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「モノが良くても売れない」は決して質の低下を助長する言葉ではない

行動経済学、いわゆるマーケティングという概念が力を持つようになって、それなりの期間が過ぎています。

また、マーケティングと双璧を成す存在として、多くの企業では営業部門が自社の商材を携え、市場という戦場に切り込んでいきます。

人の行動心理までもデータ化し、分析して、販売実績を積み上げていく中で、いつしか「売り方」に焦点が当たるようになっていきました。

「良いモノを作れば売れる」という時代は終わったのだ…。

その思想は間違いなく時代の潮流となっており、「ものづくり大国ニッポン」と呼ばれていた時代は、とうの昔に終わりを告げたのです。

しかし、「ものづくり大国ニッポン」を支えてきた企業がすべて忽然と姿を消したわけではありません。

それらの企業は、どのような変遷をたどったのでしょうか?

ということで、今回は「モノづくりから考えること」について書いてみようと思います。

最後までお付き合いいただけると幸いです。

マーケティング・アナリティクス・解析・分析・統計・データ・ラップトップ・テクノロジー・ビジネス

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資本力のある大手企業などは、すでに築き上げていた自社のブランド力に付加価値をつける手法として、マーケティング戦略を取り込んでいきました。

あるいは、いち早く自社の商材から得られる個人情報に着目し、活用方法は確立できていなくても、データとして残すことはしていました。

結果として、今もなお自社のポジションを調整しながら、市場性を保持しています。

中小企業の中でも小規模の企業や個人経営の零細企業は、価格競争の中で辛うじて保ってきた技術向上と価格帯のバランスを支えることで手一杯となっていました。

よって、新進気鋭なマーケティングリサーチ企業から提示されるコンサルティング料や、外資企業や多国籍企業の参入で加速されたゼロサムゲームに力尽き、廃業する企業も現れました。

あなたが手にしているどんな商品にも、何らかの技術が施されているのですが、機械化や簡素化によって失われた技術も多くあります。

「古き良き」といったものは少ないですが、それでも職人や匠と呼ばれる技術に特化した高度な人的作業を垣間見る機会は明らかに激減しました。

価格競争が、「過剰品質」は無用の長物だとして、眠っている価値に気付くことなく多くを消し去っていったのです。

もっとも大きな損失は、職に対する誇りを踏みにじったことにあると私などは感じているのです。

イラスト・植物・生き残り・生存本能・水・枯れかけている

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一部の企業は、自社の生き残りをかけて、ある決断をしました。

それは品質を下げて生き残るという選択です。

断っておきますが、これは決して間違った選択ではありません。

企業に勤める労働者の生活を守るため、企業活動に投資している株主のため、断腸の思いで自社の技術の伸展を諦めるという英断をしたということだと思います。

しかし、技術が伸びないということは製造業などにとって、新しい人材を育成するうえで大きな機会損失を生むことになったのです。

「言われたことを言われた通りにやればいい」

日々の作業を淡々とこなすことに、人は夢や情熱を注ぐことは出来ません。

一つの決断が時間とともに少しづつ企業価値を蝕んでいくというのは、後戻りのできない状況になって初めて気づくものです。

かくして、技術どころか職への誇りも失っていったのです。

ライオン・飼育・野生・生き残り・生存・水・保護

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ここまでは、あくまでも個人的な意見です。

このように考えるようになったのは、私の経験が素となっています。

私は今春まで製造工場に勤務しており、社会の末端として経済の動きに翻弄されてきました。

18年に及ぶ勤務期間の前半は、自分の技術を磨き、機械に負けない精度を求めることを目標に働いていました。

個人経営の零細企業でしたから、オートメーション化する費用など出せませんでしたが、そこには自社の商品に誇りを持つ企業風土が確かにありました。

体力的にも精神的にもタフな労働でしたが、働くことに喜びや楽しみも感じる日々でした。

しかし、18年の勤務期間の後半は葛藤の連続でした。

原価が上がり、製品は買い叩かれ、経営の見直しを迫られたのです。

経営者の代替わりを果たし、新たに打ち出された方針は「言われたことを言われた通りにやればいい」でした。

精度を上げようにも「コストになるから」と早々に出荷し、品質の良し悪しではなく見た目重視の製品を「良品」とする風土は、私にとっては違和感しかありませんでした。

技術や職への誇りは何のために在るのか?

次第に働くことが惰性になっていきました。

ライオン・動物園・たてがみ・あくび・怠惰・野生

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転職して、全く別の職種に就いて驚いたことがいくつかあります。

技術を磨くための思考は、思いのほか他のジャンルに応用の利くものでした。

見よう見まねで人の技術を観察し、技を盗み、自分なりに咀嚼していく過程は、勘所こそ違うものの要素の抽出と本質の解釈さえ間違わなければ、どの職種でも使える思考法だと感じました。

また、職への誇りを持つ意識は、持続的な自己研鑽に大いに役立ち、結果として多くの信頼を得ることが出来ました。

反対に、職への誇りを持つ人の少なさにも驚きました。

日々の業務が、なんとなく過ぎていけば、世はことも無し。

そんな働き方をする人が、こんなにも多いのかと愕然としました。

働くとは、そんな意識でやるものではない。

私はそのように感じています。

ワーカー・工場・グラインダー・研磨・製品・製造・仕事・労働

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最後に、キャリアコンサルタントという視点で働き方について意見を述べたいと思います。

過去記事にも書きましたが、私はその人に合った天職などないと考えています。

実際に働くことで、就いた仕事が天職になっていくと思うのです。

クライアントには自己理解が大切だと伝えますが、実際に働かなければ見つからない自分がいるとも伝えています。

同様に、どれだけ職種や企業を調べても、実際に働かなければ「机上の空論」に過ぎないと伝えています。

マーケティングの概念は多くの領域に応用され、「履歴書の書き方」「面接の受け方」「社会人マナーの仕方」など「自分の売り方」に特化してきているように感じます。

しかし、あなたという存在は「机上の空論」などではなく実際に存在し、失敗や挫折を味わいながらも成長する、大きな可能性を秘めた存在なのです。

仮に、あなたが就職できずにいたり、働くことに興味を持てなかったとしても、腐ってはいけないのです。

「モノが良くても売れない」は決して質の低下を助長する言葉ではない。

あなたという世界に一つだけの商品価値を、貶めてはいけません。

売れずとも、質を保つだけでなく向上させていく必要があるのです。

そこで必要になるのは「過剰品質」と呼ばれるまで自分を磨き上げる技術と誇りなのだということをお伝えして、今回の終わりの言葉とさせていただきます。

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ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の投稿は以上です。

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