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パン職人の修造 101話〜149話 江川と修造シリーズ

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独立して江川と店を始める修造。パン職人として、経営者として、一家の主人として。頑張れ修造。
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#眠れない夜に

パン職人の修造 149 150話を目前にして、これまでのあらすじ

パン職人の修造 149 150話を目前にして、これまでのあらすじ

いつもこの小説をお読み頂き誠にありがとうございます。このお話はパン職人の修造が一生を通してパンと向き合うというお話です。

パン職人の修造は、口数の少ない主人公の田所修造(たどころしゅうぞう)がパンにまつわる色々な出来事に出会うお話です。元は2021年3月20日に始まりました。お話は全てフィクションで、実在するお店や団体とは何ら関係ありません。各お話毎にテーマや主人公が変わります。noteでは、パ

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パン職人の修造 146 江川と修造シリーズflowers in my heart

パン職人の修造 146 江川と修造シリーズflowers in my heart

リーベンアンドブロートのテラスの花々は風に揺れて見ているだけで癒される。

「ここでゆっくりしててね」

修造が用事を済ませる為に工房に行ってる間に3人は選んだパンをテラス席に座り食べていた。

「美味しいねお父さんのお店のパン」

「本当にいい店ね、お客様もいい表情だわ」

確かに、テラスのテーブルに座っている人々は癒しの空間で寛いでいる様に見える。

「あ、大地」

大地はぴょんと席から飛び降

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パン職人の修造 145 江川と修造シリーズflowers in my heart

パン職人の修造 145 江川と修造シリーズflowers in my heart

「初めまして、藤丸パン横浜工場長大和田です」大和田は2人に挨拶した。

「どうもね、俺はパンロンドの柚木阿具利」

「リーベンアンドブロートの田所修造です」

「今藤岡に話は聞いたよ」

「そうなんですね、私も全然気が付かずお恥ずかしいです。いつの間にか木田や足打(あしうち)が裏切っていたとは恐ろしいです。そもそも木田がメールのやり取りをしていて先に全員の取り分の20%を振り込まれたそうなんです。

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パン職人の修造144 江川と修造シリーズflowers in my heart

パン職人の修造144 江川と修造シリーズflowers in my heart

パン職人の修造 江川と修造シリーズflowers in my heart

修造が目が覚めた後

江川は岡田に頼んでアボカドとエビのタルティーヌとコーヒーを持って来て貰い修造に渡した。

食事中の修造に向かって「明日から少し休んで下さい」と言った。

「え?なんで?」修造はタルテイーヌを平らげながら江川を大きな目で見た。

「たまには帰らないと」

「今忙しいからなあ」

「いつも忙しいじゃないで

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パン職人の修造134 江川と修造シリーズ パン職人NO,1決定戦 Shapen your five senses

パン職人の修造134 江川と修造シリーズ パン職人NO,1決定戦 Shapen your five senses

「勝つのは俺だ」鷲羽は江川に向かって言った。

しかし江川の奴、細い体でよくあの生地を持ち上げられたな。基礎体力と体幹が大事なんだ、細い奴でも体幹が強ければ持ち上げられる。
「そういえば北国で育ったって言ってたな。やっぱ雪国の人って足腰が強いのか?江川」
「えっそうかな?わかんない」
「ふん」
ふんだって、相変わらずだな鷲羽君。

ところで残ったのは5人の中の誰なのか?それはそこに立ってる5人共が

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パン職人の修造128 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造128 江川と修造シリーズ パン屋日和

仕方ない、普通の事を普通に話すかと覚悟を決めた。

「あの、田所と言います。リーベンアンドブロートは生活とパンと言う意味で名づけました。毎日の生活にパンは欠かせない、そこには色んなライフスタイルがあって、色んな場面で色んなパンが食べられている。縁あってこの笹目市に店を構えたんですから、地元のお客さんの生活にリーベンアンドブロートのパンを取り入れて頂けたらと思っています。パン屋さんの仕事は過酷と思っ

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パン職人の修造126 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造126 江川と修造シリーズ パン屋日和

「えっ」

そんな風に言われるとは思わなかったので横田は驚いてピリッと緊張したが、平然を装ってトングとトレーを持って店内を回った。

プレオープンの時にここにきた時パン粉がここのパンは世界大会のパン、パンロンドのパンそしてドイツのパンを置いている。

「これとこれと」時々パン粉の方を向いてトングをちょっと動かして『これ?』とそれとなく指すとパン粉が目で合図する。

横田は店内を一周見回って「これで

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パン職人の修造125 江川と修造シリーズ パン屋日和

パン職人の修造125 江川と修造シリーズ パン屋日和

「パンが沢山売れるのは晴天の日とは限らないんだ。今日みたいに25度前後で少し曇ってると買い物してる奥さんは「まあこのぐらいの気温で天気なら買ったものが痛まないからゆっくり帰れるわよね」と言うわけで、いつもより店内をゆっくり回って多めにトレーに入れる事になる。俺はそれをパン屋日和と呼んでいる、まさに今日みたいな天気の事なんだよ江川」

と秋口にお客さんで溢れ返る店内を見て修造は言った。

江川も確か

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パン職人の修造124 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造124 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

「次の試合相手の親子は息がピッタリ手強そうだな」
修造が向かいのコーナーで試合開始の合図を待っている親子を観察した。
修造親子と同じ年頃だ。
勝ち上がって来るだけあって動きも正確で所作が決まってる。

「お父さん、私、足が震えそう。緊張してきちゃった」

流石に決勝戦ともなるとピリッとする。

修造はしゃがんで緑の目線で話した。

「緑、自分を信じて、今まで練習してきた一番の動きを思い出せば良いよ

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パン職人の修造123 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造123 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

店から出て行った藤岡を見送り、一人座ったままで残りのコーヒーを飲みながらさっきの涙が溢れてくる。

それを店の外から覗き込んだり引っ込んだりする大坂の姿があった。

仕事の帰りに駅の近くで食事をして帰ろうと思って店内を覗いたら二人がいたという訳だった。

うわ

俺見ちゃった

立花さんが泣いてるとこ。

どうしよう。

なんだよあの超絶イケメンは。

何を話してたんだろう。

お似合いだったのに

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パン職人の修造121 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造121 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

東南商店街にある由梨の両親が経営している着物屋『花装(はなそう)』では、明日の浴衣イベントに参加する為に準備で大忙しだった。

東南駅からは随分離れた大きな街の南会館という所で着物屋が集まって行う『夏の大浴衣市』があるのだ。

由梨もこの日はパンロンドを休んで、浴衣を着て手伝いに行く事になっている。

父親と由梨は車に着物やら小物やら展示用のグッズを沢山乗せて前日準備に出かけた。

「あ、ここはリ

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パン職人の修造120 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

パン職人の修造120 江川と修造シリーズ 満点星揺れて

ここは笹目駅から少し離れたリーベンアンドブロート

その工房で江川は修造の例の謎のハナウタを久しぶりに聴いた。

おそらくドイツの曲なんだろう。

グーググーグーグーと聞こえてくる。

大坂がパンを焼きながら「これなんの音かなあ」と言っている。

修造は世界大会の技術を駆使してパンスペシオ風の一升パンを作っていた。
息子の為の力作だ。

ああ〜

大地!

もう一歳だ!早いなあ。

ずっとずっと可

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パン職人の修造118  江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造118 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

「那須田シェフ!」

「開店おめでとう修造君」
急に憧れのシェフ那須田が現れて驚いた。

「ありがとうございます」

「そろそろキテると思ってね、やってみると色々大変なことばかりだろう?」

「はい」

「誰でも通る道なのさ。今日は手伝いに来たんだよ、以前手伝って貰ったお返しにね」

「その節は勉強になりました」

修造は今の職場の状態を話しながら仕事をして、那須田は慣れた手つきでクロワッサンの成

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パン職人の修造117  江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

パン職人の修造117 江川と修造シリーズ ロストポジション  トゲトゲする空間

その頃

岡田と修造は事務所で話していた。

最近の岡田への信頼は著しい。

岡田は「こんなものを見つけました」と言ってマーケットプレイスの画面を見せた。

「このリボンをよく見てください、グリーンの」

「え?」なんだか見覚えのあるドリップバッグをガン見する。

「あ!うちのリボンじゃないか!このまま売るなんて雑な事するなあ」

「いい様にされてますね」

「だらしなくて恥ずかしいよ全く」

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