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電波戦隊スイハンジャー

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神も仏も小人も天使も異星人も暴れるヒーロー戦隊もの
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#小人

電波戦隊スイハンジャー#1

第一章・こうして若者たちは戦隊になる麦わらのレッド

農業青年、魚沼隆文の日記。

2013年5月某日。

これは誰にも信じてもらえないと思うので、この日記に記すだけにしておきたい。

僕の家は江戸時代から続く農家で、現在は、コシヒカリを主に生産している。

僕もいずれは父の跡を継いで、自然を相手に生きるのだろう。

とぼんやり考えていた…あの二人に出会うまでは!

(ここで2Bえんぴつが激しく折

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電波戦隊スイハンジャー#4

第一章・こうして若者たちは戦隊になる

伝説の海人(あま)

季節は春から夏に移ろいゆく。

2013年5月の天草の海は白く凪いでいた。空は晴天、青空にちぎれた白い雲が切れ切れにあるだけ。

海辺の陽射しは都城琢磨《みやこのじょうたくま》の肌をじりじりと容赦なく灼《や》いた。

日焼け止めをSPF50のやつにしといとよかった。と琢磨は思った。

彼は仕事の事情で日本各地を旅している。太陽が空の一番

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電波戦隊スイハンジャー#5

第一章・こうして若者たちは戦隊になる渚のハイカラ修験者

「さっきから異族間懇親会見せてもらってたよお。君と女神のカラミまで見たかったけど、悪いがこれも仕事でねえ!」

薄地の服ごしだが、男の肉体は野生の獣のようにしなやかに鍛え上げられている。
「あなたは誰ですかあ?」
わざと呑気そうに琢磨は声をかけたが、彼の直感は男に対して「最大級の危険」を琢磨に告げている。

なんなんだ?この殺気…脇の下に冷

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電波戦隊スイハンジャー#7

第一章・こうして若者たちは戦隊になる金剛さまの言うことにゃ

正嗣以外の会議室の人間は、まるで金縛りにでも遭っているかのように硬直していた。

ただ、全員の目だけがかっと見開かれ、瞳孔が散大したかのように正嗣には見えた。

意識を飛ばされたか?

「皆の記憶をこっくりさんを行う以前に戻した。簡単な逆行催眠じゃ。まーくんよ、後は任せる」

空海がぱん!!と手を叩くと、止まっていた会議室の時間が動き出

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電波戦隊スイハンジャー#28

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵夢狩り2

翌朝、光彦は泰安寺の客間で目覚めた。

お日様の匂いがする敷布団に寝かされ、肌布団も掛けられている。

台所の方からトントン、とリズミカルに包丁を叩く音と、味噌汁の匂いがする。

とたんに腹が鳴った。そうか、ゆうべ飯を全部吐いちまったんだっけ…

とりあえず布団を畳むと、襖を開けて縁側に出た。

庭の畑の前で、正嗣が浴衣の上半身をはだけて木刀で

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電波戦隊スイハンジャー#38

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵時は光のように1

聡介がはっと布団の上で目覚めたのは、早朝6時であった。

自室の天井を見つめ、つぎに枕右側にあるデジタル時計に目をやる。

ちょうど5:59から6:00に表示が変わった。

胃のあたりに重みを感じた。

愛猫のブライアンだろうか?にしては軽い。

聡介は顔だけを上げて自分の腹部を見た。小人が、乗っている。

松五郎?と聡介は言おうとした

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電波戦隊スイハンジャー#39

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵時は光のように2

腰まで届く銀髪にすみれ色の瞳をした女性が人懐こい笑顔で微笑んだ。

「美味しそうなケーキありがとうございます。どうぞごゆっくり」

3人分のコーヒーと神戸スイーツを弟の机に置いて退出した沙智の姿を、悟と正嗣はぼうっと見送った。

「美しいお姉さんだね…」

実に正直な感想を悟が述べた。

「性格はS極なんだけどね…惚れるなよ、正嗣。姉貴

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電波戦隊スイハンジャー#41

第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵時は光のように4

気前がよくて二枚目で

チョイとやくざな遠山ざくら

御存知長屋の金さんに

惚れない奴は悪人(ワル)だけさ

オッと金さんまかせたよ~、まかせたよ~♪

7月19日の夜、週末バー「グラン・クリュ」

下町古民家の1階を改装し、外人観光客をターゲットにしたチープかつお洒落なバーの店内に、

雰囲気ぶち壊しの江戸っ子の香りぷんぷんの唄が、

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電波戦隊スイハンジャー#52

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘そうだ、京都行こう2

京都市内の寺、椿守寺。

名前の通り冬は椿の名所で観光客が多く訪れる。

室町時代後期創建。かの利休居士がここの椿を愛し、度々訪れたという謂れがあるとかないとか。

マダム・ドメイヌことウズメは「榎本家之墓」と刻まれた苔むした一基の墓石に手を合わせていた。

体型にぴっちりした喪服のスーツ姿である。

「久しぶりやな、クリスタちゃん」

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電波戦隊スイハンジャー#76

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘白拍子花子6

風の翼に乗って飛んでゆけ

懐かしい歌よ、ふるさとへ、

 気が向くままにおまえを口ずさんでいたふるさとへ、

 私たちもおまえもあんなにも自由だったふるさとへ

虜囚の女たちの歌声と共に、葉子は、目覚めた。

なんでうちは閉じ込められとるのや?

異様な形態をした3畳ほどの部屋に自分がいる。四方の壁は上方の頂点に向かってすぼんでいる。

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電波戦隊スイハンジャー#77

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘焔の天使ウリエル

2013年8月8日、夜9時10分を過ぎている。

四条川床付き屋敷のミュラー邸は屋根と2階全部を失い、曇った夜空の元にさらされていた。

京都市内は猛暑日続きの蒸し暑い夜だったが、この場所は鴨川からの風が寒いくらいに吹き付ける。

近未来的デザインの、メタリックオレンジの甲冑に身を包んだ身長2メートルの青年天使が廃墟と化した邸宅の、辛うじ

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電波戦隊スイハンジャー#78

第4章・荒ぶる神、シルバー&ピンクの共闘
焔の天使ウリエル2

以下、中学生藤崎光彦少年が記憶している限りの少彦名神の知識である。

むかしむかし、西暦が始まるずーっと昔の事で御座います。

出雲の国の王、大国主命(以下クニヌシ)は7代前の先祖である素戔嗚様から

「お前こそ私の後継者に相応しい。娘スセリビメを娶り、葦原中国(日本国の古称)を治めるように…

でも、娘に相応しい男かどーか試させても

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電波戦隊スイハンジャー#107

第六章・豊葦原瑞穂の国、ヒーローだって慰安旅行阿蘇6

小角と男メンバー6人が泊る離れ、鷹の間は壁面と屋根を黒くした古民家風の2階建てであった。

夕食から帰ると1階に4組、2階に3組と分けて布団が敷かれてある。

窓を開けると、冷房も要らない程の夜気が部屋中を満たす。阿蘇だけ一足早く秋へと進んでいる…

その夜は「これが独身最後の旅だべなー、みんな、ありがとな」と3日後に結婚式を控えた隆文をきっ

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電波戦隊スイハンジャー#211 小さきものよ

電波戦隊スイハンジャー#211 小さきものよ

第10章 高天原、We are legal alien!小さきものよ

そのあまりの小ささに吾の指の隙間から落ちた子らよ。

強い好奇心がゆえに数多の事象を知ろうとし、そして知りすぎた為に傷つけられ絶望し、

遂には自らの消滅を強く望み、絶望の大海を漂う小舟で眠る子らよ。

この宇宙で唯一お前たちを庇護してくれる者の処にいざ、

運びゆかん。

ざざん、ざざん…と規則的な波の音と時折吹く海風が心地

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