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「ちいさなモミの木」マンフレート・キューバー
むかし、おおきなモミの森のおくにちいさなモミの木があり、クリスマスツリーになりたいとねがっていました。けれどそれは、かんたんにかなうねがいではありませんでした。なぜなら、モミの木たちにはよくしられているとおり、せいニコラウス(*)はとてもきびしくて、かんぺきにクリスマスツリーにふさわしいと本にかかれているモミの木にしか、クリスマスツリーとして村や町にいくことをゆるさなかったからです。その本という
もっとみるエラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|いさおし
『花ひらく黄昏』目次
新しい学校、そしてわたし自身の仲間を集めるチャンス! 最初は厳格で不人気な校長に反抗する不満分子からなる一味だった。わたしたちはゲリラ戦をつづけ、かなりの戦果を挙げた。懲罰はたいして効果がなかった。罰が下った者には仲間の同情が寄せられた。衝突と戦闘、敗北または勝利のたびに、わたしたちは意気を新しくした。
そこへブライザンスが登場した。彼女は優等生だった。それまでのわた
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|劇場
『花ひらく黄昏』目次
ロングフェローは母のお気に入りの詩人だった。母は型押しされた革と三方の金が豪華な大型の本を朗読してくれた。わたしたちは小さなスツールにすわり、耳を傾けた。妹のジェニー、妹のモード、そしてわたし。わたしたちは『オーラフ王のサガ』を気に入った。いつのまにか、なりゆきも理由も定かでないが、わたしたちは〈尊大なる女王シグリッド〉のくだりを演じるようになった。
わたしたちはこっ
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|新たな地平
『花ひらく黄昏』目次
家族席は教会の中二階にあった。高い仕切りがあり、赤いフラシ天のクッションには丸いボタンが付いていて、日曜ごとに少しずつゆるめれば取り外すことができた。わたしがボタンを取ることもあれば、妹のジェニーが取ることもあった。モードは熱中するには幼すぎた。母はなぜクッションのボタンをそんなに何度も縫い付け直さなければならないのか不思議がっていた。祖母は父と母とともに家族席にすわった
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏 正確にまた不正確に記憶にあることども』
白いユニコーンに
そして
黄褐色のライオンに
挨拶を
目次第一巻:エーレ
子供の世界
知恵の木
サーカス
花ひらく黄昏
喪失
許されざる罪
新たな地平
劇場
いさおし
新たな田舎
暗い水
錦繍
ウェールズはグラモルガンのアリグザンダー・アーカート氏に、またカリフォルニア州コーヴィーナにある神智学協会の C.J. ライアン氏に、ケネス・モリスの著作からの引用をお許しいただいたことを感謝い
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|許されざる罪
『花ひらく黄昏』目次
わたしはまた神意に思いを巡らすようになった――暗い思いを。天国があり、地獄がある。天国は終わりのない安息日である。ウィルソン博士がそうだと言っている、教会の高い説教壇からそう言っている――毎週日曜には、わたしは陰鬱で退屈な長老会派教会の家族専用席に妹のジェニーとモードと腰かけ、くすんだ単調な壁や、反対側の家族席や、ウィルソン博士の黒いガウンの肩で気をまぎらしていた。
「天
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|喪失
『花ひらく黄昏』目次
わたしは家で感じ悪くふるまい、相手にされなくなった。わたしは学校で感じ悪くふるまい、誰からも高く評価されなくなった。新任の教師のクラスに入れられるまでは。優しい風貌の女の先生で、豊かな――それは豊かな金髪だった。先生はわたしを信じてくれた。クラスの皆の前でわたしを褒めてくれた。わたしが質問すると耳を傾けてくれた。わたしは先生を愛した。宿題をやるようせかされる必要はなくなっ
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|花ひらく黄昏
『花ひらく黄昏』目次
母か召使いの手で狭い自分の部屋のベッドに寝かされると、わたしは枕に顔を押しつけて、毎晩起こることを――毎晩起こるとわかっていることを待ちうけた。すばらしい羽冠を持つ蛇たちが、一匹ずつ、また何匹かまとまって、枕の柔らかな闇を抜けて立ちあがるだろう。蛇たちは頭の方から身をもたげ、尾を下にして直立する。緑色や多彩の蛇たち。わたしはこの蛇たちがあまり好きではなかった。「長虫ども」
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|サーカス
『花ひらく黄昏』目次
町にサーカスがやってきた。川の対岸の野原にテントが張られるだろう。どこへ行っても喧噪が聞こえる。通りは象や虎、黄褐色のたてがみ豊かなライオン、駱駝、ブラスバンドを乗せた馬車で花が咲いたようだ。わたしは窓辺に立って一座が通り過ぎてゆくのを眺める。白塗りの顔の道化師たち、驢馬にまたがっている、白塗りの顔を尻尾のほうに向けてまたがっている。赤いベルベットのドレスを着たわたしと同
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|知恵の木
『花ひらく黄昏』目次
わたしは綴り方と二かける二は四の暗唱を勉強している。ここで父がわたしの学習に関心を見せる。父は生来とても数学が好きで、わたしもそうだといいと願っている。わたしはそうではない。かけ算の表は父とわたし双方のいらだちのもとだ。母は宗教的なたちだ。母はもっぱら小教理問答に、それから聖書の教えに熱を入れる。
聖書の物語はわたしを考えごとに向かわせた。なぜ神は蛇を創ったのか? ある
エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|子供の世界
『花ひらく黄昏』目次
わたしはごく幼いころのできごとを一連の絵として憶えている。ひとつは判じ絵だ。黒と白の歯のようなものが規則正しく並んでいるのを高みから見下ろしている――長い白い歯、短い黒い歯、規則正しく並んでいる。これはなにを意味しているのだろう。牝牛、木、花、それなら意味はわかる――椅子、テーブル、それも――けれどこのおかしなものはなんだろう?
ピアノの白鍵と黒鍵、それを抱えられながら