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探さないでください 私はどこかにいますから~映画『おらが村のツチノコ騒動記』~
ツチノコは絶対にいる!
映画『おらが村のツチノコ騒動記』(今井友樹監督、2024年。以下、本作)を観ながら、そう確信した。
だって、全国のお年寄りがこぞって、「自分も見た、近所の誰それさんも見た」と、子どもに還ったように目をキラキラさせて興奮気味に話すのだから、これは絶対にいるのだ。
こうした話は昔からある。
「雪男」だの、「口裂け女」だの、その他諸々の都市伝説……
しかしそうしたものと「ツ
映画『ゴースト・トロピック』
以前、別稿にも書いたが、酔っ払って終電に乗れなかったり、乗れても寝過ごしてしまったりして、深夜の街を自宅目ざして歩き続けた経験が、何度もある。
見知らぬ場所ということもあるし、それ以上に「深夜」という要素が大きいのだと思うが、普段は見えない物や人に遭遇することが多い。
間違ってはいけないのだが、それは、昼と夜で街に出る人が入れ替わる、ということではない。
夜遭遇する人も、ドラキュラでない限り、我
立ち現れた「等身大の女子高校生」~映画『水深ゼロメートルから』~(改稿)
高校演劇のリブート企画第二弾で、4人の女子高校生の物語で、しかもそれを、4人の女子高校生の物語を描いた超名作映画『リンダリンダリンダ』(2005年)を生み出した山下敦弘監督が撮る。
これはもう絶対観るしかない!
ワクワクしながら、映画『水深ゼロメートルから』(山下敦弘監督、2024年。以下、本作)を観て、見事なまでに強烈なビンタを浴びせられた、いや、物語に即して言えば「砂をかけられる」、しかも男で
歌の力は凄い!~映画『ラジオ下神白』~
震災なんて無かった方が良かった。
もちろん、そのとおりだ。
2011年の東日本大震災では自然災害だけでなく、それ以上に、原発事故や復興計画・復興事業の混乱・不手際といった人災に被災者の方々は翻弄され続けた。
震災なんて無かった方が良かった。
もちろん、そのとおりだ。でも、震災も人災も起きてしまった。
それがどんなに理不尽なことであっても、その過去を変えることはできない。
とても不謹慎な言い方かもし
映画『見知らぬ人の痛み』に寄り添う
ネット検索をほとんどしない。そもそもネット自体そんなに利用しない。SNSも(LINEを含めて)やっていないし、配信動画も見ない。
理由は簡単で、ネットには私の知りたい事が書かれていないから。
当たり前のこと過ぎて忘れているかもしれないが、ネットには「誰かが書いたことしか載っていない」、しかも、テスト用紙にたとえれば、途中の計算式などを無視して解答しか書かれていない、私が知りたいのは、「答え」では
映画『さよなら ほやマン』【映画賞受賞記念アンコール上映】
スクリーンで観られてよかった。
映画『さよなら ほやマン』(庄司輝秋監督。以下、本作)が2023年に公開された時、名作だと評判になっていたのは知っていた。上映後の映画館からたくさんの観客が笑顔で出て行くのを目の当たりにしたこともある。
2024年になってからも、各地でロングラン上映されていることも知っていた。
なのに、私は他の映画や芝居などを優先して、観に行かなかった。
だから、本作で兄弟を演じ
人の夢を笑うな~『映画コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』~
人の夢を笑うな
『映画コザママ♪ うたって!コザのママさん!!』(中川陽介監督、2024年。以下、本作)で印象的なセリフだが、しかし我々は、そもそも「夢」というものに、それこそ夢を持ちすぎているというか、縛られているのではないか、と思った。
物語の構造としては、「ご当地映画」と「再結成物語(『大きなハードル』=仲違いの解決)」の定型を踏んでいる。しかし、数多のそれらと決定的に違うのは、そこが沖
映画『霧の淵』(ユーロスペース独占先行上映)
「私はまだ子どもやから」
母親と並んで歩く12歳の少女の正面からの2ショット長回しのシーンを観ながら、その少し前に少女が母親に告げた言葉が蘇り、何故だか泣きたくなった。
映画『霧の淵』(村瀬大智監督、2024年。以下、本作)はフィクションでありながら、それを支えているのは圧倒的な「リアル」だ。
まず、奈良県吉野郡川上村の自然があり、そこに足繁く通った村瀬監督、その中で築かれた関係によって地元の