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自分のことは自分でやる人ほど冷たい
外を歩いていたら、コンビニの前の道に、お婆さんが座っていた。
お尻をついて、足を横に折り曲げるような形で。
そばにはお婆さんが持っていたと思われる手提げカバンが、投げ出されるように落ちていた。
お昼を過ぎたあたりの時間で、暑かった。
座っているアスファルトの地面も、おそらく熱くなっているだろう。
「なんでこんな暑いところに座っているのだろう。もしかしたらちょっと頭のおかしい人なのかな。関わらないようにしよ」
そう思って、お婆さんから距離をとって横を通り抜けようとすると、
「大丈夫ですか!?」
前から来た30代くらいの男性が勢いよくお婆さんに駆け寄って行った。
ん?
「救急車呼びますか!?」
んん?
男性はお婆さんの手を取り抱き抱えるように持ち上げた。
「ごめんなさいね。暑さでふらついてしまって。ちょっと休めば大丈夫だと思うの」
「とりあえず涼しいところ……そこのコンビニに入りましょう」
男性はお婆さんを抱えてコンビニに入っていった。
あぁ……またやってしまった……。
きっと男性から見てわたしは、「倒れたお婆さんを見捨てたひどい女」だっただろう。
どうしてだろう。どうしてみんなすぐに分かるのだろう。
「暑さで倒れたお婆さん」と「暑いのに道に座っている変なお婆さん」の違いはなんなのだろう。わたしに教えてほしい。わたしには違いが分からない。
ある日のこと。
コンビニに入り、買いたいものを集めてレジに向かう。
店員さんが全ての商品をスキャンし終わると、レジ画面に支払い方法選択画面が現れる。
レジであたふたしないように、会計前からPayPayのバーコードを表示させているわたし。
「バーコード決済」を押そうとしたら、
「あ、大丈夫です」
ピッ
ピッ
店員さんが店員側のレジを操作して、わたしが「バーコード決済」を押さずに会計を終わらせた。
この場合、いつも悩む。
わたしはこのとき、操作してくれた店員さんにたいして「ありがとうございます」と言うべきなのだろうか。
それとも、店員さんは「さっさとボタン押せよ」って意味で、操作したのだとしたら、
「もたもたしてすみません」と謝るべきなのだろうか。
他人が何を考えているのか分からなければ、何を答えたらいいのか分からない。
結局何も言わずにお店出る。
それも失礼な気がして嫌なので、
最近は、店員さんが商品をスキャンしてるときから、レジのタッチパネルに張り付いて、
「バーコード決済」ボタンが出るのを今か今かと待っている。
どちらが先に押すか。
絶対にわたしが先に押す。店員には押させない。
悩みたくないのだ。
わたしは、なにか問題があったときに、自分でできる範囲のことで解決しようとする。
他人にはできるだけ頼らない。
だから、倒れた人を見ても、
「本当に体調が悪ければ自分で救急車を呼ぶだろう」と考えてしまうところがある。
「バーコード決済」なんて自分で押せるのに、わざわざ恩着せがましく店員さんに押されると、
「自分で押せますけど」と、反論したくなってしまう。
いつか見た、
「どう見ても現金だよ。お前が押せよ」と怒鳴っていたおじさん。
他人に甘えて育つと、指一本でボタンを押すことすらできなくなってしまう。
他人の優しさを当たり前だと思って傲慢に振る舞う人をたくさん見てきた。
人間はどんどん図々しくなるものだ。
優しさが人をダメにする。
優しくないという優しさが必要な人もいる。
それでも、わたしみたいな人間が増えると、世の中はとても冷たい世界になるので、優しい人は、いつまでもその優しさを維持してほしいと思う。
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