ヴィアン「脱走兵」

Boris Vian "Déserteur"

ボリスヴィアン 「脱走兵」

拝啓大統領

私は貴方に手紙をしたためる
もし時間があれば、きっと読んでほしい

この前の水曜日の夕方、召集の令状を受け取りました
戦争にいくための、令状を

大統領閣下、

私はそんなことをしたくはない
哀れな人々の息の根を止めに、
この地に産まれたのではないのです

貴方を怒らせたくはないが、
それでも言うべきだろう、
わたしは決めたと、
わたしは脱走すると

私が産まれて、
父が死ぬのを見た
兄弟が去っていくのを見た
子供達が泣くのを見た
母はあまりに苦しんで、いまや墓の中
砲弾も蛆虫も、もはや彼女にはなんでもなくなったのです

私が囚われていたあいだ、
あるものは愛するひとを
あるものはたましいを盗み
そして大切なもののすべては去っていった

明日の朝早く、

私は死した歳月を断ち切り、
旅に出でるつもりだ

ブルターニュからプロヴァンスへ通ずフランスの道の上で、
物乞いをして生き延びるだろう

そして人々に言おう、
服従を拒否するんだ、と
そんなことをするな、と

戦争にいってはならない
いってはならない

もし血を捧げるならば、貴方の血を

良き使徒、大統領閣下、
もし私を追うならば、
憲兵達にも伝えておいてくれ
私は武器をとらぬ
私を撃ち殺すこともしてよいと