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【短編小説】薄暮冥々
電車から降りると、からりと空気は乾いていた。終点駅の小さなコの字型のホームでは、黄色い電車止めに陽があたっている。古びた白いベンチの隣には、色あせて傾いた酒饅頭の看板。がらんとしたホームに降りたのは僕だけだった。もうすぐ夕方になるのか、同じくコの字型をしたホームの屋根の隙間からは、空っぽになったような青い空が、薄い色に変わっていこうとしているのが見えた。
しばらくは乗ってきた電車を眺めていた。二
晩ご飯のことを考えることにする
しばらく思い悩んでいた小説を妻に読ませたら、よく書けてるね、と言われたので今日は幸せ。
でもきっと、3日後にはまた思い悩んでるはず。とりあえず今日は大晦日だから、まずは晩ご飯のことを考えることにする。
[短編小説]かまいたちと発電
近頃、かまいたちが出るようだ。とくに風の強い日に、隣町や団地のあたりに出るのだという。かまいたちはむかしからあるものである。子供のころは、よく小さな傷をつけられては痛い思いをした。
かまいたちがはたしてどんなようなものなのか、考えてみれば、切られたことはあるのだが見たことがない。どういうわけか、かまきりのような顔をしているつもりでいるが、それはこちらが勝手にそう思っているだけのことで、ことによ