見出し画像

【見える化編9:知恵の見える化】

本マガジンのテーマは「見える化」です。私も12年ほど、工場管理行っていますが、何度も何度も聞くキーワードが見える化です。ただ、これは工場の管理だけでなくすべての仕事、ビジネスにとって重要な考え方であり、活動であると思います。経験がある方が多いと思いますが、問題や状況が正しく見えるということができれば解決策や必要なアクションは自然と出てくるものです。そんな見える化について、体系的にかつ実例も入れて解説している名著「見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み 遠藤功氏著」について解説していきます。2005年が初版で、15年前の本ですが、間違いなく今でも通用する内容です。

製造部の上司の正輝と部下の流星が登場します。流星は前回自工程完結を学んで実践していく中で、見える化がすべての改善活動につながってくることに気づき始めます。そして、再度正輝と会話している中で、見える化とはなんなのか、どう使っていくべきなのかということについて、本を使って学んでいきます。前回、見える化の体系について指導を受けています。これまで「問題の見える化」、「状況の見える化」、顧客の見える化を学び、今回は「知恵の見える化」を学びます。

・・・・・・・・

👱;おはようございます。

👨‍;おはよう。今日は、知恵の見える化について解説していくよ。知恵の見える化には「ヒントの見える化」と「経験の見える化」がある。いつも通り下記の体系は頭に入れておいてくれ。もう後半戦だ。頑張っていこう。

画像1

👱;よろしくお願いします。

◆ヒントの見える化

👨‍;まず、「ヒントの見える化」から解説していく。組織内の「暗黙知」を誰でもが活用できる「形式知」に変換させる そんなナレッジ・マネジメントの取り組みはずいぶん前から叫ばれているよな。


👱;はい。野中郁次郎先生らの「知識創造企業」が世に出てから暗黙知や形式知は認知されるようになったと思っています。


👨‍:企業の組織力を高めようとすると、個々人が持っているノウハウやスキルを組織全体に「見える」ようにして、ナレッジを共有・活用しようとする動きは当然のことだ。

👱:でも、実際には、各人が持っている知恵を体系的・論理的に分解し、わかりやすく「見える」ようにする難しいというか具体的なイメージがわかないんですよね。これまで、ベテランの「頭の中」を見えるようにしようと何度も聞いていますがなかなか・・・。それに、気をつけないと安易に「他人の知恵」に頼ろうとする弊害を生み出し、自分の頭で考えることがおろそかになってしまいかねないという懸念もありますよね

👨‍;そうだな。そんな「知恵の見える化」で心掛けなければならないのは、問題解決の「答」を追求するのではなく、「答」を導き出すための「考えるヒント」を「見える」ようにすることなんだ。

👱;答えを教えるのでなく、考えるヒントを与える。なるほど、面白いですね。

👨‍:それに果敢に取り組んでいるパナソニックの事例を、紹介する。

◆パナソニックのベテランの「ノウハウの見える化」

👨‍:当時パナソニックでは、キッチン・バスや照明機器などの住宅設備関連事業のアフターサービスにおいて、ベテラン修理担当者の「ノウハウ」を「見える化」し、成果を上げていたんだ。

👱;住宅設備ビジネスですか。確かに、アフターサービスの満足度こそが顧客の獲得の大きな要因となりますよね。

👨‍;ああ。だが、実際の修理の現場では属人的な対応に留まっているケースが多いそうなんだ。キッチンやバスなどは顧客によって施工の状況が異なるそうで、状況を見なければ修理方法がわからない場合も多く、個々の修理担当者の経験と力量に負うところが多いのが実状だというんだ。

👱;ケースバイケースであると。まあ、そりゃそうですよね。それぞれ使い方は異なりますからね。

👨‍:パナソニックでは年間約60万件もの修理対応の依頼がある。同社はベテランのノウハウを最大限に活用し、1件1件の対応の品質を上げることこそがブランド価値の向上に直結すると考えていたんだ。

👱;60万件の1件1件の品質を上げていく。。気が遠くなるような言葉ですね。

👨‍;そこでその第一歩として、修理の受け付けや必要な部品の手配において、「ベテランのノウハウのナレッジ化」に取り組んだんだ。まず、修理経験が豊富なベテラン修理担当者21名を選び、ナレッジ作成の担当者に任命した。

👱;やはり、そこできちんとナレッジを溜めるために組織として枠組みを作ったのですね。

👨‍:彼らの具体的なミッションは、顧客とどのような「対話」を行えば、故障の原因と必要な部品が特定できるのかを、それぞれの状況(シチュエーション)に応じて明らかにすることであった。

👱;へー。なるほど、ベテランの最大のノウハウは、状況に応じて「適切な質問」ができることだと認識されていたんですね。本質をとらえている気がします。でも、どのようにしていったのですかね。

👨‍:たとえば、製品に貼られているラベルで品番の確認をしてもらう。品番がわかれば、その後は比較的スムーズに行くが、古い製品だと品番表示がわかりにくいものも多い。ベテランはこういう時に、「どこに設置してありますか」という質問を投げかける。さらに、「スイッチが押しボタン式かハンドルレバー式か」「ターボ乾燥ボタンが付いているか」などの質問を繰り返し投げかけ、品番を特定していったというんだ。

👱;なるほど、、「質問と回答の流れ」を「見える化」するということですね。そうすれば、ベテランでなくても品番や故障理由、修理部品の特定が容易に行われるようになっていくと。これは賢い。問題解決のマニュアルでなく、問題を認知するかの方法を見える化したということですね。これはいろんな営業活動に使えそうです。

👨‍;そうだよな。こうしたノウハウは標準化された書式(テンプレート)に整理され、すでに数万枚のシートがナレッジデータベースとして蓄積・活用されているというんだ

👱;おお。すばらしいというかすごい。やはり地道・・。

👨‍;そして、全国に約700人いる修理担当者はPDA(携帯情報端末)を持ち、作業指示が円滑に行われるようになったんだ。そして、その端末には部品の在庫や納期の照会、修理ノウハウの共有などに活用されているというんだ。

👱;2000年当初で、PDAを使ってシステム化したのも素晴らしいですね。質問の仕方、つまり「ヒントの見える化」するという着眼点、それを実行するためにシステム化まで成し遂げた素晴らしい事例ですね。

◆「経験の見える化」

👨‍;次は「経験の見える化」だ。組織的な知恵を「見える」ようにする際にとくに貴重な財産となるのが、それまでのさまざまな「経験」だ。

👱;はい。努力してきたメンバーの経験こそ、その組織の財産です。

👨‍;それに、過去に似たような経験をしていたにもかかわらず、それが組織として「見える化」されていないために、同じ失敗を繰り返したり、成功するにしても遠回りをしてしまう組織が多い。問題解決を加速するためには、断片的な知識やノウハウではなく、具体的な生きた事例を体系的に「見える化」することが重要なんだ。

👱:はい。

👨‍;さまざまなプログラムを有機的に組み合わせ、組織内のナレッジを統合的に活かそうとしているトヨタの取り組みを見てみよう。

👱;さすがトヨタ。紹介される事例が本当に多いですね。

◆トヨタの「グローバル・ナレッジ・センター」活動

👨‍:トヨタは、「販売のトヨタウェイ」のグローバル展開に力を入れている。トヨタというと、「トヨタ生産方式」が頭に浮かぶだろうけど、トヨタにはモノづくりと両輪となる「販売のトヨタウェイ」が脈々と受け継がれているんだ。

👱;販売のトヨタウェイ・・・。

👨‍;「販売のトヨタウェイ」は、その基本精神こそ日本発であるが、実際の販売やマーケティング上のノウハウや知恵は、日本も含めた世界各国で販売活動に従事するディストリビューター(販社)やディーラー(代理店)から生まれてくるという。

👱;販売はそれぞれの地域性や国ごとの違いが大きいでしょうけど、異なる発想やアイデアは新たな施策を考えるうえで大きなヒントになりそうですよね。

👨‍;販売やマーケティング上の知恵(ナレッジ)を共有する仕組みは多くの企業が取り組んでいるよな。トヨタも「ナレッジバンク」という仕組みを構築しているそうなんだが、トヨタが他社と違うのは、「ナレッジバンク」という道具を用意するだけでなく、より包括的・統合的に知恵を活かす取り組みをしている点なんだ。

👱;包括的・統合的に知恵を活かすというのはどういうことなのでしょうか・・。

👨‍;トヨタは「グローバル・ナレッジ・センター(GKC)」という組織を米国の販売会社で教育を担当する University Of Toyota 内に設置した。まさに、販売・マーケティング分野におけるナレッジを最大限に活用しながら、「人づくり」を行う「総本山」としてGKCを位置付けている。

👱:体系化された教育システムを作ったということですね。そしてその教育の場を作っている。それが包括的・統合的だというのですね。ものづくりだけでなく、販売・マーケティング分野でもナレッジを活用する枠組みを、とっくの昔から構築しているわけですね。恐るべしです。

👨‍;そう。恐るべきだよ。ここでは、ナレッジバンクの構築・運用だけでなく、トヨタウェイの基本精神を理解する「ディスカバリー・プログラム」や、テーマごとに各地域の専門家を集めて議論・学習する「ワークショップ」などが体系的に実施されているんだ。また、世界各国の好事例を紹介する「Best Practice Bulletin」の刊行や大学との共同研究なども、ここでは進められているという。

👱;ひえー。。でも、わかってきました。結局このナレッジバンクもトヨタにとっては「人づくりの手段でしかない」ということなのですね。見える化の本質と同じです。あくまでも人を育てるためのツールなのですね。

👨‍;経験や事例は、もちろん企業にとって貴重な財産だ。しかし、たんに経験や事例を「見える化」する道具立てを用意するだけでは不十分だと考えられているんだ。人と人の交流の「場」をつくり、「人の見える化」を進めることで「経験や知恵の見える化」が生きてくるとトヨタは考えているんだよ。

👱;「場」ですか。その場を活性化させるツールの一つが見える化であるということですね。

👨‍:ちなみに、「経験の見える化」関しては、「見える化」の主たる対象とすべきは「失敗」という経験だと著者はいうんだ。成功は「見える化」しやすいが、失敗を「見える化」するには相応の覚悟と勇気がいるし、失敗したからこそ皆の心に残りやすいし失敗するときは必ず原因があるからね。本の中では2つ事例を挙げて紹介しているがここでは割愛する。興味があれば本書を是非読んでみてくれ。

👱;はい。わかりました。

👨‍;よし。今日の「知恵の見える化」についてはここで終了だ。次回は最後の「経営の見える化」を解説するぞ。

・・・・・・・・・・

今回は、「知恵の見える化」を解説しました。ヒントの見える化、経験の見える化について事例を紹介しましたが、両方に言えることは人を活用する・人を育てるために見える化を行っているということですね。ただ、見せるだけでは不十分で人のアクションや教育にまで落とし込む思考が見える化を行う際に必要だということが改めてわかりますね。さて、次回は「経営の見える化」について解説します。ぜひ、スキ・フォローお願いいたします!!

*下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて解説しています。

番外編マガジンもあります。是非💁‍♂️

#製造
#理論と実践
#ものづくり
#成長
#5S
#トヨタ生産方式
#ジャストインタイム
#自働化
#リーンプロダクション
#ザゴール
#制約理論
#ドラッガー
#ビジョナリーカンパニー
#アドラー
#コーチング
#情報リテラシー
#要件定義
#会計
#損益計算書
#決算書
#損益分岐点
#原価低減
#平準化
#両利きの経営
#両利きの組織
#心理的安全性
#グーグル
#推薦図書
#システム
#発注側
#会社改造
#事業再生
#見える化

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?