堀江圭子

小説書いたりしてます。フィクション多め。 金のインディアン19。 Xしてます。 イ…

堀江圭子

小説書いたりしてます。フィクション多め。 金のインディアン19。 Xしてます。 インスタしてません。 趣味は読書とギターとジムと、、ライブ行ったり、BAR巡りしたり、小説書いたり、最近はカクテル作り始めました。好きなの多めです。 よろしくお願いします。

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固定された記事

性的マイノリティ

「朝井リョウさんの正欲って本があるじゃないですか。あれほんとすごいですよね。マイノリティをすごくよく描いてて」 あの本を、普通の人が読むのと、マイノリティ側にい…

堀江圭子
2か月前
43

自己完結型推し活

 出来上がった周平くんぬいぐるみの唇にそっと口を近づける。ソフトボアのふわりとした生地が唇に触れて気持ちいい。こんなことをしているのがバレたらきっと気持ち悪がら…

堀江圭子
1日前
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服を捨てる

「うぉ!? 何じゃこりゃ」 仕事から帰宅した主人が声を上げた。 玄関から続いた廊下にずらりと並んだゴミ袋。 45リットルのゴミ袋が6袋と少し。 「フランス人は10着し…

堀江圭子
5日前
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クソつまらないと言われて

「今度の舞台、あんた来なくていいよ」 「え、なんで?」 「クソつまらないから申し訳なくて来てほしくないみたい。来なくていいって言われた」 「なにそれ。逆に気にな…

堀江圭子
6日前
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自分に似合う服

「そのグッチの帽子、誰かからの貰い物ですか?」 わたしの知り合いのギタリストは、ときどきグッチの帽子を被っている。 「え」 「全然似合ってないですね」 今日はは…

堀江圭子
7日前
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一回のライブでいくらかかるのか

「またチャラ男見てんのか」 「今日はチャラじゃない人見てんの」 夕食のときにいつもテレビでYouTubeを再生する。 わたしの推しのギタリストが出てるフェスの動画だ。 …

堀江圭子
8日前
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裏の顔を見抜く

「そういえばさ、チャラと飲んだときに手ニギニギされたんだけどさ、ああいうのってさ、お酒の勢いで日頃やりたいと思ってることをやっちゃったのか、それとも、手ニギニギ…

堀江圭子
11日前
28

自分のことは自分でやる人ほど冷たい

外を歩いていたら、コンビニの前の道に、お婆さんが座っていた。 お尻をついて、足を横に折り曲げるような形で。 そばにはお婆さんが持っていたと思われる手提げカバンが、…

堀江圭子
12日前
34

音楽なのか、音楽を利用した商売なのか

この前ね、「アーティストの水商売化」っていうなかなかインパクトの強いタイトルの記事を書いたんだけどね、わりと反応が良かったのよね。今でもアクセス数が伸びてるの。…

堀江圭子
13日前
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才能を開花させられる人

「おまえ、自分のこと全然喋らないよな」 「え」 「普通の女はもっと自分の話をするんだよ。今日あったこととか、楽しかったこととか、こっちが聞いてもいないのにベラベ…

堀江圭子
2週間前
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お金の価値は変わらなくても

7月4日 午前11時30分。 「わ! 新札なんですね!」 よく行く飲食店で少し早い昼食をとっていると、レジの方から声がした。 「そうなんですー!」 レジには学生バイト…

堀江圭子
2週間前
26

二推し夫婦

「ちょっと!! なんで周平くんの横に梓がいるの!」 「梓のうちわあったから対抗して飾っといた」 わたしの推しと主人の推しが並ぶ。 周平くんはカッコいいし、小野寺…

堀江圭子
2週間前
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どんなに好きでも嫌いな部分はある

洗濯物を畳みながら、ひっくり返った靴下を直す。 ひっくり返ったTシャツも、ひっくり返ったパンツも直す。 今はもう当たり前になったので、イライラすることもない。 好…

堀江圭子
3週間前
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性欲がなくて

「何の本読んでるんだー?」 主人がニヤニヤしながら話しかけてくる。 わたしが今読んでる本のタイトルを知ってるくせに。 「うっさいわ! ハゲ!」 今読んでる本のタ…

堀江圭子
3週間前
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アンチをつける

「いやいや、さすがに最前は……。初見なので……、曲とか全然聴いてないので……」 ファンの方に招待されて行った、アイドルさんのワンマンライブ。 BAND-MAID同様、男性…

堀江圭子
3週間前
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サイコパス

「まず、ひよこをミキサーにかけるのよ」 「は?」 男性の前でピヨピヨと鳴く1羽のひよこを鷲掴みにしてミキサーの中に入れる。 「え、ちょっと……なにを……」 「液…

堀江圭子
3週間前
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性的マイノリティ

性的マイノリティ

「朝井リョウさんの正欲って本があるじゃないですか。あれほんとすごいですよね。マイノリティをすごくよく描いてて」

あの本を、普通の人が読むのと、マイノリティ側にいる人が読むのとでは、感想が結構分かれる。

「めちゃめちゃ好きな本です。あの本に、「水」に性的興奮を抱く夫婦が出てくるじゃないですか。セックスなんてしたことないのに、この世の中を生きていくために2人で協力して、結婚して、なんとか「普通」に

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自己完結型推し活

自己完結型推し活

 出来上がった周平くんぬいぐるみの唇にそっと口を近づける。ソフトボアのふわりとした生地が唇に触れて気持ちいい。こんなことをしているのがバレたらきっと気持ち悪がられるだろうけど、みんなもやってるだろうと思う。言わないだけで、写真とか、写真とか、スマホ画面に顔を近づけたりとか、やるだろう普通。

 周平くんの唇は、わずかに斜めになったサテンステッチで横一本。左から見ると少し笑って見えて、右から見ると少

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服を捨てる

服を捨てる

「うぉ!? 何じゃこりゃ」

仕事から帰宅した主人が声を上げた。
玄関から続いた廊下にずらりと並んだゴミ袋。
45リットルのゴミ袋が6袋と少し。

「フランス人は10着しか服を持たないのよ」

「は? あんたフランス人じゃなくてロシア人だろ」

「ん。そうくるとは思わなかった。そこは「あんた日本人だろ!!」って言ってほしかったわ」

いつも通りくだらない冗談を言い合う。

【フランス人は10着しか

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クソつまらないと言われて

クソつまらないと言われて

「今度の舞台、あんた来なくていいよ」

「え、なんで?」

「クソつまらないから申し訳なくて来てほしくないみたい。来なくていいって言われた」

「なにそれ。逆に気になっちゃう」

定期的に観に行ってる役者さんの今度の舞台。

「クソつまらない」と役者本人に言わせるほど、クソつまらないらしい。

「あんた天邪鬼だからなー。価値観は人それぞれだから、俺は一回は観に行こうと思うけど、あんたは来なくていい

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自分に似合う服

自分に似合う服

「そのグッチの帽子、誰かからの貰い物ですか?」

わたしの知り合いのギタリストは、ときどきグッチの帽子を被っている。

「え」

「全然似合ってないですね」

今日ははっきりと言った。

「グッチの帽子がですか?」

「はい。全然似合ってないです」

「そうですか……」
どう言葉を返したらいいか分からないというように、落ち込むギタリスト。

「それ」

「え」

「そうやって落ち込むから言わないん

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一回のライブでいくらかかるのか

一回のライブでいくらかかるのか

「またチャラ男見てんのか」

「今日はチャラじゃない人見てんの」

夕食のときにいつもテレビでYouTubeを再生する。
わたしの推しのギタリストが出てるフェスの動画だ。

「この女性アーティスト、いつも出てるのにいつもバンドサポートつけないんだよね」

わたしの推しのギタリストが出てるフェスは、月に1回あり、10組から15組のアーティストが出演する。
サポートメンバーは固定で、わたしの推しはギタ

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裏の顔を見抜く

裏の顔を見抜く

「そういえばさ、チャラと飲んだときに手ニギニギされたんだけどさ、ああいうのってさ、お酒の勢いで日頃やりたいと思ってることをやっちゃったのか、それとも、手ニギニギすればわたしが喜ぶと思って、喜ばせたくてやったのか、どっちなんだろうなってふと思った」

「ちょっとまて。手ニギニギってなんだ? 聞いてねぇぞ」

「うん。怒ると思ったから言ってなかった」

「あいつ人妻に手出したのか!! ぶち殺す」

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自分のことは自分でやる人ほど冷たい

自分のことは自分でやる人ほど冷たい

外を歩いていたら、コンビニの前の道に、お婆さんが座っていた。
お尻をついて、足を横に折り曲げるような形で。
そばにはお婆さんが持っていたと思われる手提げカバンが、投げ出されるように落ちていた。

お昼を過ぎたあたりの時間で、暑かった。
座っているアスファルトの地面も、おそらく熱くなっているだろう。

「なんでこんな暑いところに座っているのだろう。もしかしたらちょっと頭のおかしい人なのかな。関わらな

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音楽なのか、音楽を利用した商売なのか

音楽なのか、音楽を利用した商売なのか

この前ね、「アーティストの水商売化」っていうなかなかインパクトの強いタイトルの記事を書いたんだけどね、わりと反応が良かったのよね。今でもアクセス数が伸びてるの。
だから、第二弾ってわけじゃないけど、常日頃思ってることを書こうと思うの。

わたしね、家族の影響でね、地下アイドル現場に行くことが多いんだけど、そこで会うオタクさんたちからよく聞く言葉があるの。

「嫁には言ってません」

どういう意味か

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才能を開花させられる人

才能を開花させられる人

「おまえ、自分のこと全然喋らないよな」

「え」

「普通の女はもっと自分の話をするんだよ。今日あったこととか、楽しかったこととか、こっちが聞いてもいないのにベラベラと」

「聞きたい? そう言う話」

「いや、聞きたくない」

「じゃあいいじゃん」

20歳のときに35歳の男と付き合っていて、そいつに言われた言葉をふと思い出す。

20歳のわたしにとって、35歳なんてすごくおじさんで、肌にハリが

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お金の価値は変わらなくても

お金の価値は変わらなくても

7月4日 午前11時30分。

「わ! 新札なんですね!」

よく行く飲食店で少し早い昼食をとっていると、レジの方から声がした。

「そうなんですー!」

レジには学生バイトと思われる若い女性の店員さんと、今まさに会計が終わってお釣りを受け取った50代くらいの女性客。

「今日から新札になったみたいです!」

張り切ってニコニコしながら言う店員さん。
お釣りを受け取った女性客も、ニコニコしている。

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二推し夫婦

二推し夫婦

「ちょっと!! なんで周平くんの横に梓がいるの!」

「梓のうちわあったから対抗して飾っといた」

わたしの推しと主人の推しが並ぶ。
周平くんはカッコいいし、小野寺梓は可愛い。

「梓くらい可愛いと許せるんだけどなぁ。めっちゃ似合うじゃんこの2人。周平くんの隣には梓くらい可愛い子がいてほしいな」

「周平くんは彼女いるのか?」

「いてもいない設定だよ。仕事上」

「仕事上……」

街を歩くカップ

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どんなに好きでも嫌いな部分はある

どんなに好きでも嫌いな部分はある

洗濯物を畳みながら、ひっくり返った靴下を直す。
ひっくり返ったTシャツも、ひっくり返ったパンツも直す。

今はもう当たり前になったので、イライラすることもない。

好きな人の全てを好きになるわけではない。嫌いなところがあっても、「まぁ、そんなこともあるか」と受け入れる。

結婚してる人としてない人で、この差は結構大きいように思う。

結婚当初はよくイライラしていた。

「またひっくり返ってるんだけ

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性欲がなくて

性欲がなくて

「何の本読んでるんだー?」

主人がニヤニヤしながら話しかけてくる。
わたしが今読んでる本のタイトルを知ってるくせに。

「うっさいわ! ハゲ!」

今読んでる本のタイトルは「夫のちんぽが入らない」
よほどわたしに「ちんぽ」という単語を言わせたいらしい。

「夫のちんぽが入らない」は、タイトル通り、夫のちんぽが入らないことを悩む女性の心の葛藤が描かれている。

好きなのに。結婚してるのに。ちんぽが

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アンチをつける

アンチをつける

「いやいや、さすがに最前は……。初見なので……、曲とか全然聴いてないので……」

ファンの方に招待されて行った、アイドルさんのワンマンライブ。
BAND-MAID同様、男性客が多い現場なので、色気をなくしたTシャツとジーパンで参戦。
メンバーに認知してほしくてフリフリの可愛い服で参戦する女性もいるけど、私にその度胸はない。

フロアは想像していたよりも女性客がいた。おそらく1割くらい。

「せっか

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サイコパス

サイコパス

「まず、ひよこをミキサーにかけるのよ」

「は?」

男性の前でピヨピヨと鳴く1羽のひよこを鷲掴みにしてミキサーの中に入れる。

「え、ちょっと……なにを……」

「液体にするの」

フタを閉めて、スイッチオン。
グワンと動き出す鋭い刃は、ひよこをものの数秒で赤い液体に変えた。

「うわぁ……」

「そろそろできあがりかな」

スイッチを止めた。
ひよこは見事なまでに綺麗な赤い液体になった。
絶句

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