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【エッセイ】遅ればせながら、自己紹介をしようと思う。

「あなたという人間を一言で表すと?」 という面接官の質問に答えられる具合のいい言葉を僕は知らない。というか、そんな言葉はない。 私のこの薄っぺらい餃子の皮のような人生ですら表現できないとすれば、他の人にとっては至難の業である。 人間とは、頭部から順に、胸部、腹部、腰部、大腿部、下腿部と6つに分かれた構造を持ち、それらが骨によってつながれ、骨によって臓器が収納されている。 この体を自在に動かすために身体中に酸素を運ぶ血管が存在し、神経が通っている。 これほど人間について知

    • 【作家名鑑#1】たった三作で、ごく普通の専業主婦からカリスマ的作家に。

      1.はじめに今回紹介するのは、「グレイス・ペイリー」。 言わずと知れた、戦後のアメリカのカリスマ的女流作家だ。 また、二児の母であり、教師でもあり、政治活動家でもある。 まさに4足の草鞋を履く作家だ。 そんな彼女の人生遍歴と作品に関して、今回は紹介していく。 2.主な著作上記の三作は全て短編小説集であるが、彼女はこの三作しか世に出していない。 長編小説は一作も書いておらず、非常に寡作な稀有な作家だと言える。 3.人生遍歴1922年、グレイス・ペイリーはアメリカのニュー

      • 【読書感想#32】ハードボイルド・ワンダーランドってなに……?

        1.概要作品名:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 著者:村上春樹 刊行年:1985年 発行所:新潮文庫 頁数:(上)480頁、(下)416頁 ジャンル:フィクション、冒険 2.あらすじ3.評価4.0/5 4.感想「題名なげぇ……」 これが本作に対する私の第一印象です。 「ハードボイルド•ワンダーランドってなに……」 これが本作に対する私の第二印象です。 読み始めるまでほんとに何が何だか分からないこの作品は、「ハードボイルド」という名の通り、めったに感情を

        • 【読書感想#31】誰もが知る名作中の名作。読書家の必読書。

          1.概要作品名:日の名残り 著者名:カズオ・イシグロ 刊行年:1989年 発行所:早川書房 頁数:365頁 ジャンル:恋愛、歴史 2.あらすじ3.評価5.0/5 4.感想さすが、ブッカー賞 読み終わった後、真っ先にそう思いました。 物語としての完成度の高さはもちろん、感動できるポイントがあり、登場人物にもそれぞれの魅力がある。 上から目線のようで申し訳ないですが、文句のつけようがない作品でした。 カズオ・イシグロさんの作品は一般的に海外小説のジャンルに含まれますが、日

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          【読書感想#30】英が誇る文豪の最大傑作

          1.概要発行年:1860年 発行所:新潮文庫 頁数:(上)432頁(下)432頁 ジャンル:教養小説、冒険、恋愛、サスペンス 2.あらすじ3.評価4.5/5 4.感想本作が描かれたのは1860年のイギリス。 産業革命がひと段落した頃であり、インドはまだイギリス領でした。 遠い昔の話のようですね。 実際、文化や言語が違うので多少の読みにくさは感じました。 ですが、本作の真の魅力はそんな文化や言語の壁を越えてひしひしと伝わってきました。 「富は人を幸せにするのか?」という

          【読書感想#30】英が誇る文豪の最大傑作

          【雑文】どんな車を買おう

          どんな車を買おう。 見た目がスマートな車。色が好みな車。燃費が良い車。値段が安い車。 条件がたくさんありすぎて、一向に決まる気配がない。 村上春樹著の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の主人公は、マクドナルドのバーガーをテイクアウトするみたいに車を買っていた。 その時に、中古車ディーラーのセールスマンに伝えた注文はたった一文。 「何でもいいからそれほど大きくないのをひとつ欲しい」 なんだそれ。かっこよすぎるだろ。 そして購入後、セールスマンはこう言う

          【雑文】どんな車を買おう

          【読書感想#29】フーガはユーガ/伊坂幸太郎(2018)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:ふーがはゆーが 著者:いさかこうたろう 発行所:実業之日本社 発行年:2018年(文庫本:2021年) 頁数:284頁(文庫本:352頁) ジャンル:家族、感動、ミステリ、フィクション 【あらすじ】常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。 双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの、誕生日にだけ起きる不思議な現象、「アレ」のこと――。 ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、邪悪な存在に立ち向かおうとす

          【読書感想#29】フーガはユーガ/伊坂幸太郎(2018)【ネタバレなし】

          【読書感想#28】スプートニクの恋人/村上春樹(2001)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:すぷーとにくのこいびと 著者:むらかみはるき 発行所:講談社 発行年:2001年 頁数:328頁 ジャンル:恋愛 【あらすじ】22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。―そんなとても奇妙な、この世のものとは思えないラブ・ストーリー。 【評価】3.5/5 【感想】やはり、村上春樹の恋

          【読書感想#28】スプートニクの恋人/村上春樹(2001)【ネタバレなし】

          【雑文】高速バス

          僕は、高速バスは思いのほか嫌いではない。 好きな人はあまりいないと思うが(運行会社に失礼ですね。ごめんなさい。)、今のところ僕にとって苦痛を感じさせるものではない。 今のところ、と表現したのは、将来的に僕がせっかちになって、心の余裕が無くなってしまう可能性も捨て切れないからだ。 だが今はそんな話はどうでもいい。 僕の周囲には高速バスを忌み嫌う人々しかいない。 「膝が疲れる」、「おしりが痛い」、「車酔いする」など、多くのネガティブポイントを不服そうな顔で列挙するのを何

          【読書感想#27】52ヘルツのクジラたち/町田そのこ(2020)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:52へるつのくじらたち 著者:まちだそのこ 発行所:中央公論新社 発行年:2020年4月 頁数:260頁 ジャンル:感動、家族 【あらすじ】52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、

          【読書感想#27】52ヘルツのクジラたち/町田そのこ(2020)【ネタバレなし】

          【読書感想#26】王とサーカス/米澤穂信(2015)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:おうとさーかす 著者:よねざわほのぶ 発行所:東京創元社 発行年:2015年(文庫本:2018年) 頁数:472頁 ジャンル:ミステリ、サスペンス、社会派、長編 【あらすじ】海外旅行特集の仕事を受け、太刀洗万智はネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王殺害事件が勃発する。太刀洗は早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり…2001年に実際に起きた王宮事件

          【読書感想#26】王とサーカス/米澤穂信(2015)【ネタバレなし】

          【読書感想#25】夜明けの縁をさ迷う人々/小川洋子(2007)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:よあけのふちをさまようひとびと 著者:おがわようこ 発行所:KADOKAWA 発行年:2007年 頁数:201頁 ジャンル:短編集 【あらすじ】世界の片隅でひっそりと生きる、どこか風変わりな人々。河川敷で逆立ちの練習をする曲芸師、教授宅の留守を預かる賄い婦、エレベーターで生まれたE.B.、放浪の涙売り、能弁で官能的な足裏をもつ老嬢…。彼らの哀しくも愛おしい人生の一コマを手のひらでそっと掬いとり、そこはかとない恐怖と冴え冴えとしたフェティシズムをたたえる、珠玉

          【読書感想#25】夜明けの縁をさ迷う人々/小川洋子(2007)【ネタバレなし】

          【掌編小説】空の青さを知る人は

          海が青いのは空が青いから、というのを聞いたことがある。 細かい原理は忘れてしまったけど、妙に納得したのを覚えている。 「黒々とした海」と聞くと大体曇天を想像するように、僕は無意識に空の青と海の青を結び付けていたのかもしれない。 1961年にガガーリンもそのことに気付いたのだ。 「地球は青かった」 その言葉と同時に、きっと空の青さも頭の中に滲み出したことだろう。 想像の範囲を超えないが。 地上から見ても、宇宙から見ても、海は青い。 空というフィルターを通して、僕

          【掌編小説】空の青さを知る人は

          【詩】考えすぎると

          頭の中で虫が蠢くように思考が動き回る。 今を原点として、過去を回顧したり、未来を想像したり、あるいはそこにある共通点を探し、確かな道を見つけようとする。 正面から見てもどうしようもないときは横から見たり、上から見たり、あるいは斜めから見たりする。 それでも出口が見つからないとき、僕は頭を振り、白紙に戻そうとする。 しかし、それは止まらない。 ドミノが倒れていくように、「考える」という動作は動くことをやめない。 そして、それはやがて渦となり、下へ下へと深化していく。

          【掌編小説】映画館にて

          僕は、映画館で必ず笑ってしまう時がある。 エンドロールが流れているときだ。 洋画ではエンドロール後に映像が流れることがあるので、僕はそれが終わるのをずっと待っていた。 他の客もそれを知ってか、席を立つ人は少ない。 目の前の大きなスクリーンでは、黒地の背景を小さなローマ字が間断なく流れている。 英語は分からないでもないが、ベルトコンベアで運ばれるように流れるその羅列は呪文のように思えてならない。 それを数十人が所在なく眺めているのである。 僕もその一人なのだが、一

          【掌編小説】映画館にて

          【読書感想#24】同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(2021)【ネタバレなし】

          【概要】作品名:どうししょうじょよ、てきをうて 著者:あいさかとうま 発行所:早川書房 発行年:2021年 頁数:496頁(単行本) ジャンル:戦争、冒険、時代 【あらすじ】独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教

          【読書感想#24】同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(2021)【ネタバレなし】