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映画鑑賞

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映画感想など
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2022年12月の記事一覧

2022年の「酒。読書。観劇。それだけ」(飲みある記、読んだ本、観た映画・芝居リスト)

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年はこんな感じ……

(小見出し部のリンクは、私の関連拙稿です。また、「本」関連で出版社のリンクは、出版社サイトの当該書籍ページにリンクしています)

新たに読了した本(61冊)1.世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論

著者:カルロ

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猫と人間の平和的幸福的共存への希望~映画『猫たちのアパートメント』~

普段街を歩いていて猫に出くわすことがある。
無責任な通りすがりの者としては、飼い猫なのか地域猫なのか、はたまた野良猫なのか気にすることもなく、単純に猫の愛らしさに頬を緩めるだけなのだが、そうして猫と別れた後、ふと「猫はこの世界をどう認識しているのだろう」と考えてしまう。

同じことは、映画『猫たちのアパートメント』(チョン・ジェウン監督、2022年。以下、本作)に出てくる猫たちにも言える。

要す

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映画『はだかのゆめ』

映画『はだかのゆめ』(甫木元空監督、2022年。以下、本作)は、タイトルが示すように、「眠っているときに見る夢」のような物語だった。

約60分の「夢」には、一応、ストーリーというか設定みたいなものがある。

徘徊しているノロは度々、酔漢(前野健太)に出会い、不思議なやりとりを交わす。
この辺りが「夢」を想起させるのだが、映像というか編集にも特徴がある。
それは、パンフレットに掲載されている小説家

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2019年11月、香港の大学が燃えていた~映画『理大囲城』~

映画『理大囲城』(香港ドキュメンタリー映画工作者制作。以下、本作)を、ずっと腕組みしたまま観た。
香港の民主化デモに対してシニカル気取りで上から目線で観ていたというわけではない。
腕をほどいて自身への拘束を解くと、自分が何かをしてしまいそうで怖かった、と同時に、自身の防御を解くと、何かに攻撃されそうで怖かった。

本作は、「香港理工大学包囲事件」と呼ばれる、『2019年11月13日から29日の間に

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映画『にわのすなば GARDEN SANDBOX』

旅行に行ったり、遠方へ引越したりして見知らぬ街を歩くとき、自分の住んでいる(住んでいた)街とそう変わらない住宅街や商店街なのに、ものすごく不安で心許ない気持ちになったりする。全国どこにでもあるコンビニチェーンのお店ですら、何かただならぬ雰囲気が漂っている気がしてしまう。
いや、別に遠くでなくても、隣町の友人を訪ねて街を歩くときも同じだ。
行き交う人々もお店の店員も、善良そうに振舞ってはいるが、内心

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映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』

2022年の「Yahoo!ニュース 本屋大賞 ノンフィクション本大賞」に『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)が選ばれた……らしい。
その著者であり、白鳥さんとアートを見にいったのは川内有緒さんで、その彼女が今度は、我々観客を白鳥さんとのアート鑑賞に連れ出してくれた。

東京ドキュメンタリー映画祭2022・長編コンペに出品された映画『目の見えない白鳥さん、アートを見

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若者は何故闘うのか~映画『少年たちの時代革命』~

「悔しくても香港は変わらない」
長期化するデモを経て、もしかすると多くの香港市民の諦観となってしまったのかもしれないこの言葉が、一人の少女を絶望させ、彼女を救うべく若者たちが街を駆け巡る。

映画『少年たちの時代革命』(任侠・林森共同監督、2021年。以下、本作)は、2019年から続く香港の民主化デモを舞台とした「劇映画」だ。
だから、おそらく本国で上映されることはないだろう。
それを承知している

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映画『ケイコ 目を澄ませて』

50歳を過ぎたオヤジのくせに情けないのだが、何十年かぶりに、泣きながら映画館を出た。

2022年は『コーダ あいのうた』が米アカデミー賞作品賞を獲ったり、日本でも深田晃司監督の『LOVE LIFE』が公開されたりと、ろう者を扱った映画が話題になった。
女性ボクサーを扱った映画では、日本には『百円の恋』(足立紳脚本・武正晴監督、2014年)という「号泣必至で映画館で見られない」超名作がある。

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映画『そばかす』

『これ"で"いい』
見合い後に付き合い始めた男と別れ、そのことで結婚を期待していた母親(坂井真紀)と口論になった後、心配した妹(伊藤万理華)に「これでいいの?」と問い質された蘇畑佳純(三浦透子)がそう言ったのを聞いて、胸を衝かれた。

佳純本人がどう思っていたのかは、わからない。
わからないが、本当は彼女は『これ"が"いい』と言いたかったのではないか、と思った。

映画『そばかす』(アサダアツシ脚

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絵本のような映画~映画『ドーナツもり』~

公子がアルバイトをしている神楽坂の「ドーナツもり」という名前の小さなドーナツ屋さんに、若いカップルがやってきました。
二人はそれぞれ、食べたいドーナツを1つずつ選びました。
公子がショーケースからドーナツを取り出し紙袋に入れていると、女の人が男の人に言いました。
「ねぇ、半分こしない?」
男の人はショーケースの中を覗き込んだまま女の人を見ないで言いました。
「いや、一人で食べる。もう1個買おう」

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時代の寵児~映画『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』~

カリスマが時代を創るのではなく、時代がカリスマを創るのだなぁ、と映画『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』(サディ・フロスト監督、2021年。以下、映画)を観て思った。
この映画は、デイジーのロゴマークで知られるイギリスのファッションブランドの創設者・デザイナーである、マリー・クワント氏の半生を追ったドキュメンタリーである。

冒頭の言葉に戻ると、20世紀末から現代まで、「時代」はカ

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