小学校で「関係」に基づく評価を行うヒント『何のためのテスト?』第4章(読書会記録)
社会構成主義第一人者ガーゲンの「何のためのテスト?――評価で変わる学校と学び」のオンライン読書会の記録です。※あくまで個人の受け取り方・感想です。
第5回は第4章。これまで提案されてきた関係に基づく評価(学びのプロセスを向上させる評価/学びへの継続的な取り組み/関係の質を豊かにする)について、初等教育(小学校)での具体的な実践について書かれていました。
「プロセス」を評価とは?
前章でもそうだったのですが、「学びのプロセス」「評価のプロセス」「関係のプロセス」と、「プロセス」という言葉がたくさん出てきます。
混乱するなーと思ったのですが、読書会の中で翻訳者の先生からは、「動的な過程であることを言いたいのでは?」とのことで少し納得しました。
つまり、「テストをしてその結果で評価をする」という一時的な点のものではなく、「学びの過程(そこに至るまでの道のり)での気づきや考えたことを大事にみて評価をする」というイメージなのかな……?
また、通常の評価は教師から生徒へ一方通行な評価をするものですが、プロセスを大切にすることで、「教わる側」も一緒に評価に加わることができ、より学びを自分ごと化しやすいのかなと思いました。
面白そうな取り組み
関係に基づく評価の具体的な取り組み例がたくさん挙げられていますが、中でも特に面白そうだったり、家庭でも意識ができそうと思ったことをメモしておきます。
▶︎肯定的なフィードバック
プラスのフィードバックを教師がすることで「耳を傾けるに値する」というメッセージが伝わり、この過程を経て自分自身の学びに興味を持ちやすくなる。
これは家で子どもの話を聞く時にも大事な視点だなと思いました。
▶︎省察的な質問
YesかNoで答えが決まっている質問ではなく、深く考えたり学びにつながるような省察的な質問ができるとより学びが深まる。これは、「教科そのもの(例:農家としてこの野菜を育てたいか?)」でもよいし、「学びのプロセス(例:植物の成長について知ることが、なぜ重要か?)」についてでもOK。
これはなかなか難しい!と思いますが、意識できたらいいなと思いました。
▶︎児童主導のラーニングレビュー
子どもが主導となり、15分程度で半年や一年の学びがどんなものであったかを発表。それに対し参加者(親や校長先生なども含む)がコメントをしていくもの。
似た活動として、学んだことのポートフォリオの作成という例もでていて、親子で1年の学びの振り返りをしても面白いかもと妄想しました。
このほか項目だけ挙げておくと、協同的探究/形成的フィードバック/サークルタイム学習/ライティング・ワークショップによる対話的探求/プロジェクト展示なども紹介されています。
世界ではすでにこんなに色んな取り組みがされてるんだと驚きでした。
実際に学校教育での実践をされている方に是非おすすめの章です。
その他読書会での話題
学んだことのポートフォリオをつくることは、自分の中の価値や評価基準を自分で決めてまとめていく、メタ認知のための道具になる。これが面白かった!を積み上げていくと後から自分の興味に気づけることも。
子どもの考えなどを引き出す時に、日々の会話の中で引き出すことがよいのか、「振り返り会」のようにフォーマット化した方がよいのか。どちらが良いという話ではないが、ついフォーマット化して子どもと話したい私にとっては少し反省の場面でした。
言葉をそのまま受け止めるのではなく、発せられてるメッセージをいかにキャッチできるかが大事。例えば、「理科だとヤカンから出たものは”水蒸気”と答えないと、不正解になってしまう=学力がない」のが現状のテストの評価。「水」と答えても間違いではない。
「発問」「見取り」「目当て」など、教育専門用語?って結構ある。特に発問は教師主導の言葉。
今回ちょうど小学校の評価について読んだ直後に授業参観があり、色々と考えさせられました。
私自身は教師ではないので何ができるんだろうか?ということや、家庭ではどんなことなら応用ができそうかなということを考える良いきっかけとなりました。
次回は中等教育(中学校・高校)だそうです!
📖読書会記録
序章 ガーゲンの新作「何のためのテスト?」
第1章 テストで正確な「評価」はできない?
第2章 先生・生徒の新たな関係パターンとは?
第3章 「価値」を先生と子どもが共同探求で決めていく
第4章 小学校で「関係」に基づく評価を行うヒント
第5章 中学・高校で「関係」に基づく評価を行うヒント
第6章 教師1人が学びの責任を持たない、包括的なアプローチとは
第7章 学校自体も、多軸で評価をしていく
📖ガーゲンの前作「関係からはじまる」読書会まとめはこちら
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