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音楽なのか、音楽を利用した商売なのか




この前ね、「アーティストの水商売化」っていうなかなかインパクトの強いタイトルの記事を書いたんだけどね、わりと反応が良かったのよね。今でもアクセス数が伸びてるの。
だから、第二弾ってわけじゃないけど、常日頃思ってることを書こうと思うの。

わたしね、家族の影響でね、地下アイドル現場に行くことが多いんだけど、そこで会うオタクさんたちからよく聞く言葉があるの。

「嫁には言ってません」

どういう意味か分かる? 
推しちゃんとか言って、特定のアイドルさんを応援する男性客が多いんだけどね、そのことを家族には言えないって言うの。
おかしいと思わない? 普通さ、アイドルってとっても華がある人でしょ? 綺麗で、可愛くて。
そんな素敵なアイドルさんを応援してることって、誇れることじゃない? なのになんで家族に言えないのよって。

でも何回も行くと、言えない理由なんてすぐに分かるわ。
ライブの後の物販がすごーく長くてね、オタクたちは1枚2000円のチェキを数十枚撮るの。アイドルさんと顔を近づけてね。チェキ券を販売してる物販テーブルには、1万円札が生々しく束になって積まれてるの。まるでホストクラブみたいに。わたしは行ったことないけどね。

地下アイドル現場において、アイドルとは芸能ではなく風俗のようなものなのよ。だから家族には言えないの。

これがね、アーティストの現場でも起こってるの。分かりやすいのはクラウドファンディング。リターンが何かとか、そんなこと問題じゃないのよ。問題なのは、「わたしはお金をこれだけ集めました」ってアピールしちゃってること。これでそのアーティストがやってるのは音楽なのか、音楽を利用した商売なのか、まぁ、芸能路線か風俗路線とでも言っとこうかな、はっきり分かれるのよ。

考えてみてほしいのよ。

例えば好きな人がいて、そうね、じゃあわたしは周平くんが好きだから周平くんを例にあげるとね、周平くんに、好きなアーティストがいたとするわね。
わたしは、「周平くんが好きなアーティストはどんな人なんだろうなぁ」って気になって調べるじゃない?
でね、調べて出てきたそのアーティストが、Xの固定ポストに、

【クラウドファンディング実施中!! 現在308万円! 7月31日まで! ぜひご協力お願いします!!】

とか書いてあったとしたら、どう思う?

わたしはね、若干引くの。若干よ、わかる? うまく言葉にできないけど、なんとなーくモヤっとする感じ。わかるかしら。
「周平くんってこういうのが好きなんだなぁ」って、否定も肯定もしないけど、なんとなーく残念な気持ちになるの。もっと言えば、周平くんに傷がついた気持ちになるの。

自分が苦労して稼いだお金を、こんなお金を集めるだけのアーティストに使ってるんだなぁって思ったら、結構冷める。
そのアーティストがいくらパフォーマンスや歌が上手くても、そんなの知らないし、真っ先に入ってきた情報が【クラウドファンディング、308万円】なわけじゃない? 第一印象が悪すぎるし、周平くんのセンスも疑う。

今は好きな人で例えたけど、これが家族だったら? って考えても同じだわ。

夫や嫁、娘や息子。
大切な家族が、【クラウドファンディング実施中! 現在308万円!】とか言ってるアーティストを応援していたら、不安にならない?
308万円ってすごい大金じゃない?
「308万円中、いくらこのアーティストに使ったんだろう」って、金額が表示されてるから、すごくリアルに考えちゃうわ。

だからね、言えないのよ。

「嫁には言ってません」って。

風俗だし、キャバ嬢、ホスト。その類と同じ。
すごーく狭い世界の商売。

客はそのアーティストが大好きだけど、そのアーティストを応援していることを家族や身近な人が知ったら、その人たちを悲しませるって分かってるの。だから言わない。

そんな悲しい現実ある?

一番身近な家族にも言えない。
それはもう音楽じゃないわよね。

わたしね、極論言ってしまうと、アーティストに自我なんて必要ないと思ってるの。
「アーティストだって人間だ!」なんて言ってる人もいるけどね、人間かもしれないけど、人間性は求めてないの。

例えるなら、そうね、作家と同じ。作家に自我なんていらない。小説という作品が全てなの。
読者は小説を読んで、物語に入り込んで、自分が体験できなかった人生を経験する。

前にね、知り合いのギタリストに聞いたことがあるの。
「音楽を聴いているときに、何を想像しますか?」って。

その人はギタリストだったから、「ギターを弾いている自分を想像する」って答えてたんだけど、それとは別に、
「ベースを弾いている自分も想像するし、ドラムだったらドラム叩いてるのも想像する」
って答えたの。

それ聞いて、嬉しくなっちゃった。音楽やってる人もそうなんだなって。
わたしもね、全く一緒なの。ピアノなんか弾けないのに、ピアノの音が聞こえたらピアノを弾く自分を想像するし、
歌を聞けば、常に大きいステージで歌ってる自分を想像しながら聞くの。

音楽と小説はすごく似てる。
曲に、歌に、なりたかった自分を投影してるのよ。
わたしにとってアーティストって、そういう対象なの。自分を映す鏡なの。

だからアーティストが自我を剥き出しにして、【クラウドファンディング実施中!! 現在308万円!!】とか言ってると、それは音楽をやってる人間とは思えない。ただの風俗。

好きなアーティストがそんなことをやり出したら許せないし、好きなアーティストが誹謗中傷されてるのを見ると、まるで自分が誹謗中傷されているみたいに傷つく。アーティストは、自分の分身のようなものだから。

まぁ結局なにが言いたいのかっていうとね、

あなたたちがやりたいのは、音楽なのか、音楽を利用した商売なのか、どっちなの? って話よ。

音楽をやりたいのであれば、自分を応援してくれるファンの人が、家族や好きな人に堂々と「自分の推しはこの人です」って言えるアーティストにどうしてなろうとしないのよ。

恥を知った方がいいわ。
「嫁には言ってません」って言わせてしまってることに。

音楽って広めるものじゃない。勝手に広まるもの。
耳を塞がなければ、音は勝手に耳に入ってくる。
広まらないようにしてるのはアーティスト自身なのに、それに気づいてない。

わたしはね、音楽をやってるアーティストが好きなの。音楽をやってるアーティストを応援したいの。
だからね、音楽をやってるアーティストが、音楽を利用した商売をやってるアーティストに悪い影響を受けないように、全力で阻止したい。

でもね、客だって馬鹿じゃないから、音楽をやってるアーティストをきちんと見抜く。アーティスト自身は気付かなくても、客が見抜くから大丈夫。ライブをコツコツとこなしていけば勝手に広まっていく。
そしてあるとき、信頼と魅力が蓄積してきたら、ドカンと跳ねるタイミングがあるから、
それまで歩みを止めずに、ゆっくりでもコツコツと。

「家族にも言えるアーティスト」
それだけを目指して、頑張ってほしい。

応援してるよ。

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