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エラ・ヤング自伝『花ひらく黄昏』|新たな田舎

『花ひらく黄昏』目次


 地平線まで遠く幅広く延びる草地。ひらけた空をさえぎる街の塔はない。彼方の丘がうす青く霞んでいる。牛たちは家路を歩み、小さな町のただ一本の通りをぶらつくことさえある。町はその昔、フランスからの避難民によって建設され、今もなお食料品店や生地店にはフランス語の屋号が記されている。小さな町は眠たげだ――身じろぎするのは市の日だけで、そのときばかりは豚や羊、山羊や馬でかまびすしい。田舎は眠たげで、満ち足りた顔つきをしている。そこに住むひとびとも同じだ。
 いっぽう、ほど遠からぬところにアレン湿原があり、アイルランドの半分にわたって広がっている。彩り豊かで美しく、海のように刻々とうつろう。わたしは湿地のへりを訪ねることができる。はるか彼方、空を背景に松の木が見える。わたしは小さな松の木立をふいうちで驚かすことのできる場所を知っている。木は風雨にさらされ、ねじくれている。木蔭の一点に立つと、わたしの中におおきな喜びがわきあがるので、それこそ若さの泉にちがいなかった。わたしは行けるときはかならず、ひとりきりでそこを訪れる。そのたびに変わらぬ圧倒されるような恵みの力を感じる。わたしはだれにもその場所のことを話さない。


NEW COUNTRYSIDE
Ella Young

館野浩美訳