って遊びで。

アキヒトさんが、他人様の曲を軽々しく弾いてはいかんと笑いながら諌めてたんですが、

何回もペンペン弾いて遊ぶもんだから、観客もその気になってきて小さく「ハイッ!」とかしちゃうんですよね。

で、空気も温まったところで
ギュワンギュワンにギター歪ませて
全力・爆音で『ultra soul』弾くもんだから、

お客もここぞとばかりに

『ウルトラソウッッッ!!』(ギター🎸)に

『ハイッ!!!✊』

ってなりましたね。

いくつかライブには参加してるけど、あれだけ会場中が一体になったのは、記憶にないです(笑)

音楽の一体感。
いま思い出してもニヤニヤしてしまいます。
いまも私の脳内では快感物質がドバドバなのかな?

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