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短編

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#恋愛

曖昧

曖昧

付き合うでもなく、お互いに好きだと口にすることもかったけれど好意を寄せ合っていたのは確かだった。

専門に入学してすぐの、先輩達からの挨拶でわたしはその人に目を向けた。初めの印象は格好いいな、だった。単純だけれど、お互いそんな感じの始まりだったのだと思う。

授業も終わり何となくひとり窓の外を眺めていたら、その先輩に声をかけられた。

「なに一人で黄昏てるの?」

内心、心が踊った。

他者承認に

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クスクス笑う貴方を私ならもっと上手に愛せるのに

クスクス笑う貴方を私ならもっと上手に愛せるのに

私の好きな人は友人の彼氏だった。

その人の背は電車の吊り革程度で
襟付きの服を着ない首元はやけに色気があった。

友人から彼の話を聞く。
あんなところが嫌だ、もっとこうして欲しい。
…私だったらもっと上手に愛せるのに。

愚痴という名の惚気を永遠と聞かされた
駅前のファミレスのドリンクバーは何種類もあったが
いつも決まって飲むのは好きでもないアイスコーヒー。
貴方が好きだと友人が教えてくれたから

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あれは普通の恋

あれは普通の恋

私はなんとなく生きてきた

普通で普遍で凡人

彼の鼻筋を人差し指でなぞったその朝までは

春が来て、空が梅雨に覆われて夏を迎えるように

夏を舞台に歌われるあの歌のサビが繰り返されるように

わたしにはいつだって恋人がいた

人を変え、場所を変え、歳を変えてもなお恋人はいた

なんでもいいよ

と言う私

返答は人それぞれだった
怒る人 同調する人 提案する人

結局何でも良い私は体を許して体を

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