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【読書感想#25】夜明けの縁をさ迷う人々/小川洋子(2007)【ネタバレなし】

【概要】

作品名:よあけのふちをさまようひとびと
著者:おがわようこ
発行所:KADOKAWA
発行年:2007年
頁数:201頁
ジャンル:短編集

【あらすじ】

世界の片隅でひっそりと生きる、どこか風変わりな人々。河川敷で逆立ちの練習をする曲芸師、教授宅の留守を預かる賄い婦、エレベーターで生まれたE.B.、放浪の涙売り、能弁で官能的な足裏をもつ老嬢…。彼らの哀しくも愛おしい人生の一コマを手のひらでそっと掬いとり、そこはかとない恐怖と冴え冴えとしたフェティシズムをたたえる、珠玉のナイン・ストーリーズ。

【評価】

3.5/5

【感想】

どことなく喪失感が漂う小川洋子の奇妙な短編集。
9つの短編全てが粒揃いで、なんとも形容しがたい作品集となっている。
現実離れした雰囲気を醸し出しながらも、私たちが住む現実世界に対して強烈な影響を与えるような、メッセージ性のある作品が多かった。
しかし全てがそうではなくて、もちろんエンタメに偏った物語や、単純に摩訶不思議な人々を描いたものも収録されているので、とても楽しみながらページを捲っていた。

どの短編も、独立して存在しているように感じるほど異彩を放っていたが、読み終えるとあるひとつの主題があることに気付く。
それが何なのかは、読者自身が知るべきものなので言わないが、現実世界に大いに影響を与えるようなものだと私は感じた。

小川洋子の淡々としていて、しかし確かな血が通っている文章がとても印象的だった。
一切無駄がなく、洗練されていて、まさにこういった小説が書けたら楽しいだろうなと素直に羨望した。

奇妙な世界を堪能したい人は必見の作品だ。
ぜひ手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

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