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エッセイ

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#コラム

ラブは遠ざけろ

ラブは遠ざけろ

ラブというものには、よくよく気をつけた方がいい。
細心の注意を払い、遠ざけることだ。

これまでだって、ラブにはさんざん苦しめられてきたのだ。
時に振り回され、打ちのめされ、ずいぶん遠回りもさせられた。

ラブは、強くなればなるほど、相手にとっては重荷になって行く。
ラブは、自分と等しい熱量を、相手にも強要してしまう。
そんなラブはいつしか執着に変わる。
いや、ラブこそが、執着の本質だ。
人への執

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その人に会いに行く、ということ

その人に会いに行く、ということ

「これから30分の休憩を挟みます」

そんなアナウンスが場内に流れる。照明が、まるでライブ終了時のように明るくなった。

ライブの途中で30分の休憩…?

そんなライブはかつて経験したことがなかった。
しかし、会場全体は、「しょうがないね」といった雰囲気に包まれる。
「だって無理すると倒れちゃうよ」

数年前のボブ・ディランのライブでの一コマだ。

本当に弾いているかも分からぬピアノを前に終始腰掛

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ダメさの塩梅

ダメさの塩梅

なかなかのモテ男が知り合いに、居る。

なかなかの年齢でもある。
そのせいか最近は、そのモテ数値も下降気味。
本人も感じているらしく、しみじみとぼやいていた。
それでもやはり色気といったものはまだまだ健在だ。

もうすっかり大人… いや場によってはもうジジイと言ってもいいだろうその男は、なかなかのダメ男でもある。
いい歳をして、すぐムキになる。
時間にルーズで周りに甘える。
会話を一方的に進め、キ

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ドンドンの先

ドンドンの先

『ダッドスニーカー』ってご存知ですか。

名前の由来は、お父さんが休日に履いていそうなちょっとダサいスニーカー。そんなイメージからそう呼ばれるようになったらしい。
お父さんの一人としては、多少ツッコミたくもなるけれど。
まあ名前の由来は、脇に置いておくことにします。

幅広で、少し厚めの底が特徴的なそのスニーカー。
代表的なものといえば『バレンシアガ・トリプルs』お値段10万円越え。それでも若者に

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さまよえるセール

さまよえるセール

ちょっと業界の話。

セールもそろそろ手仕舞いの頃合いだ。
店頭では、どこもかしこも「Max70%OFF」の文字が踊る。
皆さんは、「おっ安い!」と無条件で飛びつくだろうか…

実は、セールは年々、売れなくなって来ているのです。そりゃまあ、年中そこかしこで「〇〇セール」。ネットを開けば、いつだって安さを売りにしたショップが目白押し。
顧客に向けたプレセール。業界ではクローズセールと言ったりするけど

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ある日のカフェにて起こったことから考えたこと

ある日のカフェにて起こったことから考えたこと

ポチャ…
「え!」「…」

「すみませ〜ん」
「はい、どうされました」
「ここ水が張ってあるんだね」
「ええ。… あっ!」

先日、初めて訪れるカフェに行った時のことだ。
窓ぎわの席を選び座ろうとした際、着ていたダウンを脱ぎ、横にあったガラスのサイドテーブルの上に置こうとしたのだ。
てっきりガラス天板だと思い込んでしまった。
一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。
それでもすぐに「マジか」
そう

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開拓、そしてカムイへの想い

開拓、そしてカムイへの想い

わが家の家系をちょいと遡ると、それは開拓の歴史へと繋がる。なにせこの北の大地は、そのほとんどが本州からやって来た開拓民だからだ。
今年は、北海道命名150年。言うなれば、この地が北海道と呼ばれるようになって、150年しか経っていない。
それ以前は、古よりアイヌの人達がこの地の神々と共に、長きにわたり暮らしていたのだ。
そう考えると、我々の先祖である開拓民は、この地にあっては新参者というわけだ。

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また一つ子供たちから奪ったかもしれない

また一つ子供たちから奪ったかもしれない

幼い頃、今まさに嵐が来る、そんな空模様を見ていると、なんだかドキドキわくわくしたものだ。
一日一日が長い長い子供にとって、そんな毎日を全て吹き飛ばしてくれそうな、そんなわくわくだったかもしれない。

それもこれも、嵐の後も決して変わらぬ日常がそこにある前提の話。子供心にそのことは十分に理解してのことだ。それを分かった上でのちょっとした願い、神さまへのお願いだったように思う。
少しだけこの毎日を変え

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見えないものたち

見えないものたち

この地球から見上げる夜空は、目には見えない無数の星々で埋め尽くされている、らしい。

先日ある方からお誘いを受け、天体観測の会に参加して来た。残念なことにその日はあいにくの雨となり、屋外での観測を諦め屋内での座学会となってしまった。
主催した先生がスライドを使い、天体のあれやこれやを楽しく教えてくださり、それはそれで楽しいものとなった。
その話の中で一番興味深かったのは、想像以上の星たちがこの夜

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震災の空に浮かぶ月

震災の空に浮かぶ月

ここ北の地におこった震災の後に思う。

今なお被災し苦労されている方がいらっしゃる。亡くなられた方も、その悲しみに打ちひしがれている方もいる。

大きな傷跡を残した。

それでも人々はこの地で暮らしを続け、いつもの日常が戻りつつある。

そして今夜も、見上げれば星たちがぽつりぽつりと輝き、震災前と変わらぬ美しい月が静かに浮かぶ。古より変わることのない空がそこにはある。

ふと思うのだ。
遥か太古の

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トレンドなんて

まもなく夏が終わり、そして秋を迎える。

そう季節は移り変わる。

そして、季節の移り変わりと共に、人々の装いも変わって行く。

そこには、そのシーズン毎の流行り廃り、所謂トレンドがある… 筈だった。以前までは。

今では、昔のようにこぞってそれを買い求めるようなトレンドはとんと見当たらない。
むしろ、これがトレンドですと言われても「それじゃあ、買わなきゃ」と思う人も少ないんじゃないだろうか。

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