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【読書感想#32】ハードボイルド・ワンダーランドってなに……?

1.概要

作品名:世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
著者:村上春樹
刊行年:1985年
発行所:新潮文庫
頁数:(上)480頁、(下)416頁
ジャンル:フィクション、冒険

2.あらすじ

高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。

3.評価

4.0/5

4.感想

「題名なげぇ……」

これが本作に対する私の第一印象です。

「ハードボイルド•ワンダーランドってなに……」

これが本作に対する私の第二印象です。

読み始めるまでほんとに何が何だか分からないこの作品は、「ハードボイルド」という名の通り、めったに感情を表に出さない非常に内省的なある1人の男の物語です。

本作は、題名の通り「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の2つの物語が同時並行で進んでいきます。
「世界の終り」は組織と非組織が対立する、科学文明が発達した世界。
そして、「ハードボイルド•ワンダーランド」は高い壁に囲われ、外界との接触が完全に絶たれた世界。
一見全く相容れない世界同士ですが、物語が進んでいくにつれ、徐々に色々なことが明らかになっていきます。

この、よく分からないなぁ、の状態から徐々に真相が明らかになっていく様子がまさに村上春樹作品の醍醐味だなと毎回思います。

「世界の終り」という特殊な世界では、いわゆる「ハードボイルド」な主人公の男がほんとに色々なことに巻き込まれていきます。
どうしようもない理不尽なこと、説明がつかないようなこと、ほんとに色々な災難が彼の身に降りかかってきます。
そんな中で、男は何を思うのか。どう行動するのか。その結果、何が起こるのか。
次の展開が全く予想できない物語構成で、常にワクワクドキドキするというか、続きがほんとに気になる作品でした。

これまで述べたように描かれる世界自体は現実離れしていますが、主人公の心情にとても共感できるので(多分同情心もある)、臨場感や没入感もとことん味わうことができます。格別です。

村上春樹さんの久しぶりの長編新作「街とその不確かな壁」が話題となり、書店でも一番目立つ場所に陳列されていますが、どの書店でも近くには本作の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が置いてあります。
つながりがあるのかはまだ新作の方を読んでいないので分かりませんが、新作のために本作を読んでおいて損はないと思います。
ぜひみなさんも読んでみてはいかがでしょうか。

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