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二推し夫婦
「ちょっと!! なんで周平くんの横に梓がいるの!」
「梓のうちわあったから対抗して飾っといた」
わたしの推しと主人の推しが並ぶ。
周平くんはカッコいいし、小野寺梓は可愛い。
「梓くらい可愛いと許せるんだけどなぁ。めっちゃ似合うじゃんこの2人。周平くんの隣には梓くらい可愛い子がいてほしいな」
「周平くんは彼女いるのか?」
「いてもいない設定だよ。仕事上」
「仕事上……」
街を歩くカップルを見て批評する。
この2人はお似合いだなぁとか、この2人は釣り合ってないなぁとか、なんで付き合ったんだろうなぁとか、好き勝手に想像して歩く。
以前、主人と歩いてるときに見かけたカップル。
男はチャラチャラしたアクセサリーをたくさんつけた色白のイケメンで、女は太ってて肉肉しい太ももを丸出しにしてミニスカートを履いていた。
「あの2人、全然釣り合ってないね。男はカッコいいのに女はデブだし可愛くない」
と言うと、
「あれはホストだよ。男化粧してんだろ」
と。
「なんでホストってわかるの?」
「むしろなんで分からないの?」
と。
わたしは全然分からないのに、喋り方とか雰囲気とかで、主人はホストを見抜く。
「女の方はさ、恥ずかしくないのかな。明らかに自分と釣り合ってないイケメン連れて歩いて。お金で男を買いましたって分かるわけでしょ。恥ずかしくない?」
「それを恥ずかしいと思わない奴がホストにハマるんだよ」
なるほど。
わたしだったら絶対一緒に歩きたくないなと思う。
「周平くんも大変だね」
「……。チャラ男みたいなイケメンわな……」
「なに?」
「めんどくさい女に慣れてるから平気なんだよ」
「それは頼もしいな」
「頼もしい?」
「安心してめんどくさい女になれるわ」
「おい」
周平くんのうちわがあっても、ちっともヤキモチ妬かない主人。
梓のうちわがあってもちっともヤキモチ妬かないわたし。
でも、周平くんに可愛くない女が寄ってるのは許せない。
梓くらい可愛くて品のある女性だったら似合うのに。
「でも男の人ってさ、1番可愛い女の子を本命にはしないんだよね。自分を1番にしてくれる女の子を本命にするの。彼女の1番であり続けたいんだよね」
「旦那さんは嫁さんがいつでも1番だよ」
「嘘つけ。梓やろ」
「あんたは周平くんだろ」
「うん、周平くんだよ。周平くんが1番」
「最悪だ」
我が夫婦はともに二推し。
「でも昔から言うよね。結婚相手に1番好きな人は選ぶなって。どっちが正解なんだろうね」
「恋愛と結婚は違うんだろ」
一推しのうちわが並んだ我が家。
周平くんと梓。美男美女。
もしこの2人が付き合っていたならという妄想で、今日も幸せいっぱいだ。
一推しに感謝して、
そんな環境を整えてくれる二推しに、もっと感謝する。
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