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30年ぶりに七段の雛人形を出したらヤバかった

1991年、今は亡き祖父が買った雛人形は豪華絢爛な七段飾りでした。初の孫娘がそりゃもうかわいかったのでしょう。社長だった祖父はお金に糸目も付けず、たいっへん豪華な雛人形を買ってきたのです。愛ゆえに。

ミニマリストが流行る令和は、せいぜいお雛様とお内裏様二人の雛飾りがあればいいほうで。

しかし、30年前といえば、バブル時代!

豪華絢爛な雛飾りが流行っていました。
豪華さとは、まず人形の多さに表れます。最大で15体。15体を飾るには、六畳間が必要です。収納しても、押し入れの半分以上を余裕で占めます。

完成予想図


「飾るのが大変だから」と母も30年以上手を付けられずにいました。

ある日、私が雛人形の夢を見たことをきっかけに、開封作業(風通しという)を行うことに。

「出すのには気合がいるのよ」とため息をついていた母の苦労を、私は身をもって知ることになるのです。


開始時刻は朝10時

大きな雛人形は出すには時間がかかるので、余裕をもって始めます。保育園に子どもを預け、すぐに実家へ向かいました。


風通しを行うには?

➀まずはブルーシートをひきます
②大人2人がかりで箱をそーっと出します
③箱の位置を間違えないように記録します(説明書が一応ある)

段ボールの中身をすぐに出さず、写真を撮りながらやるのがコツです。


開封の儀

いよいよ、お雛様・お内裏様から開けていきます。
管理状態が悪いと虫が着物をかんでいたり、顔にカビが生えていたりするようです。

雛人形は顔が命なので、丁寧に和紙や柔らかい紙でくるんでありました。

いよいよご対面です。
がさつな私も、今日は頑張って几帳面(当社比)になります。

隠れていた豪華な着物が顔を出しました。
金糸で刺繍された職人芸が光っています。これは素人でも分かる、めちゃくちゃ金かかっとるやつ

30年しまったままでも、この気品。
傷一つなく、美しいままでした。

平安文学好きな私にはたまらない、十二単の豪華さ。着物が丁寧に作り込まれているので、ずっしりとした重みがあります。

紙の生え際は一本一本筆で描かれ、歯も黒く染めてあります。芸が細かい。

お内裏様も気品ある佇まいです。この繊細な職人芸、伝わりますか?指先も美しすぎるんじゃ。


従者たちも30年ぶりに光を浴びる

次は三人官女の登場です。

しとやかなお雛様と変わって、官女たちのせわしない、楽しそうな雰囲気が出てきます。そもそも雛人形は嫁入りの様子を表していますからね。

続きまして、従者たちも出てもらいましょう。

いっきに表情が豊かになっていきます。左から笑い、泣き、怒り顔だそう。宴会の華やかな様子が伝わってきますね。

五人囃子、随身たちも出して、メンバーは勢揃い。
左大臣の顎に少し傷がありましたが、それ以外は皆傷一つなく、きれいなままでした。

これで15体全部出せたし、な~んだ思ってたより簡単じゃん。
…あれ?何か足りないような。

雛飾り大変なのは小物から(五七五)

小物…?
帽子、刀、太鼓、柄杓ってオプション?
一人ひとりに持たせるの?(総勢15体)

ハッ、だからみんな手が所在なさげだったのか。

持ち物以外にも、飾りも大量にあります。

箪笥の引き出しも実際に動かせる職人技

\嫁入り道具もありまっせ/

・箪笥
・針箱
・火鉢
・鏡台
・茶道具
・長持
・表刺袋(うわざしぶくろ)

\嫁入りの車もご用意してます/
・牛車
・輿

あっ、これはヤバいやつ(気付いた)
既にリビングが箱だらけ。収納位置を守らないと、最終的に箱がしまらなくなる恐怖まであります。大変です。

出しても出しても、嫁入り道具が尽きません。
お姫様の嫁入りなので当然です。

立派な桃と橘がありました。
ここまで来ると、大きな飾りのほうが飾りやすそうで安心感が出てきます。


作者が判明

さて、こんなすんばらしい雛人形を作った方は誰なのでしょう?

二篠勝翠作。にしのしょうすい。
調べてみると今も兵庫県に会社がありました。ひぇーーー。

実際は髪、手、衣装担当といろんな分野の職人さんが力を合わせて作っているので、勝翠さん一人がすべてを作り上げたわけではありません。

大勢の職人さんたちが時間をかけて、丁寧に丁寧に仕上げたのが、この雛人形なのです。


出しても完成には程遠い

この15体を完璧に飾るにはどうしたらいいのでしょうか?

完成予想図

六畳の部屋を用意します
②大人を4人集めます
③ひな壇を組み立てます
④毛氈をひき、クリップで固定します
⑤雛人形たちを飾ります
⑥小物を持たせます
⑦嫁入り道具を飾ります

\ちょっと待てぇ/
心の中のノブが叫びます。

とんでもない雛人形には、途方もない苦労があります。
そもそも、雛人形は女の子の健やかな成長を祈るもの。愛ゆえに、こんな豪華な雛人形を買ったことは、親になった私にはよく分かります。

けど、ほんとこりゃ大変だわ(笑)
気合の入った大人が数人いないと、絶対に飾りきれません。

大雑把でも雛人形を飾れる代行サービスを発見

大雑把な私には、この雛飾りはとても扱えない。でもこんなにきれいに保存されているから、処分せずにちゃんと飾ってあげたい。

そう思っていたら、人形屋さんによる飾り付け・片付けサービスを見つけました。ナイス、藤娘!(ちなみに買ったのも藤娘だった)

七段飾りも7,700円で飾りつけてくれるそう。これはありがたい!!
うちの雛人形はオプションが山ほどあるので、別途料金がかかるかもしれませんが、プロに頼めるなら安いです。

母も安心して、「それならミシン部屋を…」と飾る算段を立てているようでした。


30年越しに感じる祖父の愛

雛人形を買ってくれた祖父は、私が中学生の頃に亡くなりました。白髪を伸ばしてポニーテールに結って、作務衣を着ていた、侍のような人でした。

よく本を読み、よく書き物をする人で、私と似たところもあります。

現世ではもう会えないけれど、雛人形を通して、祖父の愛情を受け取りました。

とんでもないものを残してくれたな、じーさん。

できるだけ大事にするから、見守っててね。


雛人形の素敵な歴史が知りたい方は、こちらのHPへ。





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