kazuho221

詩を訳したり、書いたりするノート

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記事一覧

エリュアール「恋女」

「恋女」 私の瞼に立ち上がり 私の髪の中に其の髪を埋める 私の腕そっくりの形で 私の瞳にそっくりの色で 私の影へと沈み込む まるで空に呑まれる石ころみたいだ 彼…

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7年前
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ヴァレリー「あしおと」

あしおと 君のあしおと、それは僕の沈黙のこどもたち 厳かに、そしてゆるやかにあらわれては しずかに冷たく歩み寄る 眠れない僕の寝床のほうへと 君のあしおとが歩み…

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7年前
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この世界の片隅に

何かに魅入られて、いつの間にか 精神を置き去りにした身体が震えていたこと あらかじめ決められた筋道を疑いながらもいつの間にか置き去りにされていた理性 はじめて知…

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7年前

瀬戸内海旅行の断片

自分としては三年前の開催に次いで、四国を訪れるのは二度目。 三年前の自分が、うまく運ばない諸々の状況を東京に置き去って、逃げるように、母に連れられて訪れた島々、…

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8年前

マラルメ「乳母」(エロディアード古序曲より)

乳母 la nourrice 棄てられて、 彼の醜い翼は 洗面器をつたう涙のなか 棄てられて、不安を映し出すその醜い翼。 むき出しの黄金が臙脂色の隔たりを責めたてる 暁光は…

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8年前
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かきかけ

Je ne sais pourquoi j'aller te voir à nos table que ses propriété est nous devant tes yeux nuageuses, mon cours est plein d'espoir mais te me dégardé

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8年前

ボードレール「愛し合う二人の死」

僕らは手にするだろう、 軽やかな薫りに満ちた寝台を 墓穴よりも深い寝椅子を そして、飾り棚の上の奇妙な花、 よき風土のもとで私たちのために咲くはずの花を。 とも…

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8年前
1

Aux monde partagé

C'était un jour partagé en deux couleur. La clarté expulse le noir comme l'éclair De son place nature. L'obscurité nous embrasée tendrement toujours. …

kazuho221
8年前

ボードレール「通りすがりの女へ」

私の周りで騒ぎ立てる雑踏のなか、 背の高く、華奢な ひとりの女が通る 喪服に身を包み、厳かにかなしみを携えて 凛として、身軽で気高いその彫像のような脚に 裾の花…

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8年前
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ヴィアン「脱走兵」

Boris Vian "Déserteur" ボリスヴィアン 「脱走兵」 拝啓大統領 私は貴方に手紙をしたためる もし時間があれば、きっと読んでほしい この前の水曜日の夕方、召集の令…

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8年前

エリュアール「LIBERTÉ」

学校の ノートの上に 机の上 樹々の上に 砂の一粒 雪のひとひらの上に きみの名を書く 読み終えたページの上 まだ真っ白なページの上 石ころ 血液 紙 あるいは灰の上に …

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8年前
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訳詞

kazuho221
8年前

Bonjour Tristesse

 もの憂さと甘さがつきまとうこの見知らぬ感情に、私は戸惑う、この感情を悲しみというー美しくも重々しい名で呼ぶことを。  あまりに完全で、あまりにエゴイスティッ…

kazuho221
8年前

Les Adieux

mardi seize février, les adieux aux mots et sons de la musique. à Grand mougins adieu… あらゆるものが息をひきとっていくように 咲き誇る花々、 すれ違う人…

kazuho221
8年前

春の手招き

窓をつんざく夜の明るみが、格子の脇にすがりつき、 風もまた、その行く手にあるものものを、荒々しく撫で付ける。  彼は眺める、彼方の近さのうちで、  輝く瞳と、一…

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8年前

旅人と異邦人

−ほんとうの生活が欠けている、それでも僕らはここに住んでいる− 僕は、僕らの弱さを目指し、 僕らの弱さのなかで、ほかの誰かの弱さを愛する。 誰ひとり、同じ弱さを…

kazuho221
8年前

エリュアール「恋女」

「恋女」

私の瞼に立ち上がり

私の髪の中に其の髪を埋める

私の腕そっくりの形で

私の瞳にそっくりの色で

私の影へと沈み込む

まるで空に呑まれる石ころみたいだ

彼女は。

其の眼はいつも開かれて

私をいつも眠らせず

其の夢があまりに眩しくて

眼に映る太陽は空気に溶ける

其の夢があまりに眩しくて

私は笑い、泣き、また笑う

其の夢があまりに眩しくて

言うことなんて何もないのに

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ヴァレリー「あしおと」

あしおと

君のあしおと、それは僕の沈黙のこどもたち

厳かに、そしてゆるやかにあらわれては

しずかに冷たく歩み寄る

眠れない僕の寝床のほうへと

君のあしおとが歩み寄る

澄み渡る姿と、恵みの影をたたえて

慎みあるあしおとの、なんと快いことだろう

知らるべき全てのことは、このあしおとに乗って

私にやってくる

もしも、君のくちびるが 

僕のあたまに住む者たちの慰みに

差し向けられる

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この世界の片隅に

何かに魅入られて、いつの間にか

精神を置き去りにした身体が震えていたこと

あらかじめ決められた筋道を疑いながらもいつの間にか置き去りにされていた理性

はじめて知る感官のうわつき

その対象を知ることのない触発

そうした諸々のすべてが、いまもまだ残っている。

ひょっとしたらこれは、単にいま自分の理性が衰えて、感覚だけが過剰に肥大化して、なにかこうした目新しい変化をもたらしているだけで、相も

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瀬戸内海旅行の断片

自分としては三年前の開催に次いで、四国を訪れるのは二度目。
三年前の自分が、うまく運ばない諸々の状況を東京に置き去って、逃げるように、母に連れられて訪れた島々、そして−そのときはそうは思いもしなかったけれども−、今回また足を運ぶことになった島々から、幾らかの触発を受けることになった。

自動車、電車、飛行機のような交通技術の発展、ネット環境の充実、その他諸々の技術は今日の僕らを隙間なく取り巻いてい

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マラルメ「乳母」(エロディアード古序曲より)

乳母 la nourrice

棄てられて、

彼の醜い翼は 洗面器をつたう涙のなか

棄てられて、不安を映し出すその醜い翼。

むき出しの黄金が臙脂色の隔たりを責めたてる

暁光は、紋入りの羽毛の暁光は、

我々の納骨の塔、供儀の塔を選んだのだ、

かわいらしい小鳥たちを慄かせる重々しい墓石を、

うぬぼれ屋の真っ黒な翼にささる朝日の

ひとりぼっちの気まぐれを

選んだのだ…。

ああ、衰えた

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かきかけ

Je ne sais pourquoi j'aller te voir

à nos table que ses propriété est nous

devant tes yeux nuageuses,

mon cours est plein d'espoir

mais te me dégardé

ボードレール「愛し合う二人の死」

僕らは手にするだろう、

軽やかな薫りに満ちた寝台を

墓穴よりも深い寝椅子を

そして、飾り棚の上の奇妙な花、

よき風土のもとで私たちのために咲くはずの花を。

ともにその最後の熱情を注ぎこみ、

僕らの心は二つの大きな松明となるだろう

それら重なりあう光、 

僕らの精神、この向かい合う鏡の中に

映るであろう光。

薔薇色と藍色の謎めいた夕暮れに、

僕らは一筋の閃光を交わすだろう

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Aux monde partagé

C'était un jour partagé en deux couleur.

La clarté expulse le noir comme l'éclair

De son place nature.

L'obscurité nous embrasée tendrement toujours.

En effaçant la contours, sur espace court

ll

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ボードレール「通りすがりの女へ」

私の周りで騒ぎ立てる雑踏のなか、

背の高く、華奢な ひとりの女が通る

喪服に身を包み、厳かにかなしみを携えて

凛として、身軽で気高いその彫像のような脚に

裾の花模様を舞わせ 縁飾りを揺らしながら

僕、僕といえば、魅惑的な甘いことばと

人殺しの快楽とを、彼女の瞳のなかで、飲みこんだ

嵐のまえぶれの蒼白な青空のような 瞳のなかで

稲妻…そして夜のように!  ひとときの、美しい女よ、

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ヴィアン「脱走兵」

Boris Vian "Déserteur"

ボリスヴィアン 「脱走兵」

拝啓大統領

私は貴方に手紙をしたためる
もし時間があれば、きっと読んでほしい

この前の水曜日の夕方、召集の令状を受け取りました
戦争にいくための、令状を

大統領閣下、

私はそんなことをしたくはない
哀れな人々の息の根を止めに、
この地に産まれたのではないのです

貴方を怒らせたくはないが、
それでも言うべきだろう

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エリュアール「LIBERTÉ」

学校の ノートの上に
机の上 樹々の上に
砂の一粒 雪のひとひらの上に
きみの名を書く

読み終えたページの上
まだ真っ白なページの上
石ころ 血液 紙 あるいは灰の上に
きみの名を書く

金箔の図画の上
兵士の武器の上
君主の王冠の上に
きみの名を書く

密林に 砂漠に
シダの木 鳥の巣
幼年時代のやまびこの上に
きみの名を書く

夜毎の驚くことの上
毎朝の白いパンの上
愛を誓っ

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Bonjour Tristesse

 もの憂さと甘さがつきまとうこの見知らぬ感情に、私は戸惑う、この感情を悲しみというー美しくも重々しい名で呼ぶことを。

 あまりに完全で、あまりにエゴイスティックな、私にはほとんど恥じらいのようであるその悲しみという感情は、それでいて、いつも尊大な風体をしているものだから。

 ー悲しみ、それを私は知らなかった。倦怠、ものうさ、後悔、そしてときたま良心の責め句、そのようないくつかが、せいぜい私

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Les Adieux

mardi seize février, les adieux aux mots et sons de la musique.

à Grand mougins

adieu…

あらゆるものが息をひきとっていくように

咲き誇る花々、

すれ違う人々の外套、

長いため息、

恋人たち、

そして、煙までもが、

終には老いさばらう。

たゆたう世界と共に、

私たちのみる、

浜辺に寄せる波よ

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春の手招き

窓をつんざく夜の明るみが、格子の脇にすがりつき、

風もまた、その行く手にあるものものを、荒々しく撫で付ける。

 彼は眺める、彼方の近さのうちで、

 輝く瞳と、一抹の不安に頭を火照らせて、

 胸には苦い欲望とーー、

夜の近さの抱擁が、いかなる遠さに思えるだろう。

部屋の灯で見る地図は、なんと大きく、

そして、追想にうかぶ客船の、なんと狭く小さいことか…。

この夜を知っている。窓を擦り

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旅人と異邦人

−ほんとうの生活が欠けている、それでも僕らはここに住んでいる−

僕は、僕らの弱さを目指し、

僕らの弱さのなかで、ほかの誰かの弱さを愛する。

誰ひとり、同じ弱さをもってはない、

何ひとつ、この弱さから欠けてはいないような、

完全な弱さのことを愛している。

僕がどのような仕方であなたに触れるよりも先に、

あなたがどのような姿の僕を見つけるよりも先に、

僕らの弱さが、あなたを僕ではなくし

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