山影も空ゆく雲も水の秋 人影も梢も街も水の秋
吸う息を引き取る先の天の河 吹き返す息の染み入る山河かな
鈴蘭の揺れて淋しい胸が鳴る
夏の日に砂地揺らめく波紋かな
野垂れ死に 腸を破りて 蝿生まる 水死体 遊女の頬に 蠅生まる
冬の蝶廻りて消えし墓の裏
国廃れ 赤児微笑み 桜咲く ひかる
幽世のこぼれて香る金木犀
幽世(かくりよ)の香のこぼれてや金木犀
ひょいと逝く 光の世界と聞きしかど 明暗不二の とわの閑けさ
雨上がり脳に染み入る蝉の声
死んでいく細胞の夢放たれて
今ここで光は時を知らぬまま
墓洗う首を上げれば夏日かな
吸う息の往き着く果ての銀河かな
閑さや音なきyes満ちあふれ
浜風に風葬髑髏も歯を鳴らす
さまざまなこと想い出す金木犀
主亡く蜂のみぞ知る茶花かな
日溜まりや金木犀の浄土かな
めらめらと時空も歪む原爆忌