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小学校から帰ってきたら、必死こいて集めたNARUTOが売り払われてた話

小6の時だった。
私はNARUTOが大好きで、それまで出ていた単行本を少しずつ少ないお小遣いで購入し、部屋の至る所に隠していた。
その時は10巻ほど持っていたように思う。
まずなぜ"少ないお小遣い"でNARUTOを購入し、"部屋の至る所"に隠していたのか説明しなければならない。

⚫︎ついにお小遣い制へ

私の家は小5からお小遣い制になった。
確か毎月700円ほどもらえるという話になっていたように思う。
もともと好きな物が買ってもらえる家ではなく、どこかに家族で買い物に行っても、チョコ1枚もねだれない家だった。
父親は大企業でそこそこ出世しており、お金に困る家ではなかったが、欲しい物はいくら安い物でもほとんど与えられなかった。

小学3年生くらいになると、友達の家はお小遣い制らしいということを聞くようになった。自分の自由にできるお金で好きなものを買えるということに強い憧れを抱いた。
その時からしつこく、それはもうしつこくお小遣い制の導入を親に頼み続けていた。
そのかいあって小学5年生でお小遣い制の導入に漕ぎ着けたのだ。


⚫︎そんなに甘い話はない

しかしうちの家はそんなに甘くなかった。
毎月1日にお小遣いを700円渡される決まりだったのだが、支給月の前月の月末になると必ずなにかしらのイチャモンをつけられるようになった。
例えば、「キッチンのドアを閉めろと言っているのにこの前ドアが半開きだった」や、「階段をドスドス音を立てて登った」「ピアノの練習に気持ちが入ってなかった」「7時30分に起きろと言っているのに7時40分に起きた」などだ。
イチャモンは多岐にわたってつけられ、
「だから来月はお小遣いなし!」
と毎月月末に言い渡された。
そのため一年を通してもまともにお小遣いをもらったのは2.3回だった。


詳しい話はこちら↓


その貴重な貴重なお小遣いと、新年に祖父母からもらうお年玉をNARUTOに注ぎ込んでいた。お年玉の半分は貯金と言われ母に取られるし、その取られた半分は1円も返って来なかった。


⚫︎サブカルクソおばさんの誕生

ではなぜ部屋の至る所に隠していたか。
私の家は基本的にアニメやテレビ、漫画を良しとしない家だった。
音楽、ラジオ、読書(小説、エッセイ、歴史まんが)は許されていたが、アニメはジブリとドラえもん、ちびまる子ちゃん、サザエさん以外は基本的にアウト、クレヨンしんちゃんなどありえない。教育に悪い。といった考え方で、漫画も歴史まんがとドラえもんの数学やことわざの漫画くらいしか読ませてもらえなかった。
この時の反動で今の私はアニメも漫画も人一倍読むサブカルクソおばさんになってしまっている。

こんな教育方針の家庭でも私はNARUTOが読みたかった。
友達からジャンプをこっそり読ませてもらったりしてNARUTOのことが大好きになっていた。
NARUTOの漫画を集めたいと、いつでも好きな時に何回も読みたい。と思うのは必然だった。


⚫︎犬のように隠す

私はNARUTOを買う度に、見つからないように部屋の至る所に隠した。
違うカバーをつけて本棚にしれっと置いてみたり、クローゼットの中のタンスの後ろに隠してみたり、タンスの底に置いて服で隠したり、机の引き出しの底に入れてその上を板で覆ってから引き出しの中身を入れたり、逆に灯台もと暗しだろうと言う考えから、親のウォーキングクローゼットのタンスの中(バブル期の服しか入ってない親が頻繁に触らないタンス)に隠したり、小5の小さな脳みそをフル回転して隠し場所を見つけては隠していた。


⚫︎ついに10巻到達

無事10巻ほど集めた時、私は小学6年生だった。
その日は学校を終え、塾に行き帰宅。
帰宅した時に母の様子がおかしかったが何も言われなかったので、何か言われる前に早く部屋に引っ込んでNARUTOでも読むかと思い、自室にそそくさと戻った。
部屋はまるで強盗にあったかのようにぐちゃぐちゃになっていた。
本棚の本は全て床に落ちていたし、引き出しの中身は床にばら撒かれていた。
クローゼットのタンスからは服が出されていて、私は何が起きたのかを悟った。


正直いつかこうなるとは分かっていた。
うちの母は定期的に部屋を荒らし、気に入らない物(友達からもらった少女誌のコスメ付録、友達と教室でやり取りした手紙、日記など)を見つけると1時間私を怒鳴りつけたり、目の前で破り捨てたりする。

それでも上手くやってNARUTOを隠し通してきた。
母が怒るネタにしそうな、それでいて捨てられてもいい物(手紙など)を隠し引き出しの上に置いてフェイクに使ったりしていた。
自分でも上手いことやっていたと思う。

しかしついにこの時が来てしまった。
私のNARUTOはなくなっていた。


⚫︎NARUTO、売り払われる

どうせ聞いても答えはわかっていたが、下に降り母親になぜ部屋がこうなっているのか聞いた。というよりわめいた。すると、
「漫画なんて読んで!勉強もせんと読んでたんやろ!あんなもん!全部売ったわ!」
というようなことをヒステリックにわめかれた。
そこから1時間ほどわめかれ怒鳴られ叩かれたが、私はそんなことより自分のNARUTOが売られたことが悲しかった。

部屋のNARUTOは全部売られてしまったが、さすがに母のウォーキングクローゼットのはバレてないだろうと思いクローゼットを見に行ったが、ウォーキングクローゼットもぐちゃぐちゃになっていた。というより2階の部屋は全部ぐちゃぐちゃに荒れていた。
私の部屋で見つけたNARUTOに抜け巻がいっぱいあったから家中家探ししたんだろうなと推測。

親が落ち着いてからどこに売ったのか聞くと、ブックオフに売ったと言っていた。
私の貴重なお小遣いとお年玉でせこせこためていたNARUTOは、きっと1000円にもならなかっただろう。悲しすぎる。


⚫︎これが大人の財力だ

大人になった私は、全72巻のNARUTOを電子書籍で購入した。

これが大人の財力だ。見てるか、小6の私。
ちなみに今は無職で財力のかけらもない。
誰かお仕事ください。ガチで。
XのDMまでお願いします。

今の私は全72巻のNARUTOをいつでも好きな時に好きなだけ読める。
とは言っても、この世にはNARUTO以外にも最高の作品がいくつもある。
今となってはたまにしか読み返さないが、毎回電子書籍でNARUTOを開く時、この”小学校から帰ってきたら必死こいて集めたNARUTOが売り払われてた話”を思い出すのだ。

読んでくれてありがとう。

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