マガジンのカバー画像

#ほんの一瞬の物語

13
この街のどこかで、ほんの一瞬で終わってしまう物語の破片を集めました。
運営しているクリエイター

#短編小説

パパの絵本

パパの絵本

「パパ、どうして⁉︎
今日は遊園地に行くって約束したのに。」

「ほんとうにごめんな。
仕事のトラブルの電話かかってきてしまって。」

そう言ってパパは急いで会社に行ってしまった。

「ひどいよ!休みの日には電話かけてこないでくださいって今度社長さんにお手紙書かなきゃ。」

ぶつぶつ文句を言ってたらママが言った。

「パパも最近忙しいからね。
洗濯が終わったら公園に行こうか。
それまでちょっと遊ん

もっとみる
ないものねだり

ないものねだり

思い描いているものがある

こうありたい自分と
そうでない自分

色んな人に囲まれて
笑っている君を見て

そうなりたいと願って望んで
ないものねだり

今の自分で十分じゃないか

そう思えたら楽なのに

どうしてこうも
君の中に見出してしまうのだろうか

ないものねだり

人はみんな
ないものねだり
完璧じゃないから

きっと理想としている君にも
ないものねだり

きっとあるとはわかっているけど

もっとみる
生き様

生き様

僕は大切な命が失われるのを真近で見た

足元がぐらついたような感覚に襲われ
頭の中が真っ白になって耳鳴りがしてた

今自分が置かれている状況を把握するのを拒絶してた

ひたすらにひたすらに拒絶してた

誰かがそっと手を握ってくれた
その手がとても温かくて、痛いほど温かくて

ああこれは夢じゃないんだとぼんやり思った

現実に引き戻されて
ただひたすらに涙が出てきた

言葉は何一つでなかったけど

もっとみる
不変

不変

じっと僕を見つめる君
そしてふと口を開く

「ねぇ、知ってる?」

半分眠っていた僕は、無言で君を見た

「人間の視覚って不変なものは
見えなくなっちゃうんだって」

「・・・ふーん」
眠気に勝てずにおざなりな返事をした僕

そんな僕を見て、
君は怒っていたのか、悲しんでいたのか、
今となってはわからない

ただ、眠りに落ちる前の
君の言葉だけははっきり覚えてる

「ずっと見てるから、あなたも見え

もっとみる