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【読書感想文】カミュ「異邦人」

こんばんは!
2024年も絶えず読書を続ける男、小栗義樹です。

いやぁ、やっぱり本って面白いですよね!ハッとさせられることが沢山あって、とても楽しいなぁと思います!

昨年から始まったこの読書感想文ですが、過去の記事を読み返してみると、小説が圧倒的に多いですね。今年は、もっとバランスよくやっていきたいなぁと思っていて、ビジネス書や漫画、思想書などを、時代関係なく取り上げていきたいと思っています。

また一昨日の記事でも書いたように、題材として読んだ本を販売したりプレゼントしたりするという企画も考えています。僕が書いたメモとか、アンダーラインが入っていたり、中古で買ったものも多いので、価格設定は都度都度丁寧にやっていくつもりです。まだ読んだことないけど、この記事を読んで読んでみたくなったという方がいたら、ぜひご連絡ください。宜しくお願いします。

それでは始めます!

2024年最初の題材はコチラです!

「異邦人」

フランス領アルジェリアの作家「アルベールカミュ」の小説デビュー作。第2次世界大戦中に発表された本です。

不条理というテーマを追いかけ続けた作家で、代表作には「ペスト」などがあります。僕にとっては好きな作家であり哲学者でもあって、考え方や物の捉え方について、かなり大きな影響を受けていると言っても過言ではありません。

音楽、特にロックをやるならば、カミュの本は最低1冊、読んでみてもいいのではないでしょうか?と思うくらいです。

カミュの好きな作品をあげると、小説では「異邦人」「幸福な死」でエッセイだと「裏と表」、戯曲なら「カリギュラ」「精霊たち」がいいですね。かなり多彩だなという印象がある作家で、大学生の時、カミュの作品をむさぼっていた時期があります。

今回はそんなカミュの作品から「異邦人」をピックアップします。

この異邦人、なんといっても短いです。新潮文庫から出ている窪田啓作さんが訳した本は、121ページしかありません。

この短い小説の中で、これだけテーマを鮮烈に訴えられる本はなかなかないのではないか?そう思っています。

主人公はムルソーというのですが、今風に言えばサイコパスです。普遍的な物事に対して関心がなく、概念的なものに対して興味がありません。概念的なものに興味がないので、自分という存在にもあまり興味がないように見えます。そのため、自分という存在がここにあることを確認する方法として、自分の感情を利用しています。誰かの話に対して面白いと感じたとか、寄り添ってくれる人に対する欲望に素直だったりとかですね。

重要だなぁと思う部分は、主人公の輪郭がはっきりしていることです。これだけ欠落しているなぁと感じる主人公はなかなかいないと思います。これが、この物語の推進力になっているのは間違いないと思います。

ストーリーを簡単にお話すると、

まず、ムルソーの母親が亡くなり葬式に行くところからお話が始まります。ムルソーは母親に死に対してあんまり関心がないように周囲の人間から見られます。その後、母親の葬儀直後に、仲良しの女性と海に行き、コメディー映画を観ます。次に同じ住処の住人の手助けをして仲良くなり、その結果、その手助けで被害にあった人間たちから恨まれます。その後すったもんだあり、被害にあった人間から逆襲を受け、それを返り討ちにして殺してしまいます。ムルソーは裁判にかけられ、裁判を取り巻くあらゆる環境・人たちによって、自分という人間の骨格を勝手に決められながら、あらゆる感覚を押し付けられていき、混乱していきます。

様々な物事を押しつけられ、自分の人間性を勝手に決めつけられていく世界に、だんだんと嫌気がさすムルソー。そんな彼が最後に出した結論とは?

とまぁこんな話です。

最初に言いました通り、この小説はめちゃくちゃ読みやすいです。その理由の1つは短さです。割とすとんと話が入ってきます。ただ、こっちの方が重要かなと思うのですが、とにかく構図がはっきりしています。ムルソーVS周辺の人々だと思って読むと非常に分かりやすいです。

逆に言えば、この対立構造が分からないままスタートする、つまり1回目にこの本を読むときに関しては、ちょっと読みづらいのではないかなとも思います。この本、2部構成になっているのですが、1部はとにかくオムニバス的で、何が展開されているのかよく分からないかもしれません。

我慢して2部まで読み進めると、そこからはただただ没入です。最後はムルソーの独白みたいな感じになっているのですが、そこにこもっているパワーみたいなものはとにかくすさまじいものがあると思います。

最後の独白を読むと、異邦人というタイトルの秀逸さが光ります。そういう使い方もあるんだなぁと思わざるをえません。結構入り込んだ構造をしているわりに、話自体は淡白で短いので、読み終わった後の気分の良さはすさまじいものがあると思います。

異邦人を読んで僕が最も強く印象を持ったのが、人に何かを押し付けられることの不快感です。

異邦人では宗教や価値観がメインになっています。この時代はまだ実存主義という感覚は新しかったのかもしれません。目の前にある事だけが一番確かな真実だという人間にむかって、結婚とか神とか言っても、話しは平行線ですよね。

そこにはマジョリティーが絡んでいるし、育った環境なんかも絡んでいると思います。僕は基本、話し合いが平行線になることが分かっている場所にはいきません。説き伏せようとしたり、相手の価値観を聞いたりすること自体が無駄だと思うからです。そういう価値観もあるんだなぁ~と思える、理解ある人間ならいいと思うんです。それは意見交換であって、有意義なものになるはずですから。

でも、往々にしてそうはならないじゃないですか?

自分が信じたものを覆すことは難しいし、自分が信じたものが一番正しいと思いたいのが人間ですからね。あとは嫉妬なんかも絡んでくるでしょう。分かり合おうと思って分かりあうのは難しいと思います。

異邦人は、そういう部分がキレイに滲み出ていると思います。思想のぶつかり合いという点で言えば、ドストエフスキーの罪と罰に近い気迫を感じるほどです。

もしかすると、裁判の感覚が古臭くて受け入れられない可能性がありますが、それはもう時代的なものなので仕方が無いと考えた方がいいと思います。そういう部分を省いて考えれば、この本は間違いなくオススメです。

異邦人は図書館にとかに置いてある気がしますが、僕の本でよければお譲りします。

異邦人表紙
異邦人裏表紙

下記のメールアドレスに「異邦人が欲しい」「名前+郵便番号+住所」をご連絡くだされば、郵送させて頂きますのでお気軽にご連絡ください。

yoshikioguri1@gmail.com

読んでみて損はないしない。そんな本になっていると思いますので、まだ読んだことがないという方がいればぜひ、ご連絡をお待ちしております!

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