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つらつらと語るフィクション

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頭の中で出来上がったフィクションを形にしていきます。 明るみの布団の中、電車の座席でどうぞレベルの小説です。
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#カップル

プレーン味 part12

プレーン味 part12

Day35

「行ってきます」

ようやくこの道にも慣れた。

ゴミゴミしていた満員電車とはお別れして、
今は自転車通勤だ。

仕事場は相変わらず無音でパソコンを打ち込む場所だが、
同僚は恵まれているみたいだ。

可愛い子もいて、眼福だ。

新しい職場に来てから他の社員に
ランチに誘われることが圧倒的に多い。

ゆえに昼のお弁当は休憩中だ。

仕事を終えてまだティッ

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プレーン味 Part11

プレーン味 Part11

Day17

「スタート!」

次の日から空き時間を使った荷造りが始まった。
汗と彼女の機嫌との勝負だ。

引越しというのは、やけにめんどくさい。

僕はギリギリにバタバタするのは嫌なので、
かなり早い段階で進めておく。

彼女も同じ性格だが、家でバタバタするのが苦手なタイプだ。
”家はくつろぐ場所”らしい。

こんなの業者に任せたいという人間だが、今回はなんとか説得した。
近くのケーキ屋さんの期

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プレーン味 Part10

プレーン味 Part10

Day16

メンタルがしっかりと消耗したあの日から
1週間が経過していた。

今日は2人で彼の地の引越し先の内見に行く。

お互いの論争の結果、引越し先に上がった条件は
「キッチンは大きめ」
「お風呂もできれば広め」
「それぞれの部屋は確保すること」
の3つだ。

2人で集めてきた経験と英知を出し合った結果、
この環境がお互いストレスなく過ごすことができると確信した。

ここ数週間かなり緊張した

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プレーン味 Part9

プレーン味 Part9

憂鬱だ。もう仕事なんてやめてしまいたい。
昨日の夜、彼女の顔見ると心臓がぞうきんのように絞られる。

思った通りの顔だった。いや、思った以上の顔だった。
あまり感情を出さない彼女の顔が一気に不安全開になった。

「ちょっと考えさせて」の一言だった。
食卓も珍しく冷め切っていた。

そもそも「異動」って自分で選択できないのか。
というか優秀なら選択権を得られないのだろうか。

会社では周りにたくさん

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プレーン味 Day7

プレーン味 Day7

Day7

柄にもなくテンションが上がった次の日。

同居人は友達と遊びに行くらしいので、
掃除をしながらお留守番だ。

家でゆっくりと洋画を観た。
ちょっと前話題になったラブストーリーだ。

観たかったわけではないけど、
なんとなく目に止まったので借りてみた。

だいたいストーリーは読んでいた通りだ。

男と女が出会って良い感じになって、間男が現れて
最初の男に戻ってきて「はい、ハッピーエンド。

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プレーン味 Day5

プレーン味 Day5

Day5

「シリコンバレーに行きたい。」
行きの電車でそんなことを考えていた。

何がきっかけだったかは忘れてしまったが、
後にも先にもこんなことを考えるのは最後だろう。

今日は”華金”と呼ばれる定期イベントで社内も活気付いてる。
同期に誘われたので、今日は焼き鳥で決まりになった。

華金という魔法のせいなのか1日にがとても早く感じてしまった。
時間がモッタイナイ。何をしていたんだろう。

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プレーン味 Day4

プレーン味 Day4

Day4

珍しく朝に満足していた。
毎朝の機械音で起こされなくて良いなんて。

オフィスを往復する人にとっては朝の余分な睡眠が
最高の幸せだ。

隣の同居人はすでに出かけていたようだが、
どのタイミングで出て行ったのかは定かではない。

布団から半身だけを出してスマートフォンで
今日の待ち合わせ時間を確認する

昼前に起きた自分にあまり時間が残されていないことを
確認して、ゆっくり準備を始めた。

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