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【読書感想#24】同志少女よ、敵を撃て/逢坂冬馬(2021)【ネタバレなし】

【概要】

作品名:どうししょうじょよ、てきをうて
著者:あいさかとうま
発行所:早川書房
発行年:2021年
頁数:496頁(単行本)
ジャンル:戦争、冒険、時代

【あらすじ】

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?

【評価】

4.5/5

【感想】

本屋大賞・アガサ・クリスティ賞を受賞した、現代に生きる人々のための傑作戦争小説。
主人公は、家族を目の前で失い、故郷をも焼き払われた女性狙撃手である少女セラフィマ。
人類史上類を見ない凄惨な戦争となった独ソ戦の中で、彼女は何を見て、何を聞いて、何をしたのか。
常に死と隣り合わせという状況で、生きる意味を自問自答し続ける彼女の葛藤、懊悩、憎悪が新人離れした筆致で描かれていた。
傑作たる傑作である。

物語を読む中で感じたのは、やはり筆者の圧倒的な筆力である。
多様な語彙力、巧みな文章構成力、微細な描写。
全て無駄なく、見事に特異な世界観を形成していた。
「戦争」という重厚でデリケートなものを扱うこと自体、とても大胆で勇気のあることだと思ったが、それを感じさせないほど、新人とは思えないほどの実力を本作で発揮している。

本作をアガサ・クリスティ賞の選考委員の方々のように5点満点にしなかったのは、その分厚さにある。
単行本で約500頁は、本屋大賞という肩書きを無くせばネガティブポイントに値するので、私は4.5点とさせていただいた。
しかし、本作のような長編戦争小説のためにはそのくらいの文量が必要だ、という意見もとても自然に呑み込めるので、人によってまちまちなのかなと思う。

本作を読んで思ったことや感受したことはもっとたくさんあるが、キリがないのでこのあたりで筆を置きたいと思う。
しかしこれだけは言いたい。
本作は書店に並ぶいかなる本をも圧倒的し、多くの人の心を鷲掴みにする作品と言える。

ぜひみなさんも読んでみてはいかがでしょうか。

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