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「イタリアでタクシー強盗と戦う」

 まだ、大学生の頃である。
 
 その頃は、旅慣れてきて海外旅行が楽しくてしょうがないころであった。
 
 わたしは、塾講師や家庭教師のアルバイトをやり、海外旅行代金を稼いだ。稼いだというより着実にお金を貯めた。
 
 夏休みに弟は医学生であったが休暇だということで、それでは、お互いが学生のうちにどこか海外旅行へ行かないか、という話になった。


 

 弟は、映画でマーロンブランド、アルパチーノが出演する「ゴッド・ファーザー」を観てイタリアのローマに行きたいという事だった。
 

ゴッドファーザー映画

 弟は、今回の海外旅行が生まれて初めてとなる。
 わたしは、フランス、インドといったことがあり、三回目である。
 

インド

 いつでも旅行道具はきれいにラッケージにいれてあり、洗剤、歯ブラシ、頭痛薬、変圧器、電源プラグまで常時入れておいた。
 弟は初めてであり、医学生は忙しいので、これが最初で最後の旅行になるかもということで、すべて旅行代理店からのレンタルにした。
 
 当時は、羽田からではなく成田空港からだった。
 上野から成田空港へ行き、もう、くたくたに疲れていた。

 その日のうちに成田へ着き、皆は、それぞれの目的地である国へ行くが、わたしと弟はわざとその晩、全日空ホテルに宿泊をした。
 万が一、飛行機が落ちたら大変だ。
 それで、ホテルで懐石料理を食べ日本を出ることを惜しんでおこうという気持ちがあったから。
 贅沢な、純和食の食事をし、洋酒ではなく、日本酒の冷を飲んだ。
 

懐石料理

 食事が終わり、弟の旅行道具を見て足りないものがあればホテルで買い足すようにした。
 弟が、レンタルしたラッゲージは色が黄色ですごくよく目につく。
 さらに、彼は、イタリアに行くからラッゲージにチョークでゴットファーザーと書いて行くという。

 万が一、映画ではなく本物のゴットファーザーがいたら、起こられるぞ!というと、ゴットファーザーは日本びいきだとわけのわからぬことを言うので、まあ、それでよいことにした。
 
 何せ、お金のない学生二人が無理やりイタリアへ行くのだ。
 本来であれば、イタリア国営航空であるアリタリアか、日本のジャルで行きたかった。しかし、飛行機代が高いのでロシアのアエロフロートで我慢した。
 

アエロフロート


 ジャンボと比べるとすごく小さい。座席は、廊下を挟んで2列と3列になっている。
 女性のエアーコンダクターはすごくサービスが悪い。共産国のせいで、サービスという概念がないのだろう。

 操縦士は、アエロフロートの場合は軍人のパイロットである。
 急降下や急旋回をするので、日本人のうち3名が中耳炎になった。鼓膜を痛めたのであろう。
 足元からは、外気が入ってくる。
 
 何というジェット機なのであろうか。
 
 約10時間飛び、給油のためにモスクワへ着陸した。
 我々は整備が済むまでモスクワ空港にいた。
 暗い、じめじめとした空港である。明るさが全くない。

モスクワ空港


 そこからミラノへ行き、ミラノでトランジェットをしてローマのフィミチーノ、空港着である。ローマまで給油の時間を入れて約15時間かかった。
 何て遠いところへ来たのだろう、という気持ちがしていた。
 
 夜遅く、着は夜の11時を過ぎている。
 
 手荷物を取りに行く。
 
 お金は日本でに現地通貨であるリラに両替してあったので問題はない。
 中々、我々の手荷物く来るのが遅い。

リラ


 いらいらして待っていると、弟の黄色いゴッドファーザーと書いてあるラッケージ出てきた。
 しかし、最後までわたしのラッケージは出てこなかった。
 
 仕方がないので、空港のカンターへ行き、ロストラッゲージの手続きをした。一日、15ドル来るそうだ。円高だったので、15ドルと言っても1500円ぐらいである。
 
 担当員が言うには、よく間違って手荷物がアフリカへ行ってしまうことがあるそうだ。すぐにカバンは戻ってくるから心配する必要はないと励まされ、着替えもないまま、ホテルへ向かうことにした。
 
 当初の計画では、空港からテルミニ駅まで電車で行く予定であった。しかし、深夜遅くぐったりと疲れていたので、タクシーでテルミニ駅へ行くことにした。
 

タクシー


 その時、何気なく乗ったタクシーの運転手と助手席にいた男は強盗であったのである。

 文章が長くなるので、一時ここで「つづく」としておく。

ローマ


 
 


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