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木村 勇雄
2021年1月29日 16:52
おねえちゃん 分娩室に入った僕たちは、中の雰囲気に飲まれてしまった。「はい、もう少し頑張って」「ふんっーーー」 もうすでにお産が始まっていたのだ。 苦しそうに呻く宮子を見て、綾が慌てだした。「ハハ、ハハ、だいじょーぶ?」 僕があっけに取られている内に駆け出す綾、分娩台の傍に行き、何かを踏んだ。「あーーーー!」 思わず叫んだ僕に、医師たちが非難の目を向ける。 同時に、分娩台が下がり
2021年1月25日 16:58
長い一日の始まり そして、長い一日が始まった。 その日は休日で、僕は予定日を迎えた宮子をいつでも搬送できるように、準備を整えていた。 宮子も今日ばかりは安静にしていて、ソファに横になってテレビを見ている。 綾はそのソファの下で宮子と一緒にテレビを見ていた。「ハハ、ねこさんかーいーね」「癒されるよねえ」 ストーリーものだと続きが気になっちゃうから、と録画していた動物番組を視聴中だ。今は
2021年1月19日 13:24
二人の会話「今日の綾はどうだった?」「あれ、帰って来ての第一声がそれ?」「う……気になったから」「あはは、元気だったよ。お姉ちゃんが公園に連れて行ってくれたの」「そうなんだ。和美姉さんにはお礼言っとくよ」「勇希くんの実家が近くなの、ホント助かる」「そう言ってくれると嬉しいね。宮子もたまには実家に帰りたいだろ?」「うーん、それはそうなんだけど、五月の連休からはしばらくこっちに滞在してく
2021年1月12日 16:11
僕がいないときの日常 普段、僕はプログラマーとして働いている。 とはいっても世間で思われているほど帰りが遅くなることもなく、定時に近い時間には帰れているので非常にありがたい。 では、僕がいない日中、宮子と綾が何をしているかという話をしよう。 まだ幼稚園に入っていない綾は、普段は自宅で過ごしている。「ハハ、お腹すいた」「えー? 朝ごはん食べたばっかりだよ」 綾の言葉に宮子が叫ぶ。「だ
2020年12月31日 18:28
プクプクからサクサクに 寝返りしだしてからの綾はみるみる痩せていった。 あ、虐待ではないです。 今までは食べて寝る、泣く、なんか動いてる、だけだったのが、全身を動かし始めてから目に見えてスリムになってきた。 筋肉質、というほど筋肉があるわけではないけれど、何となく力がついて消費カロリーが増えたんだろうなぁ、という想像がついた。 かく言う僕も筋トレは欠かせないのだが、年追うごとに脂肪が付きや
2020年12月30日 14:50
寝返りのころ とうとう、寝返りができるようになった。 ただ寝っ転がっていた生き物が、自由に動くようになってしまったのだ。 この衝撃は、一緒に暮らした者しか分からないと思う。「じゃあ、綾は真ん中で。雄輝くん、寝返りして潰しちゃ、や、だからね」 宮子に念を押される。僕だって自分の子供を潰したくはないよ。 しかし僕たちは甘く見ていたのだ、寝返りを打つ子供というものを。 まさに「川の字」になっ
2020年12月29日 23:28
お風呂争奪戦 お風呂に入るのも、毎日がイベントだ。 まず、誰が入れるかでもめる。僕は入れたい派だ。 宮子は僕の手付きが危なっかしいから任せたくないらしい。まあ、実際不器用だし。「でも、今日は僕が入れるからね」 と、強行した。「落とさないでよ?」 当然の心配だけど、信用されてないな。 まずは自分が温まって。体を洗って。また温まって。「いつまでのんびりしてるの?」 宮子からクレームが
2020年12月28日 12:39
子供のいる生活 それからニヶ月ほどが経ち、僕らの生活はてんやわんやだった。 まず、子供は長く寝てくれないのだと知った。 ニ時間ごとに起こされる。 まだ宮子のお乳が充分に出ておらず、ミルクを作る間は僕があやしたり、逆だったり。 何となく僕にもオムツかミルクかは分かるようになってきたので、オムツのときは僕が取り替えて少しでも宮子を寝かせる。 日中、僕は仕事に(悪い言い方だけど)逃げられるが宮