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【読書感想#18】文句なしの傑作です…。全世界で1000万部突破した「ある少女」の物語。(ネタバレなし)

【概要】

作品名:ザリガニの鳴くところ
著者:ディーリア・オーエンズ
翻訳:友廣純
発行所:早川書房
発行年:2020年
頁数:512頁
ジャンル:ミステリ、自然主義文学

【あらすじ】

ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。 
6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。 
以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。 
しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく…… 
みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。

【評価】

5/5 文句なしです。

【感想】

※ネタバレは含みませんのでご安心ください

本作は、全世界で累計1000万部を突破した、ある一人の少女の人生を追った感動小説である。
本が売れないと言われる現代社会で、1000万部を突破することにまず驚きを隠せないが、その規格外の数字に全く引けを取らないと感動と純粋な面白さを備えている。

著者は、アメリカの動物学者でもあるディーリア・オーエンズ。
なんと本作がデビュー作であるらしい。
このことを知った瞬間の私の驚愕っぷりは人には見せられないものだったと思う。
それほどに、本作の洗練された構成と世界観が鮮明に浮かび上がるような描写力は天晴としか言い様がない(もちろん、翻訳者の実力というのもあると思うが)。

先程も述べたように、本作は孤独に暮らす「湿地の少女」の成長譚でもある。
そして、一つの事件の謎を追うミステリーでもあり、自然環境や動物行動学を描いた社会派小説でもあり、「湿地の少女」の恋愛小説でもある。
このように本作は様々な側面を持った小説であり、それゆえに512頁数と膨大な文量を有している。
しかし、その幾千もの積み重なった言葉は見事に読後の解放感や虚無感をもたらし、傑作の傑作たる所以を示していた。

本作を読了したものは、必ず感嘆の声を洩らすだろう。
ぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

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