<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<4>
お風呂争奪戦
お風呂に入るのも、毎日がイベントだ。
まず、誰が入れるかでもめる。僕は入れたい派だ。
宮子は僕の手付きが危なっかしいから任せたくないらしい。まあ、実際不器用だし。
「でも、今日は僕が入れるからね」
と、強行した。
「落とさないでよ?」
当然の心配だけど、信用されてないな。
まずは自分が温まって。体を洗って。また温まって。
「いつまでのんびりしてるの?」
宮子からクレームが入ってしまった。
それを合図に綾をそっと抱きかかえる。
風呂桶にお湯をためて、ガーゼにくるんだ綾をつける。
やーらかいなあー、と思いながらもう一つのガーゼで耳の裏や頭をゆっくりと拭いてあげる。目端が気持ち緩んでるのが分かる。赤ちゃんも気持ちいいものは気持ちいいのか。その表情に僕の頬もゆるむ。
たっぷりと湯に浸かってもらい、宮子を呼ぶ。
僕はもう一回、湯に入り直す。
少し体を温めてから風呂から上がる。
「宮子、次いいよ」
交代の時間だ。今度は僕が綾を抱っこして寝かせ、宮子が風呂に入る。
こういうことやってると、日常はロジカルだ、と思ってしまう。実際はそんなにカッチリといかないもんだけど。
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