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【見える化編7:状況の見える化】

本マガジンのテーマは「見える化」です。私も12年ほど、工場管理行っていますが、何度も何度も聞くキーワードが見える化です。ただ、これは工場の管理だけでなくすべての仕事、ビジネスにとって重要な考え方であり、活動であると思います。経験がある方が多いと思いますが、問題や状況が正しく見えるということができれば解決策や必要なアクションは自然と出てくるものです。そんな見える化について、体系的にかつ実例も入れて解説している名著「見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み 遠藤功氏著」について解説していきます。2005年が初版で、15年前の本ですが、間違いなく今でも通用する内容です。

今回も、製造部の上司の正輝と部下の流星が登場します。流星は前回のマガジンで自工程完結を学んで実践していく中で、見える化がすべての改善活動につながってくることに気づき始めます。そして、再度正輝と会話している中で、見える化とはなんなのか、どう使っていくべきなのかということについて、本を使って学んでいきます。見える化の体系について指導を受け、具体的な事例の解説に入っています。前回までで「問題の見える化」を学び、今回は「状況の見える化」を学びます。

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👱;おはようございます。

👨‍;おはよう。今日は、「状況の見える化」について解説する。今日も下記の体系を頭にいれながら話を聞いてくれ。

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👱;わかりました。

◆「基準の見える化」

👨‍;まず、「基準の見える化」だ。現場における問題発見・問題解決が進展しない現場に共通するのは、業務において「基準」が明確でなかったり、その基準に沿った業務の遂行が徹底されていなかったりするからなんだ。

👱;はい。現場の業務には、必ず、「こうあるべき」「こうなって なくてはならない」といった基本の「型」が必要だと思います。それが作業標準や業務マニュアルといったものなのだと思います。

👨‍;おお、わかっているじゃん。そうした「ものさし」がなかったら、何が異常なのか問題なのかはわからないんだ。そんな「基準の見える化」を徹底させているトヨタの事例を見てみよう。

◆事例トヨタにおける「標準作業の見える化」

👨‍;トヨタの現場力の強さを生み出しているポイントのひとつが、「標準作業」の明確化さだ。標準作業など、どの企業にもマニュアルとして用意されていると思うかもしれないが、トヨタほど、標準作業を厳格に規定し、その運用を徹底させている企業はないと言われている。

👱;当たり前のことを当たり前にできる企業、現場は本当に強いですよね。文化というか習慣になっているのでしょうね。

👨‍;トヨタの生産現場の標準作業には、次の三つの要素がある。

1 タクトタイム : 一台もしくは一個を何分何秒でつくらなくてはいけないという標準時間
2 作業順序 : モノを加工する作業手順と作業を行ううえでのカンやコツ
3 標準手持ち : 作業を行ううえで必要かつ最小限の工程仕掛品

多くの企業の標準作業は「作業手順書」程度の内容だろう。だが、トヨタはこの標準作業の三つの要素を中心に、厳格に作業そのものを規定し、「見える化」している。自工程完結にも作業工程の洗い出しというのがあったな。まさにそこが「見える化」されているんだ。

👱;厳格に作業そのものを規定?

👨‍;例えば、トヨタでは、「この作業は右手で行う」といった規定まで細かく明文化されていて、左手での作業は行えないことになっている。他には、「1と2のボタンを同時に押す」という操作方法だけではなく、「1のボタンを押して、エアの音で蓋が閉まっているのを確認してから、2のボタンを押す」など記載されているんだ。

👱;厳格・・。それは、ベテランが経験で習得したカンやコツがわかりやすく「見える化」されているということになるのですかね。


👨‍;その通り。そこポイント。作業者は、そのカンコツも入れた、作業手順どおりに作業を行うことが求められているんだ。そして、もし手順どおりにいかない場合は、作業者の習熟度も含めて「どこかに問題がある」と認識されることになる。もし、本当に左手を使わなくてはいけないような場合には、今度は「こういうケースには左手を使用する」と標準作業そのものを書き替えていくんだ。

👱;なるほど。そうして、ただ守るだけでなく業務を「進化」させていくことこそが「改善」なのですね。標準を作り、そこで齟齬があり、新たなものが正しいと判断されれば、それが標準になっていくと。もちろん正しくないものは変化させない。

👨‍;標準はあくまでも「その時点での標準」であり、標準そのものも進化していかなくてはならない。トヨタの生産現場では、現場に備え付けられている標準作業書が色変わりした古いものであるか、真新しいものであるかを見るだけで、現場の品質がわかると言われているんだ。色変わりした標準作業書は何年も中身を変えていないことを示しており、真新しいものは仕事のやり方や内容を改定している証拠であると認識されるんだよ。

👱;あくまで人が標準を進化させていくということですね。

◆ステータスの見える化

👨‍:次は、「ステータスの見える化」だ。自分の仕事をするうえで、「現時点での状況」が見えていなければ次に何をしてよいかがわからないよな。全体の計画や進捗具合はどうなっているのか、作業は計画どおりに進んでいるのか、「ステータス」を常に確認できる「見える化」のインフラが必要だ。

👱;進捗の見える化というわけですね。

👨‍;「ステータスの見える化」は部門間を跨ぐような業務には、より一層重要となる。

👱:確かに組織が大きくなり、役割が細分化すればするほど、ほかの部門の活動や情報が見えなくなってしまいます。部門横断的に解決しなければならない問題は、情報の共有やコミュニケーションが重要になってきます。それを怠ると活動が一気に停滞してしまいますよね。

👨‍:ステータスといっても、その内容はさまざまだ。ここでは調達状況のステータスを「見える化」し、問題の棚卸に取り組んだエプソンの例を解説しよう。

◆事例 エプソンの調達改革における「見える化」

👨‍:インクジェットプリンターでは世界でトップクラスの実績を誇るエプソン。同社では、熾烈なグローバル競争に勝ち抜くため、製造原価の大幅な低減を推進していたんだ。その中の柱のひとつが「調達改革」であり、「調達先の絞り込み」がその中でもひとつの大きな柱であった。調達改革は調達部門のみならず、設計や経理など関連する部門も交えた部門横断的な取り組みとして推進されていた。

👱:なるほど。

👨‍:従来は事業部ごとに調達部門が存在し、それぞれの事業部の意向に沿って、バラバラに部材を購入していた。その結果、調達のフレキシビリティというメリットはあるものの、一方では同じ部品であっても購入単価が四割くらい違うというような不経済が発生していたのである。

👱:同じ部品で、4割も異なる??それは非常に大きいですね。

👨‍:そこで、部材の調達先をできるだけ全社で一本化し、さらに複数の事業部で必要な共通部材は共同購入することで購入価格の引き下げを実現するという取り組みに着手したんだ。

👱:一本化するのは理想的ですが、足並みを揃えるのは非常に難しいですよね。エプソンのような大企業では。。

👨‍;そう。この改革における最大の問題は、調達実績がすばやく、正確につかめないことであった。どの部門でどんな部材をどこからいくらで買っているのかという「ステータス」をつかもうとしても、品目コードや取引先コードが拠点によってバラバラであり、全体像を「見える化」することが困難だったのである。

👱:そりゃ、そうですよね。過去から各部門が独自に実施していたのでしょうから。

👨‍;この背景にはもちろん調達先管理を行うシステム上の問題もあったが、その前提となる品目コードの不統一が最大のボトルネックであった。品目コードはそれぞれの部門ごとに設定されており、なんと一八通りもの品目コードが社内には存在していたのである。

👱:18通りの品目コード・・。

👨‍;そこで、エプソンは2年近くかけてコード体系を全社で統一し、調達実績という「ステータスの見える化」を実現した。

👱;2年ですか。やはり地道な活動がここでは必要ですね。他の活動もそうですが、見える化の活動は地道な活動が重要ですね。

👨‍;その通り、派手さは一過性のものになるからな。そうして、統一されたルールや基準のもとで、実態が明らかになれば、自然と問題は浮かび上がってくるものだ。こうした取り組みにより、調達先の数は三年間で約半数に絞り込まれ、部門によっては調達コストを四割近く削減するという成果を上げたのである。

👱:調達コスト4割削減・・。すばらしいですね。

👨‍;ベースのコードを整えたり、一次データを共通フォーマット化するのは何らかのデータを見える化するのに非常に役立つ。このポイントは抑えてほしい。

👱;わかりました。

👨‍;簡単だが、これで「状況の見える化」の解説を終わりにする。次回は「顧客の見える化」について解説していくぞ。

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 今回は。「状況の見える化」について、その中で「基準の見える化」と「状況の見える化」について解説しました。見える化というと一見派手に見えますが、「基準の見える化」も「状況の見える化」も非常に地道な活動になります。どんな現場も小さな積み重ねが、少しづつ成果につながっていくのですよね。さて、次回は「顧客の見える化」について事例も紹介しながら解説していきたいと思います。ぜひ、スキ・フォローお願いします!


*下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

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