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マラルメ「乳母」(エロディアード古序曲より)
乳母 la nourrice
棄てられて、
彼の醜い翼は 洗面器をつたう涙のなか
棄てられて、不安を映し出すその醜い翼。
むき出しの黄金が臙脂色の隔たりを責めたてる
暁光は、紋入りの羽毛の暁光は、
我々の納骨の塔、供儀の塔を選んだのだ、
かわいらしい小鳥たちを慄かせる重々しい墓石を、
うぬぼれ屋の真っ黒な翼にささる朝日の
ひとりぼっちの気まぐれを
選んだのだ…。
ああ、衰えた
ボードレール「愛し合う二人の死」
僕らは手にするだろう、
軽やかな薫りに満ちた寝台を
墓穴よりも深い寝椅子を
そして、飾り棚の上の奇妙な花、
よき風土のもとで私たちのために咲くはずの花を。
ともにその最後の熱情を注ぎこみ、
僕らの心は二つの大きな松明となるだろう
それら重なりあう光、
僕らの精神、この向かい合う鏡の中に
映るであろう光。
薔薇色と藍色の謎めいた夕暮れに、
僕らは一筋の閃光を交わすだろう
長
Aux monde partagé
C'était un jour partagé en deux couleur.
La clarté expulse le noir comme l'éclair
De son place nature.
L'obscurité nous embrasée tendrement toujours.
En effaçant la contours, sur espace court
ll
ボードレール「通りすがりの女へ」
私の周りで騒ぎ立てる雑踏のなか、
背の高く、華奢な ひとりの女が通る
喪服に身を包み、厳かにかなしみを携えて
凛として、身軽で気高いその彫像のような脚に
裾の花模様を舞わせ 縁飾りを揺らしながら
僕、僕といえば、魅惑的な甘いことばと
人殺しの快楽とを、彼女の瞳のなかで、飲みこんだ
嵐のまえぶれの蒼白な青空のような 瞳のなかで
稲妻…そして夜のように! ひとときの、美しい女よ、
Bonjour Tristesse
もの憂さと甘さがつきまとうこの見知らぬ感情に、私は戸惑う、この感情を悲しみというー美しくも重々しい名で呼ぶことを。
あまりに完全で、あまりにエゴイスティックな、私にはほとんど恥じらいのようであるその悲しみという感情は、それでいて、いつも尊大な風体をしているものだから。
ー悲しみ、それを私は知らなかった。倦怠、ものうさ、後悔、そしてときたま良心の責め句、そのようないくつかが、せいぜい私