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小説

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自作の小説です。 最近はほぼ毎日、500〜2000字くらいの掌編を書いています。
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#SF

【小説】山彦(仲間が見つかるSNSの話)

【小説】山彦(仲間が見つかるSNSの話)

 流れていくタイムラインの中で、「仲間が見つかるSNS」という広告が目に留まった。

 今使っているSNSでは頭の中がお花畑の低脳が大量に生息していて、俺はいい加減飽き飽きしていた。俺と同じような考えを持っている人間とつながれるならと、俺はそのKodamaというアプリを早速ダウンロードしてみた。

 ユーザー登録を済ませると、早速投稿の入力画面に移った。今思っていることを書いてみようと説明書きにあ

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【小説】違和の証明(人間に生まれた宇宙人の話)

【小説】違和の証明(人間に生まれた宇宙人の話)

 ずっと人間になりたかった。

 違う。人間にならなければいけないと思っていたんだ。

 自分の身体がどうしてこんな風なのか不思議だった。

 細長く、凹凸だらけで、常に動いている身体。こんなの変だ。気持ち悪い。五本の指のある手が、本来あるはずのないものと感じられる。鏡に映る姿が不気味で直視できない。まるで人間そのものの顔だから。

 狼に育てられた人間の子供が、ある日、自分の身体が実は狼の身体だ

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【小説】可愛い女(可愛がられるために自分をなくす話)

【小説】可愛い女(可愛がられるために自分をなくす話)

 就職するにあたって、本物の陶器肌ファンデというものを買った。

 肌を陶器のように滑らかに見せる化粧品は他にも多くあるが、このファンデーションの特徴は化粧をしていない時にあった。このファンデーションを使い続けると、徐々に肌質が変わっていき、すっぴんでも陶器肌をキープできるというのだ。

 入社式までの二週間、本物の陶器肌ファンデを毎日付け続けた。売り文句に嘘はなく、入社前日の洗顔後は鏡に顔を寄せ

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【小説】反証可能性(科学に裏付けられた驕りの話)

【小説】反証可能性(科学に裏付けられた驕りの話)

 一本の論文が世界を揺るがした。人間と動物の決定的な差異をついに発見したというのだ。

 粒子と波動の二重性のため、あらゆる物体は波動としての性質も持っている。人体をはじめとする生物の体も例外ではない。その波動を継続的に測定し、時間ごとに得られたグラフを重ね合わせると、特定の生物についてだけは美しい蝶のような紋様が得られた――つまり、人類だけに。

 「波動紋」と呼ばれたその理論は瞬く間に知れ渡り

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【小説】望郷の形(プロローグ)

【小説】望郷の形(プロローグ)

 自分は宇宙人なのだと生まれた時から知っていた。

 だけど両親はぼくを人間の子供みたいに育てたし、誰も彼もぼくを人間と同じように扱った。どうやら彼らにはぼくが人間に見えているらしかった。

 細長い本体に、感覚器官の集中した突起が一つ、移動用の突起が四つ、または六つ、または二の倍数でもっとたくさん。身の回りにいる大抵の生き物は共通してそういう奇妙な構造をしていた。ぼく自身でさえ。

 この身体に

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