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【見える化編8:顧客の見える化】

本マガジンのテーマは「見える化」です。私も12年ほど、工場管理行っていますが、何度も何度も聞くキーワードが見える化です。ただ、これは工場の管理だけでなくすべての仕事、ビジネスにとって重要な考え方であり、活動であると思います。経験がある方が多いと思いますが、問題や状況が正しく見えるということができれば解決策や必要なアクションは自然と出てくるものです。そんな見える化について、体系的にかつ実例も入れて解説している名著「見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み 遠藤功氏著」について解説していきます。2005年が初版で、15年前の本ですが、間違いなく今でも通用する内容です。

製造部の上司の正輝と部下の流星が登場します。流星は前回自工程完結を学んで実践していく中で、見える化がすべての改善活動につながってくることに気づき始めます。そして、再度正輝と会話している中で、見える化とはなんなのか、どう使っていくべきなのかということについて、本を使って学んでいきます。前回、見える化の体系について指導を受けています。これまで「問題の見える化」、「状況の見える化」を学び今回は「顧客の見える化」を学びます。

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👱;おはようございます。

👨‍;おはよう。今日は顧客の見える化について解説しよう。顧客の見える化は「顧客の声の見える化」と「顧客への見える化」がある。それぞれ事例を使って解説していく。今日も下記の体系を頭に入れた上で聞いてくれ。

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◆「顧客の声の見える化」

👨‍;企業活動において、お客様のニーズや要望、本音が見えているかどうかは決定的に重要だ。

👱;そりゃです・・。

👨‍;だよな。顧客接点を担う営業やカスタマー・サービス部門などは、たしかに日常的に顧客と接し、「顧客の声」に直に接している。でも、ほとんどの企業では、顧客の声は組織内のどこかに埋没しちゃって本来共有すべき部門に共有されていないのが、ほとんどだ。

👱;そうなんですよね。製造担当している私だって顧客情報に常に触れているとはいえないです。大きなクレームの時くらいです・・。


👨‍;「顧客の声」は、間違いなく経営にとっての最も重要な「資産」のひとつだ。現場に埋没しがちな「顧客の声」を「見える化」し、全社を上げてその声に耳を傾けること それこそが顧客起点の経営の第一歩なんだよ。

👱;はい。でも「顧客の声」を「見える化」するためにには、まず「顧客の声」を集めなければならないですよね。やっぱり、アンケートや顧客調査がそれにあたるのでしょうか?

👨‍;ああ、しかし、これにも問題が多い。どの会社も似たような手法をとっているが、その結果を経営にどう活かしているかは千差万別なんだ。「やりっぱなし」で終わっている企業が多い。でも、その中でも「顧客の声」をきちんと「見える化」し、それを起点に経営品質を高めている企業もあるんだ。今回はホンダの「自動車ディーラー」の事例を紹介する。これは、ただ単に「顧客の声」を集めるだけでなく、その情報を全社に「見える化」し、次に活かすという組織学習が徹底して行われている点が見習うべきポイントなんだ。

◆ホンダクリオ新神奈川の「お客様アンケートの見える化」

👨‍;ホンダ系ディーラーの中で、当時、顧客満足度NO1を達成していたホンダクリオ新神奈川では、社長の下、「見える化」経営を徹底させていたんだ。

👱;社長が率先して「見える化」を推進しているのですね。

👨‍;ああ、具体的には三種類のお客様アンケートを実施していたんだ。

「店頭での待ち時間にその場で書いてもらうアンケート」
「車を買っていただいたあとに、家に帰ってから書いてもらうアンケート」
「修理を終えたあとに、家に帰ってから書いてもらうアンケート」

この三種類だったんだけど、待ち時間中に書いてもらうアンケートは回収率100%であるが、同社はこのアンケートよりも家で書いてもらう二つのアンケートをより重視していたそうだ。

👱;家に帰ってからの記入だから、正直に本音の感想を書けるし、しばらく時間があいた後にこそ本当のことを書いてくれるような気がします。

👨‍;この二種類のアンケートの回収率は約30%で、これは業界では驚異的な数値だ。

👱;確かに自分が車の修理して、家に帰ってアンケートにわざわざ答えるかといったら面倒になりますもんね。それで30%回収できるというのはすごいです。

👨‍;そうだろ。このアンケートに記入してもらうよう、営業マンやサービスマンは誠心誠意お客様にお願いしていたそうなんだ。そして、アンケートの回収率も営業マンの業績評価項目のひとつになっていたんだ。そして、こうしたアンケートが一日100枚ほど送られてくるんだけど、担当者や店長はもちろん、社長もすべてのアンケートに目を通し、車を購入した顧客には、社長が自分自身で返事を書いていたというんだ。

👱;へー。それはすごい。社長自身が返事を書くのですか。そういうサービスは心に刺さりますよね。そしてそういう社長の背中は社員が見ていますよね。

👨‍;アンケートの話に戻るが、同社のアンケートがユニークなのは、評価を「満足」「普通」「不満足」の三段階評価としている点なんだ。

👱;三段階なのですか。普通5段階ですよね。

👨‍;ああ、それで三段階中の「普通」に丸がつけられていたら、それは「クレーム」であると認識している。接客業は「満足」で当たり前なのだから、「普通」だったらこれはどこかに問題があるという考え方が徹底されていたという。

👱;三段階ではっきり選択されるようにして、「普通」になったら問題視するということですね。厳しい。。。

👨‍;「普通」と書かれたアンケートが返送されてきたら、大騒ぎだったらしいぞ。お客様への対応はもちろんのこと、すぐに「こんなクレームが起きてしまった」という情報を全店にFAXで送り、同様のクレームが起きないよう再発防止を徹底させたという。

👱;ちょっと厳しすぎる気もしますが、そこまで見えるようにしているということですね。

👨‍;ああ、でもこれって結構本質で、お客様にとっては小さなクレームかもしれないが、そうした小さなものからサービス品質は崩壊していくんだ。現場の品質でも同じだよな。「顧客の声」を「見える化」するということは、「見えた」声に対してどう対応するかを考えることなんだ。「見えた」だけでは意味がない。アクションを喚起させないと意味がない。ただ、今は15年前のこの本の状況とは異なって価値観は多様化している、心理的安全性を築きながらバランスをとっていく必要はあるがな。

👱;顧客の声を見える化してアクションをしてくという基本原理は大事にしないといけないですよね。

👨‍;さらに、同社の「見える化」は、お客様の声だけに終わらない。売上高や利益という経営状況は日次で全店にFAXで送付し、各店舗の裏口通路の目立つところに貼り出し、全社員に公開している。「見える」こと、「見せる」ことの重要性を全社員が理解しているからこそ、ホンダクリオ新神奈川では、お客様アンケートも形骸化せず、「生きたアンケート」になっているんだ。

👱;一事が万事ですね。すべて「見える」、「見せる」ことに対しての意識が高い。そうすることによって方針・考え方も浸透していくのですね。

👨‍;その通り、ある一か所だけ見える化の概念を入れればいいということではないことがわかると思う。

◆「顧客にとっての見える化」

👨‍;次は「顧客にとっての見える化」だ。「顧客を見える化」したいと思うのはどの企業も一緒だ。だけど、その一方で、 客の側も同じようにさまざまな情報を「見える」ようにしてほしいという願望を持っている。

👱;そうですね。私もサプライヤーの部品の生産状況や在庫状況は知っておきたいですね。見えていたら便利です。

👨‍;「顧客にとっての見える化」を考えることは、顧客との間の双方向の「見える化」を実現することにつながるんだ。「顧客にとっての見える化」を推進し、競争力にまで高めている事例として、デルの取り組みを紹介しよう。

👱;顧客にとっての見える化を推進し、競争力にまで高めている・・。

◆デルの「顧客にとっての見える化」

👨‍;創業者マイケル・デルがたった1000ドルを元手にスタートし、約20年でパーソナルコンピュータ市場で世界一位のシェアを獲得したデルは知っているな。

👱;さすがに知っています。

👨‍;その優位性の源泉は、顧客とのダイレクトなリレーションを構築する「デル・ダイレクト・モデル」にあると言われているんだ。


👱;はい、知っています。「デル・ダイレクト・モデル」は、製品を直販するという商流を持っていてそれで低コストを実現しシェアを広げていったのですよね。

👨‍;その通りだが、それだけではない。顧客に対してさまざまな情報をオープンにし、顧客にとっての利便性やサービスを高める点にも優位性を発揮していたんだ。たとえばデルは、PCを購入した顧客に対して、製品が手元に届くまでのステータスを「見える」ようにする「オーダーステータス」 サービスを行っている。

👱;今や当たり前の世界ですが当時としては画期的だったのですね。

👨‍;このサービスは、顧客が注文した製品の生産・配送状況をインターネットで自動回答するサービスで、「工場で生産中」「工場出荷済み」「輸送中」「港での通関中」自分の発注した製品がどのプロセスにあるのかがリアルタイムでわかるんだ。さらに製品が国内の配送センターから出荷されると同時に、その旨が電子メールで伝えられる仕組みになっている。当時としては画期的だし、今だってトレース情報とれるということは重要な差別化要因になっている。


👱;特にPCは大量に購入する法人には助かりますよね。いつが納入日なのかを知ることができれば受け入れ準備を事前にすることができるので。

👨‍;デルの「顧客にとっての見える化」は「プレミアページ」と呼ばれる重要顧客に対する情報提供でも徹底して行われていたんだ。「プラチナ」アカウント、「ゴールド」 アカウントと呼ばれる大口顧客に、200ページを超える特定顧客専用ウェブページをつくり、それぞれの顧客専用の情報にアクセスできるサービスを提供しているんだ。

👱;そこで客は何ができるのですか?何が得なのでしょうか?

👨‍;顧客はそのページ内でシステム構成を選んだり、価格を調べたり、その顧客の詳細な購入記録から過去の発注や現在の使用数量を知ることができるんだ。さらには、その顧客向けの割引価格でそのページから発注したり、技術上の問い合わせにも対応するなどの双方向性も兼ね備えている。

👱;技術サービスまで?それは安心を顧客に与えることができますね。

👨‍;しかし、そんな「プレミアページ」も、導入当初から顧客に受け入れられていたわけではない。「プレミアページ」立ち上げ期の責任者はこう語っているんだ。

「ページをつくりさえすれば顧客はアクセスする、という甘いものではなかった。まず顧客にこのページのことを広く知ってもらい、使ってもらうよう仕向けるのに膨大なエネルギーを費やした」

👨‍;とね。「見える化」は顧客との新たな関係をつくる第一歩にすぎない。しかし、「見える」ことの価値を知った顧客との双方向のやりとりは「プレミアページ」の品質を劇的に高めていったんだ。

👱;なるほど。見えることによってやり取りが始まり、さらにプレミアムページの価値を高めていったと。やはり見える化した上でのアクションに本当の価値があるのですよね。

👨‍;そう。顧客にできるだけ情報をオープンにし、「見える化」することによって、コミュニケーションを太くすることができて、付加価値の増大と効率性の両方を手に入れているのである。

👱;なるほど。コミュニケーションを太くですね。なるほどです。

👨‍;よし。ここまで顧客の見える化は終わりだ。今日はここまでにして、次回は「知恵の見える化」に入っていこう。

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今回は簡単に顧客の見える化について、社内向けの顧客要望の見える化だけでなく、顧客にとって必要な社外向けの情報の見える化についても解説しました。顧客に情報を見せるという概念は非常に面白いですよね。顧客に見せることでコミュケーション自体が太くなっていく、そうすることで相互の改善が生まれてくる。こういうことができると顧客と信頼関係が築けていけそうですよね。さて、次回は「知恵の見える化」に入ってきます。このマガジンの後半戦になっていきます。スキ・フォローいただければ嬉しいです。お願いします。

*下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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