麗らかな午後における発狂まえの色
あかるい月のアイボリーホワイトを見あげて、円周率の夢を見ていたことに思い至る。伏せていた目をひらくと太陽光線の金糸色のなか、野の緑のすみれに寝そべっていた。
Maryへ呼びかけるフィルモアの風がここにも流れ、花のすみれ色をゆらす。
馥郁たる光景、そのことばがただしいことばとなるこの麗らかな午後の金糸色のなか、百の幸福論を眺めた目をふたたび伏せればまぶたの裏のあかるいオレンジに太陽の黒点を見いだす。
こんな平和な日々のなかにいながら、地球が焦げる匂いの予感に思わず祈ってしまうと語りかけるたび、幸福論を超えた幸福になればいいのではとキメながら決め台詞を決まって口にする君が気になる。
諸君、冬は去った。諸君、夏をまえにした我々は、けれどもなおふるえるように不安である。
否、
すぎ去らない気がするのは薄着すぎるからにすぎないのである。少なくもスタジャンかスカジャンですごせば静穏、すでにそんな季節でさえあるし。
さしすせそ、なんとでもいえばいい。気が触れる予感は確かにある。
野の上の緑で色彩文庫の山吹色をめくり、ギンズバーグの輝ける真昼の星の銀色に目を細めつつ《ビートよこせ》とライムつぶやいて思わず苦笑すれば、藤の花のパープルめがけて熊蜂の黄金がよぎる。
かたちをうまく見いだせない麗らかな午後に、かたちを染め抜く色彩に何かを見いだせたならばと、漸進的に染まりかける狂気を内に秘めて色々とすごす。
Dedicated to color