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【読書感想#27】52ヘルツのクジラたち/町田そのこ(2020)【ネタバレなし】

【概要】

作品名:52へるつのくじらたち
著者:まちだそのこ
発行所:中央公論新社
発行年:2020年4月
頁数:260頁
ジャンル:感動、家族

【あらすじ】

52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。そのため、世界で一番孤独だと言われている。自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。

【評価】

5/5

【感想】

※ネタバレは含みませんのでご安心下さい

2021年本屋大賞受賞作。
感動の波が幾度となく押し寄せ、読者の心に浸透していくような祈りがこもった感動作品。
孤独なクジラの52ヘルツの鳴き声を、人間の悲痛な叫びと重ね、繊細にかつ表現豊かに描かれていた。

様々な作品を読んできたことでもう僕の涙腺は閉ざされてしまったと思っていたが、本作はそんなことなど関係なしに激しい水流で襲いかかってきた。
そうは言っても、泣いてたまるかと無駄な意地を張って実際に泣きはしなかったのだが、気を抜いてしまうと涙が出てきそうなほど心に響いた。

本作に登場する人物はみな脆く、愚かで、それゆえに切なさを感じた。
人はこうも変わってしまうのかという落胆する気持ちもあり、人の心はこうも真っ直ぐなのかと驚く気持ちもあった。
そういった二律背反こそが人間である証だと思ったが、同時に生きることの難しさを改めて実感した。

スマホが普及し、多くの人が多くの人の情報を手に入れられるようになった現代だからこそ、本作で描かれる悲しみは多くの人に共感できるものになっている。

ぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

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