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「家族介護者の方へ」①「今にも介護が始まりそうな不安期」

 いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。

 初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
 私は、臨床心理士/公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

自己紹介

 元々、私は家族介護者でした。
 1999年に介護を始めてから、介護離職をせざるを得なくなり、介護に専念する年月の中で、家族介護者にこそ、特に心理的なサポートが必要だと思うようになりました。

 そうしたことに関して、効果的な支援をしている専門家が、自分の無知のせいもあり、いるかどうか分からなかったので、自分で少しでも支援をしようと思うようになりました。

 介護をしながら、学校へも通い、2014年には、臨床心理士の資格を取りました。2019年には公認心理師資格も取得しました。現在は、家族介護者のための、介護者相談も続けることが出来ています。

「家族介護者の方へ」

 このnoteでは、これまでの私自身の経験や、見聞きしてきたこと、学んだ事なども統合して、できるだけ一般的な事として、伝えることができれば、と考えて書いてきました。

 さらに、家族介護者の当事者というよりは、どちらかといえば、支援者介護者の助けになりたいと考えている周囲の方々向けを意識してきました。

 それは、実際に介護をされている方々は、とても大変な毎日を送っていらっしゃるのは間違いないので、こうしたnoteの記事を読んでいる時間や余裕がないかもしれない、と思っていたからでした。

 ただ、実際にnoteを始めてみて、読んでくださるのは、当初に想定していた介護の専門家の方々もいらっしゃっるのですが、それと並んで、実際に今も介護をされている方々が読んでくださり、コメントをいただいたりすることに、気がつきました。とてもありがたいことでした。

 家族介護者には、こうしたnoteの記事を読むような時間も余力もないのではないか、という想定が間違っていたと思います。私自身に、その余裕がなかったのは事実ですが、私が介護を始めたのは20年前のことで、しかも、自分が携帯もスマホも持っていない状況に比べたら、今の家族介護者にとっては、こうしたSNSは、もっと身近なものだと思いました。

 こんな言い訳のようなことを書いて、申し訳ないのですが、やはり、実際に家族介護者の方へ直接伝える意識を持った文章も必要だと思うようになりました。これまでの記事と重複することも少なくないとは思うのですが、「介護の段階」によって、少しでも役に立つような記事を書いていこうと思っています。

 投稿するのは不定期になりそうですが、この「家族介護者の方へ」を新しいシリーズとして始めていきます。

 初回は、①「今にも介護が始まりそうな不安期」です。
 その時期に当たると思える方が、読んでくだされば、もっとも納得できるような内容にしたいと思っています。

(全体だと長くなり時間がかかり申し訳ないので、項目を見て、ご自分が興味があるところだけでも読んでいただければ、と考えています)。

「今にも介護が始まりそうな不安期」

 以前、「介護に備える」というテーマで4回に分けて記事を書きました。

 これは、やはり、まだ介護が遠い方向けの内容だったと思うのですが、例えば、この記事を読んで、もう、こんな余裕はないもっと実用的なことを知りたい、と感じられるようであれば、「今にも介護が始まりそうな不安期」と言ってもいいと思います。

 推測で、申し訳ないのですが、こんな状況ではないでしょうか。

「今にも介護が始まりそうな」予感は、はっきりとある。
 家族が病気で倒れて、しかも高齢だから、どこまで回復するか分からない。まだ、はっきりと医師に言われていないけれど、もしかしたら、退院する時は、介護が始まる時かもしれない。ただ、ここから体が回復したり、リハビリが順調だったら、また元の生活に戻れる可能性だってある。

 もしくは、こういう状況も考えられます。

 高齢の家族は、体は丈夫で問題ないのだけど、最近、物忘れが多くなっているような気がする。もしかしたら、認知症かも、という不安がよぎることもあるが、この前、会った時はしっかりしていたし、それは、歳のせいであって、自分だって、忘れることは増えてきたし。

 そして、ご自分に言い聞かせるように、心の中でつぶやくかもしれません。

 大丈夫。まだ、介護じゃない。

「介護のはじまり」を先取りする

 人間が最も気持ちの消耗をするのは、どちらか分からないような「あいまいな状態」に置かれた時だと言われています。

「介護が始まるのか、始まらないのか、はっきりしない時期」というのは、「あいまいな状態」で、とても気持ちが疲れる時であるのは間違いないと思います。

 だから、できたら、介護が始まってほしくない、という思いが強くなり、今の時点で、介護が始まらない材料を無意識のうちに探してしまい、その上で、「まだ介護じゃない」ということを思ってしまっても、それは人間として、自然なことだと思います。

 ただ、私自身もそうですし、この20年間で出会った方々のことを思い出しても、「もしかしたら、介護が始まるんじゃないか」という予感は、思った以上に当たることに、後になって気がつきます。

 介護は大変です。

 もし、興味がある方でしたら、介護の体験記などを読んで、こんなに過酷なのか、と恐怖を覚えているかもしれません。

 ただ、自分への反省も込めて書いているのですが、もし、介護について、もっと色々と知っていれば、少しでも介護の負担や負担感は減っていたのは間違いがありません。

 しかも、今はさまざまな問題がありながらも、介護保険の運営が始まり、20年以上が経っていて、専門家のレベルも間違いなく上がっています。

 もし、今「介護が始まるかもしれない不安」の中にいらっしゃるのであれば、最初にやっていただきたいことがあります。

 それは、「近い将来、介護が始まる」と覚悟を先取りしてもらうことです。

 もちろん、無理にとは言いませんが、そう覚悟することで、あいまいな状況にいる時よりも、気持ちが少しでも楽になる可能性があります。

 そこから始めてもらえないでしょうか。

(ただ、この覚悟に抵抗があれば、無理にしなくてもいいので、次項以下を読んで、具体的な準備をしていただけないでしょうか)。

家族と話す

 次にしてもらいたいことは、もし、ご家族がいらっしゃったら、「家族と話す」ことです。
(もし、いらっしゃらないときは、すみませんが、次の「友人と話す」に進んでください)。

 例えば、ご高齢の親御さんが「介護が必要になるかもしれない」場合で、ご自身に兄弟や姉妹がいらっしゃる時は、「介護が始まったら」という具体的な前提で、話をしていただけないでしょうか。

 おそらく、あいまいな状態の時には、できたら介護は避けたいので、ご家族の回復を願っていられると思いますし、それは自然なことだと思います。ただ、もしも、「介護が必要になったら」という前提で話ができるのであれば、今の段階でしておいた方がいいと思います。

 もし、介護が始まった場合は、誰がみるのか?複数人で介護をするとすれば、どの程度の分担になるのか?
 どうやってみるのか?
 どこで介護をするのか?
 もしくは、すぐに施設に入ってもらうのか?

 まだ知識がない場合は、その程度でも構いませんから、話をして、ある程度決めた方がいいと思います。

 それだけで、もしも介護が始まった場合の「混乱期」の負担感は、少しでも減る可能性が出てきます。

友人と話す

 友人がいらっしゃって、さらに、その方に介護経験があれば、その方は、相談相手としては、かなり適切だと思います。

 今の自分の状況を話し、そして、「介護が始まるとしたら、どうしたらいいのか?」

 そんな話を伝えれば、多少、整理されていないとしても、経験者であれば、具体的なことを教えてくれると思います。もしも、同じ地域にお住まいの方であれば、さらに役に立つような、豊富な情報があるはずです。

 介護経験がなくても、何を話しても大丈夫な友人がいらっしゃる場合も、今の状況と、介護が始まったら、どうしたらいいと思うのか?を聞けば、返事は返ってくると思います。そこで、少し話し合えば、気持ちが落ち着く可能性も出てくるので、それだけでも、友人の方と話す意味はあると思います。

(もし、そうしたことを話す友人はいない、ということであれば、次項の「専門家と話す」に進んでください)

専門家と話す

 最近、こうした話題で、必ず出てくる名称が「地域包括支援センター」です。

 知らなければ、謎の組織ですが、介護を始めると、ほぼ必ず縁がある場所になります。

(ここ↑に詳しく書いてくれています)

 もしも、とにかく介護の相談をしたい場合。介護が必要になりそうな方(将来の要介護者)と、ご自身同じ地域にお住まいであれば、「地域名  地域包括支援センター」と検索すれば、どこにあるのか、そして、連絡先も分かるはずです。

 もし、介護が必要になりそうな方遠くにいらっしゃる場合でも、その住んでいる場所の「地域名 地域包括センター」と検索すれば、分かるはずです。

 「地域包括支援センター」は、地域によっては「さわやかサポート」や「ケアプラザ」と名前が違ったりしますが、そこが、介護に関する相談窓口であることは間違いありません。

 多くは平日しか開いていないのですが、場所によっては、土曜日も相談できる場合があります。それも難しければ、まずは、電話で話を聞くだけでも、介護に関する具体的な情報を得られる可能性は高いと思います。

 もしくは市役所や区役所などの行政機関に電話をして、「これから介護になるかもしれないけど、何も分からないので、介護の準備をするために、相談したい」、という旨を伝えれば、適切な部署につないでもらえるはずです。

(もし、すぐにでも施設に入所させたい、という希望がある場合も、そのことを伝えれば、少なくとも、次に何をしたらいいのか、ということは分かると思います)。

入院中の場合

 もし、現在、介護が必要になりそうな方入院中の場合は、どの病院にも必ず「相談窓口」があります。分からない場合は、受付や看護師の方に聞いたら、教えてもらえると思います。

 そこで、今の状況と、もし介護が始まる場合は、どうなるでしょうか。

 そんなことを聞いてもらえたら、相手によって話の内容が違う可能性はありますが、少なくとも、今の「まだほぼ何も分からない状況」は、少しでも改善すると思います。

相談窓口を探す

 普段、社会の最前線で仕事をされている方であれば、今、介護に関して、何も知らなくても、それは自然なことだと思います。

 ただ、今の「介護が始まるかもしれない不安期」で、少しでも、できることをやっておけば、これからの負担を減らせると考え、ここまで人に会うこと・話すことをお勧めしてきました。それは、もし、そうして動いた中で、これから介護が始まった後も、味方になってくれるような人が、一人でも見つかれば、本当に負担感が減る可能性が高いので、そのようなことを書いてきました。

 もし、そこまで行動することにためらいがあるのであれば、電話相談だけでも利用するのは、いかがでしょうか。


「認知症の人と家族の会」(電話相談)

 もしくは、何しろ不安で、といった時は、その状態自体を相談することで、次に進む力が湧く場合があります。


「まもろうよ こころ」(厚生労働省)

 

 大事なことは、できたら、公共機関などが運営する「相談窓口」を利用してもらうことです。今は、検索すれば、数多くの相談窓口がありますが、どれもが安全とは限りません。余計なことですが、そこは気をつけていただければ、と思います。


病院や医師を探しておく

 これは、特に認知症の疑いがあるときに、前もって知っておくといいことかもしれません。

 特に、ご家族の場合には、そうであってほしくない、という気持ちが働くのも当然ですが、その一方で、認知症かもしれない、と予感する場合も多いのではないでしょうか。

 そういった場合は、今から、そうした専門の医療機関を探しておくことが、少しでも安心感につながるかもしれません。

 病院や医師によるのですが、本人が受診したくない、と通院を拒否する場合でも、家族だけでも相談を受け付けてくれる場合(受診扱いなので、有料の時が多いですが)があります。そういう場所を、前もって探しておくのも安心感につながるかもしれません。


介護が始まるとき

 ここまでの全てのこと、もしくは、一つだけでも実行していただければ、「今にも介護が始まりそうな不安」は、おそらくは、少しは減っていると思います。

 そして、もし、急に、例えば明日からでも介護が始まったとしても、何もしないまま、介護生活に突入する場合に比べれば、負担や負担感や衝撃は、減っていると思います。

 基本的には、どんなこととも一緒だと思いますが、「知は力」なのは、介護に関しても本当だと思います。情報を得るだけ、負担は減る可能性が出てきます。

 もし、よろしかったら、一つでも試してみていただければ、と思っています。


「家族介護者の方へ」シリーズの次回は、②「突然、介護が始まった混乱期」の予定です。




(他にも、介護のことをいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただければ、うれしいです)





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