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傷つきやすい人ほどよいリーダーになれる

リーダーに求められる資質として、一般的には「強さ」や「決断力」、「冷静さ」が挙げられます。リーダーとは強くなければならない、感情を表に出さず、冷静に物事を判断できる人物であるべきだというイメージを持つ人が多いでしょう。

けれど、ここで見過ごされがちな特性があります。それは、「傷つきやすさ」です。多くの人は、傷つきやすいことを弱さや欠点と捉えがちですが、実はそれが優れたリーダーシップに繋がる重要な要素であることをご存知でしょうか?

傷つきやすさとは何か?

まず、「傷つきやすさ」とは何を意味するのでしょうか。感情が豊かで、他人の言葉や行動に敏感に反応することができる特性を指します。例えば、誰かの何気ない一言に深く傷ついたり、他人の痛みを自分のことのように感じたりすることが、「傷つきやすさ」の一例です。これは一見、弱さや脆さと見なされがちですが、実際には非常に重要な人間的な側面です。

傷つきやすい人は、その感受性のおかげで、他人の感情や状況に敏感であり、他人の苦しみや喜びを理解しようとします。こうした共感力は、リーダーシップにおいて非常に重要です。リーダーとして、チームメンバーとの信頼関係を築き、彼らを理解し、サポートする力は、共感力なしには成り立たないからです。

傷つきやすさがリーダーシップに与える影響

1. 共感力と信頼関係の構築
共感力が高いリーダーは、メンバーの気持ちや悩みを理解し、それに対して適切な対応を取ることができます。例えば、部下が仕事で苦しんでいるとき、傷つきやすいリーダーはその痛みを理解し、サポートを提供することができるでしょう。このようなリーダーは、部下からの信頼を得やすく、結果としてチーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。

部下が失敗したとき、ただ叱るだけではなく、その背後にある原因や彼らの感情に目を向けることができます。例えば、プレッシャーや過労が原因でミスを犯した場合、そのリーダーはまず部下の状態に寄り添い、どうしてそのようなミスが起こったのかを共に考え、解決策を見つける姿勢を持ちます。これにより、部下は自分のミスを単なる失敗として捉えるのではなく、成長の機会として前向きに受け入れることができます。

また、共感力を持つリーダーは、チームのメンバーがどのように感じているのかを察知する力に優れています。たとえば、チームが緊張やストレスを感じているとき、その空気をいち早く察知し、適切なサポートを提供することができます。これによって、メンバーはリーダーに対して信頼感を持ち、安心して働くことができるのです。信頼関係が築かれたチームは、互いに協力し合い、より高い成果を生み出すことができます。

2. 他人への配慮とサポート
感受性が高いリーダーは、部下やチームメンバーの状態に敏感であり、適切なサポートを提供できる能力を持っています。彼らは、メンバーがどのような状況に置かれているのかを深く理解し、それに基づいて行動を取ることができるのです。例えば、ストレスやプレッシャーに直面している部下に対して、適切なアドバイスやサポートを提供することで、彼らの負担を軽減し、モチベーションを高めることができます。

リーダーが部下に対して真摯に向き合い、彼らの困難を理解しようとする姿勢は、部下に対して大きな安心感を与えます。特に、困難な状況に直面しているときにリーダーが適切なサポートを提供することで、部下は自分が一人ではないことを感じ、より積極的に問題解決に取り組む意欲が湧いてきます。このようなリーダーは、チームのメンバー一人ひとりを大切にし、彼らの成長を促進するために最善を尽くします。その結果、チーム全体の士気が向上し、業績も向上するのです。

傷つきやすいリーダーの挑戦と成長

1. ストレスとの向き合い方
もちろん、傷つきやすいことには精神的負担も伴います。リーダーとして、プレッシャーやストレスに対して敏感であることは、時に自分自身を苦しめることになるかもしれません。しかし、このような困難を乗り越えることで、リーダーとしての成長が促されます。

例えば、リーダーがプロジェクトの進行において強いプレッシャーを感じた場合、そのプレッシャーに押しつぶされそうになることもあります。しかし、その過程で学んだストレス管理の方法や、感情のコントロール術は、リーダーシップの質を向上させる大きな力となります。傷つきやすいリーダーがストレスと向き合い、乗り越える姿勢は、チームメンバーにも良い影響を与え、彼らもまた困難に立ち向かう勇気を持つことができるのです。

また、傷つきやすさを持つリーダーは、他人に対して過度に配慮し、自分自身を犠牲にしてしまうことがあります。このようなリーダーは、他人を支えることに全力を尽くすあまり、自分自身のケアを怠りがちです。しかし、リーダー自身が健全な状態でなければ、チームを適切に導くことはできません。したがって、自分自身を大切にしながら、他人への配慮をバランスよく行うことが、リーダーシップの成長に繋がるのです。

2. 成長の機会としての傷つきやすさ
また、傷つく経験は、リーダーとしての成長の機会でもあります。失敗や挫折を経験することで、リーダーはより謙虚になり、他人の意見や感情に対して敏感になります。このような経験から学び、それを成長の糧にする姿勢を持つことが、他の人々にとってもインスピレーションとなるのです。

たとえば、リーダーが過去に大きな失敗を経験し、そのことで深く傷ついたとしても、その経験から何を学ぶかが重要です。リーダーは、自分が傷ついた経験を振り返り、なぜそのような結果になったのかを分析し、次にどうすれば同じ過ちを繰り返さないかを考えます。このようにして得られた教訓は、リーダーとしての深みを増し、部下に対しても理解と共感を示すことができるようになります。

さらに、リーダーが自分の弱さをオープンにすることで、チームメンバーも自分の弱さを受け入れ、共有することができるようになります。リーダーが「自分も失敗を経験し、傷ついたことがある」と語ることで、チームメンバーは「自分も同じような経験をしていいんだ」と感じ、安心感を得るのです。これにより、チーム全体がよりオープンで信頼に満ちた関係を築くことができます。

心理学やリーダーシップ理論からのアプローチ

1. 共感力とEQの関係
傷つきやすい人は、他人の感情に敏感で共感力が高い傾向があります。この共感力は、EQの一部であり、リーダーシップにおいて非常に重要な要素です。EQが高いリーダーは、自分自身や他者の感情を理解し、適切に対応することができます。この能力は、チームメンバーとの信頼関係を築き、彼らを効果的にサポートする上で欠かせません。

研究によると、EQが高いリーダーは、職場での成功やチームの生産性向上に寄与することが確認されています。共感力が高いことで、部下の困難や悩みを理解し、適切な支援を提供できるため、チーム全体のパフォーマンスを向上させる力があります 。

2. 脆弱性の受容とオーセンティック・リーダーシップ
近年、リーダーシップ理論では「オーセンティック・リーダーシップ」が注目されています。オーセンティック・リーダーシップとは、自分の本来の姿を隠さずにリーダーシップを発揮するスタイルです。このスタイルでは、リーダーが自分の脆弱性や弱さを隠さず、オープンにすることが重要視されます。

傷つきやすいリーダーは、自分の感情や弱さを認め、それを共有することで、部下との間に深い信頼関係を築くことができます。リーダーが自分の弱さを見せることで、部下も安心して自分の悩みや課題を共有できるようになり、チーム全体のコミュニケーションが向上します 。

3. 心理的安全性とチームパフォーマンス
心理的安全性とは、チームメンバーがリスクを取ることや、意見を自由に表現できる環境が整っていることを指します。傷つきやすいリーダーは、他者の感情に敏感であるため、チーム内での心理的安全性を高める能力に長けています。

こうしたリーダーは、チームメンバーが自由に発言し、ミスを恐れずに挑戦できる環境を作ることができ、結果としてチームのパフォーマンス向上に繋がります 。

4. 失敗からの学びとレジリエンス
傷つきやすい人は、失敗や挫折を経験したときに深く考え、その経験から学ぶことが多いです。このプロセスを通じて、レジリエンス(回復力)を高め、より強いリーダーシップを発揮することができます。傷つきやすいリーダーは、失敗や困難に直面したとき、それを成長の機会として捉えることができ、次に同じ過ちを犯さないようにするための教訓を得ることができます 。

まとめ

傷つきやすさは、メンタルの弱さではなく、リーダーシップのうえでは「強み」となることがあり、感情豊かで共感力が高いリーダーは、チームをより良い方向に導く力を持っています。そうした性質を持った人は、他人の感情やニーズを理解し、それに応じて柔軟に対応することで、チーム全体の調和と成長を促進させることができます。

リーダーシップとは単なる「強さ」や「冷静さ」だけでなく、感受性や共感力といった「柔らかさ」も重要な要素です。傷つきやすいことは決して欠点ではなく、むしろ優れたリーダーシップを発揮するための大きな強みとなるのです。自分は精神的に弱いからリーダーには向いてないと思っている人がいたらとても勿体ないことです。自分の性質を別の視点から眺めると新たな価値が見出せると思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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