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デザインと医療

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デザイナーで精神科医をしています。デザインは医療に、医療はデザインに何ができるのか?つれづれとつづっていきます。
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#UXデザイン

健康という確率

健康という確率

健康への投資は将来への健康を約束しないこんにちは、精神科医でデザイナーをしています小林です。
はじめに、このテキストは喫煙や多量飲酒など、健康を害する可能性の高い生活習慣を肯定および推奨するものではありません。

多くの人が健康でありたいと願っています。
何十年も前から「健康ブーム」という言葉がうっすらと存在し、健康にまつわる似たような情報が手を変え品を変えあらゆるメディアで発信され続けています。

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「飽きる」ヘルスケアデザイン

「飽きる」ヘルスケアデザイン

飽きないデザインを考えるのに飽きてきたこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

日々健康のための行動変容と向き合っており、どうすればユーザーが飽きずに習慣化できる体験が実現できるかに頭を悩ませています。

「どうすれば飽きないか?」を突き詰めていく中で千差万別の人間に対するパーソナライズ地獄に陥っているので、反対に「どうすれば飽きるか?」に寄り添ったデザ

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なぜ診断名は医師に聞かないと教えてくれないのか?

なぜ診断名は医師に聞かないと教えてくれないのか?

受診をしても診断名がどこにも書かれていない?こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

先日友人と話していたときに「どうして病院を受診しても病名の記録は患者にもらえないのか?」という質問されました。たしかに。
どの病院を受診しても薬に関する説明書や診療内容の明細書はもらえますが、その根拠となる診断名はどこにも書かれていません。自分が病気かどうかを知りたくて

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ヘルスケアアプリは「ありがとうございました」を言うべきか?

ヘルスケアアプリは「ありがとうございました」を言うべきか?

UX Writingの議論こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。たまには少し仕事の話を。

医師が患者に処方して使う治療アプリⓇの開発に携わっており、先日ユーザーが行う作業に対してUIが「ありがとうございました」と返した表現について議論になりました。
「UIはたいていお礼を言わない」派と「いやUIもお礼くらい言っていいんじゃない」派で衝突し(ちなみに私は

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医師の仕事はなにが忙しいのか?

医師の仕事はなにが忙しいのか?

忙しいイメージはあるが、医師は本当に忙しいの?こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

医師の働きすぎは古くから多くの医療現場における課題であり、様々な事情により深刻化しています。この現状を打破するため医療法の改正が行われ、2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が始まるようです。しかしこれは基本的に「働きすぎないようにしましょう」という号令であり、

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デザイナーが「医療を理解する」とは?

デザイナーが「医療を理解する」とは?

デザインに医療を伝えたいこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

医師でありデザイナーである身として、医療の世界にデザインの価値を伝える活動をしています。その一方で、デザインの世界に医療を伝える価値もあるのでは?と最近考えています。

改めて医療者ではない立場で医療を眺めると、ブラックボックスの部分がかなり多く、アクセスできる情報も難解かつ膨大であるため

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研究プレゼンテーションのデザイン。どうすれば面白くなるのか?

研究プレゼンテーションのデザイン。どうすれば面白くなるのか?

面白い研究プレゼンテーションがしたかったこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

先日「医療者のスライドデザイン」という書籍を出したので、今回はプレゼンテーションについてお話しさせてください。

現在デザイナーをしていますが、かつては臨床や基礎研究の現場に所属し、研究会や学会でプレゼンテーションをする機会がありました。症例や研究内容について発表するのです

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プレゼンテーションから医療のデザインリテラシーを底上げしたい

プレゼンテーションから医療のデザインリテラシーを底上げしたい

デザインはまだ医療に貢献しきれていないこんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。

VUCAの時代と言われて久しく、多様かつ高速に変化するユーザーの価値観に対応するため、デザインの重要性が社会に浸透し、デザインの概念そのものも進化してきました。

医療という業界も社会の変化に敏感な性質を持っているため、学術分野を中心に日々ダイナミックな発展を続けています。し

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医療の歴史をデザインから眺めてみる

医療の歴史をデザインから眺めてみる

こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。
以前にデザインと医療を組み合わせたときに生じる曖昧さについて言及しました。

今回はあえて拡大解釈による語弊をおそれずに、デザインとしての医療の功績について考えてみます。

医療のデザインというと、つい現在もしくは未来の新しいなにかを思い描いてしまいます。しかし医療の歴史に現代のデザインの概念を適用したとき、そこに

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精神科医から見る患者、UXデザイナーから見る患者

精神科医から見る患者、UXデザイナーから見る患者

こんにちは、株式会社CureAppデザイナーの小林です。精神科の医師ですがデザインが好きすぎてデザイナーとして働いています。

立場が変わると今まで見てきた景色が変わり、新しい発見に出会うことができます。精神科医として十数年患者と向き合い続けていますが、治療プロダクトのデザイナーとして改めて患者を眺めることで、いかに自分が患者の一側面しか知らなかったかを痛感しました。

精神科医として見る患者とU

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医師とデザイン。なぜ医療現場は複雑なUIが好まれるのか?

医師とデザイン。なぜ医療現場は複雑なUIが好まれるのか?

医師は情報が詰めこまれたスライドが好き?こんにちは、株式会社CureAppデザイナーの小林です。精神科の医師ですがデザインが好きすぎてデザイナーとして働いています。

医療の世界から会社員に転身すると、日々さまざまな発見があります。先日社外の人とプレゼンテーションの話題になり
「医師向けのプレゼンでは、シンプルなものより情報が詰め込まれたスライドが好まれるんです」
と言われ驚きました。

たしかに

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