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#小説
パン職人の修造94 江川と修造シリーズ the dough is alive
フランスから帰ってきて何日か経った。
パンロンドの奥さんは手回しよく『世界大会優勝!田所修造・江川卓也』ののぼりを作って店先に付けていた。
修造と江川はパンロンドの出窓のところに世界大会で作ったパンデコレを飾っている最中だった。
「やっぱこの選考会の時のパンデコレは退けるよ。太陽の反射が当たってたし劣化してる。付け根がグラグラしてるし」
「ですね、崩れてきそう、僕のは小さいからまだい
パン職人の修造93 江川と修造シリーズ Emergence of butterfly
福咏は頭をガックリと下げた。
「すみませんでした。関係ない由梨ちゃんにもすまない事をした」
「花嶋さん、本当に移転するんですか?」
「そうですね藤岡さん。まだ計画中なのですが、どこかいい場所があったら」
「花嶋さん、福咏が、私達が移転します。この町の人達には謝罪広告を出します」
そこに由梨が口を開いた「お父さん、お母さん、私達がこの町から出ましょう。藤岡さんも言ってくれたわ。この町にい
パン職人の修造91 江川と修造シリーズ Emergence of butterfly
さっきの川縁に戻って座る。
藤岡はパン屋で買ってバックパックの上にフワッと入れて置いたパンを出した。
「良かった、潰れてないよ」と言ってパンを半分に割って渡した。
「腹ごしらえしとこう。元気が出るよ」
「ありがとうございます。これ、ベッカライウンタービルクのですよね?母がよく買って来ています」
由梨は半分に割った※ヘルンヒェンを美味しそうに食べた。
昼前は落ち込んでいたけど、美味しいパ
パン職人の修造90 江川と修造シリーズ Emergence of butterfly
「その人は福咏という着物屋の店主です。元々は父と同じ職場で働いていたらしくて、父が店を開くとその人もうちに来て働いていたらしいんです」
「ふーん」
「なのに独立してうちの近くに開店したそうなんです」
「なんでかな ? 商圏がかぶると自分も損するのに。仲が悪かったの?」
「それは分かりません」
藤岡は、この子は両親との意思の疎通が上手くいってないんだなと思って何かアドバイスをしようと考えた
パン職人の修造89 江川と修造シリーズ Emergence of butterfly
東南駅の西にある東南商店街で一際賑わうパン屋のパンロンドでは、柚木親方と奥さん、藤岡恭介、杉本龍樹、そしてたまにしか出てこないが田所修造の先輩の、佐久山浩太と広巻悠二が『修造と江川の世界大会一位おめでとうパーティー』を計画していた。
「ここでやりますか?」
「座れるとこがいいかな」
「近くの店でいいところある?」
「いつもの居酒屋は?」
「パーティーと言うより飲み会だな」
などなど
親方
パン職人の修造88 江川と修造シリーズ Awards ceremony
江川は折に触れエーベルトの事を聞いていた。
大恩人のエーベルトと修造は向き合ってドイツ語で話していて、何を言ってるのかはわからない。きっとこの大会に出ると聞いて会いに来てくれたんだろう。
しばらくしてリツコリツコと言ってエーベルトが修造をからかってるのがなんとなく分かる。
おそらく「あの時は奥さんのリツコの事ばかり言ってたな、ワッハッハ」みたいな事なんだろう。
「わしも鼻が高いよ」とわから