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燈火節異文

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片山廣子の随筆集『燈火節』の中でネタとして使われたフィオナ・マクラウドの随筆を紹介。 *更新予定* ミケル祭の聖者/Iona、 蝙蝠の歴史/The Summer Heralds、… もっと読む
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燈火節異文|「海の呪縛」フィオナ・マクラウド

燈火節異文|「海の呪縛」フィオナ・マクラウド

海の呪縛

 昔の魔術的な著述家たちは、わたしたちの誰のうちにも存在する隠された扉である、元素との親和性について記している。扉を見つけよ、そうすればおまえは魂に至る道に立つことになるのだ、彼らは要するにそう言っている。火の子がいれば、大気の子、地の子、そして水の子もいる。さらに人間の強みや弱み、美徳や悪徳までもが、これら元素の働きに帰せられる。これこれの美徳は火のものである、これこれの資質は大気の

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燈火節異文|「青い七つ星の彼方」フィオナ・マクラウド

燈火節異文|「青い七つ星の彼方」フィオナ・マクラウド

それにしても、昔からきまつたあの位置に、とほく静かにまばたきもしないで、むしろ悲しさうな顔を見せてゐる星はすばらしいと思ふ。すべての正しいもののみなもとである神も、あの星のやうに悲しい冷たい静かなものであらうか?

片山廣子「北極星」より

青い七つ星の彼方 北斗七星のふたつの伝説 北のひとつ星は北方の民、とくに羊飼いや船乗り、旅人にとっては星の中の星である。あまたの伝説がその神秘を、つねに変わら

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燈火節異文|”An Almanac” Fiona Macleod

燈火節異文|”An Almanac” Fiona Macleod

 はじめに生れたのは歓びの霊である、この新しい年をよろこべ!
  一月  霊はまだ目がさめぬ
  二月  虹を織る
  三月  雨のなかに微笑する
  四月  白と緑の衣を着る
  五月  世界の青春
  六月  壮厳
  七月  二つの世界にゐる
  八月  色彩
  九月  美を夢みる
  十月  溜息する
  十一月 おとろへる
  十二月 眠る
 ケルトの古い言ひつたへかもしれない、或るふ

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