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演劇/微熱少年 主宰の加藤真史が演劇のこと、作品のこと、社会や芸術のことを綴ります。

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マガジン

  • 料理昇降機/the dumb waiter

    演劇/微熱少年 vol.2 料理昇降機/the dumb waiterについて

記事一覧

コピーバンドの美学について考えた

ある芝居を観た帰り、不意に思い立ってザ・バッドボーイズの『MEET THE BAD BOYS』を愛車のカーステレオからBluetooth経由で爆音リスニングした。 ザ・バッドボーイズは、…

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2か月前
17

演劇における「対話」再考

知人が関わる演劇の公演が同日はしご出来たので、2作品を観てきた。 で、何かの感想を書かなければならないような気がして、ひさびさにnoteに書き込むことにした。 まぁ、…

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5か月前
17

人工知能と人工知能について対話してみた/ChatGPTと演劇的対話

ChatGPTに作品のタイトルとキャッチコピーからストーリーを類推させ、そこに関する対話を試みました。少々長くなりますが、興味深いことになりましたのでよろしければご一…

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1年前
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劇作家/演出家への手紙 演劇≒権力試論 『人形の家』を読みなおせ

打ちひしがれている。 正直、まだこんなことをしているのか、と嘆息するしかない。 一晩眠れない時間を過ごした。うんざりしているのも事実だ。だけど、黙っているわけには…

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1年前
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演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって④

記憶と再生 忘れられない出会いがある。 その人との出会いは1992年6月6日だ。明確にに日付まで記憶している。土曜日の夜、池袋の裏通りの方にある古いビルの会議室だった…

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1年前
4

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって③

話はなかなか始まらない 藤沼康樹という人がいる。日本の家庭医療におけるスーパースターの一人だ。いや、スーパースターなんて言うと本人は否定するかもしれないが、少な…

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1年前
7

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって② 

学部時代のゼミレポート誌『わかば』の編集後記に私が書いた文章を見つけた。もう30年も前の話だ。まだこの時点で演劇に関わってはいない。映画やCMの音楽に端っこの方で…

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1年前
2

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって①

専門領域はドラマになるのか? 山崎豊子の小説「白い巨塔」は1960年代前半に書かれ、医局講座制度の問題点と医学界の権力や利権構造を描いた名作であり、田宮二郎主演によ…

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1年前
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引用とオマージュの連環 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その5

『料理昇降機/the dumb waiter』はお陰様で全席予約完売、近隣市町要人や演劇関係者、美術関係者らを含む多くの方にご覧頂き「笑劇」と「困惑」の内に幕を下ろした。ご来…

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2年前
7

銃と毒薬 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その4

人は無意識のうちに「チカラ」の魔力に囚われる。 『料理昇降機/the dumb waiter』では暴力や権威といった「チカラ」が人を支配する様が描かれる。もちろんそれが主題で…

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2年前
3

中野弥生町 plan-B で考えていた日 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その3

『ダム・ウェイター』に関わるのは初めてではない。 たしか1997年の暮れかそのあたりだと記憶しているのだが、なんせ自分の記憶が定かでないしWikipediaにも書いてない(…

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2年前
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小林信彦『ビートルズの優しい夜』 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その2

まだ家庭用ビデオカメラが普及するちょっと前、具体的には1983年なんだけど、私は友だちを集めて8ミリフィルムで映画を撮っていた。中学校一年生。ジャッキー・チェンのカ…

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2年前
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館林美術館のこと 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その1

ワタクシが太田市に居を構え引っ越してきたのは2009年春。パートナーの出身地という以外に取り立てて縁故も土地勘も無い場所。新しい土地との出会いはワクワクするもので、…

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2年前
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コピーバンドの美学について考えた

コピーバンドの美学について考えた

ある芝居を観た帰り、不意に思い立ってザ・バッドボーイズの『MEET THE BAD BOYS』を愛車のカーステレオからBluetooth経由で爆音リスニングした。

ザ・バッドボーイズは、のちにオフコースに加入する清水仁が【ポール・マッカートニー役】で在籍した〈ビートルズのコピーバンド〉である。

え?コピー?カバーじゃないの?

違うのである。ジャケットをご覧頂きたい。

ビートルズのセカンドア

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演劇における「対話」再考

演劇における「対話」再考

知人が関わる演劇の公演が同日はしご出来たので、2作品を観てきた。
で、何かの感想を書かなければならないような気がして、ひさびさにnoteに書き込むことにした。
まぁ、つまり観劇雑記である。

二つの趣の異なる作品を観てきたのだが、どちらの作品も観終わった後に「演劇における対話の問題」について考えざるを得なかった。

それは私が書き手として言語/言葉/テキストと日々格闘しているから、どうしても問題意

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人工知能と人工知能について対話してみた/ChatGPTと演劇的対話

人工知能と人工知能について対話してみた/ChatGPTと演劇的対話


ChatGPTに作品のタイトルとキャッチコピーからストーリーを類推させ、そこに関する対話を試みました。少々長くなりますが、興味深いことになりましたのでよろしければご一読ください。

ChatGPTとの対話

演劇/微熱少年
次のタイトルとキャッチコピーから想像できる演劇作品のストーリーを教えてください。
タイトル:すべて重力のせいだ
キャッチコピー:被疑者は要人狙撃の現行犯
事件の真相をめぐり引

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劇作家/演出家への手紙 演劇≒権力試論 『人形の家』を読みなおせ

打ちひしがれている。
正直、まだこんなことをしているのか、と嘆息するしかない。
一晩眠れない時間を過ごした。うんざりしているのも事実だ。だけど、黙っているわけにはいかないと思い直し、こうして思いを綴ることにした。

https://note.com/saika_0702/n/ndccf29034690

大内彩加さんのこのnoteを目にしたのは2022年12月15日19時30分前後のことだ。Twi

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演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって④

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって④

記憶と再生

忘れられない出会いがある。

その人との出会いは1992年6月6日だ。明確にに日付まで記憶している。土曜日の夜、池袋の裏通りの方にある古いビルの会議室だった。

都市社会学の研究者である渡戸一郎先生が世話人をつとめる勉強会に参加させていただいた。「外国人」つまり異なる言語や文化背景を持ち、国籍の異なる人たちとの社会共生について考えるというテーマだった。

豊島区で外国人留学生を受け入

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演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって③

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって③

話はなかなか始まらない

藤沼康樹という人がいる。日本の家庭医療におけるスーパースターの一人だ。いや、スーパースターなんて言うと本人は否定するかもしれないが、少なくともその概念を日本社会と医療の「仕組み」の中に組み込み擦り合わせる取り組みをしてきた第一人者であることは間違いない。

私の病院勤務時代、2004年に始まる医師の卒後臨床研修必修化にむけて、医師がそのキャリアの最初期に学ぶべきことは何な

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演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって② 

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって② 

学部時代のゼミレポート誌『わかば』の編集後記に私が書いた文章を見つけた。もう30年も前の話だ。まだこの時点で演劇に関わってはいない。映画やCMの音楽に端っこの方で関わったりはしていたが、演奏だったりアレンジだったり…。

「誤解」と「わかりやすさ」の狭間に立つ

ゼミの指導教授だった山下淳志郎は「カトウくんはハバマスとか読みすぎたな」と言ってニヤリと笑い、「しかし、果たしてそれだけかな?」とつぶや

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演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって①

演劇/微熱少年vol.3『「小医癒病」中医癒人大医癒世』をめぐって①

専門領域はドラマになるのか?

山崎豊子の小説「白い巨塔」は1960年代前半に書かれ、医局講座制度の問題点と医学界の権力や利権構造を描いた名作であり、田宮二郎主演による最初の映像化から何度もそれが繰り返されただけでなく、後に1968年から69年の東大紛争に大きな影響を与えた、まさに「社会派」小説の金字塔ともいえる作品だ。

この作品が投げかけた社会へのメッセージは大きく、山本周五郎の「赤ひげ診療譚

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引用とオマージュの連環 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その5

『料理昇降機/the dumb waiter』はお陰様で全席予約完売、近隣市町要人や演劇関係者、美術関係者らを含む多くの方にご覧頂き「笑劇」と「困惑」の内に幕を下ろした。ご来場のお客様や応援してくださった方々、そして惜しみない協力をしてくれた館林美術館の皆さんとキャスト・スタッフに心から感謝をしている。

演劇という限られた時間空間で観るその一回性の構造に相応しくないくらい情報量の多い作品であった

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銃と毒薬 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その4

銃と毒薬 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その4

人は無意識のうちに「チカラ」の魔力に囚われる。

『料理昇降機/the dumb waiter』では暴力や権威といった「チカラ」が人を支配する様が描かれる。もちろんそれが主題ではないし、それだけの作品ではない。しかし、その「チカラ」に絡め取られ翻弄される二人の殺し屋を、原題であるThe Dumb Waiterのダブルミーニングが嘲笑うように、その「チカラ」の矛先はすべての人間に向けられているのだと

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中野弥生町 plan-B で考えていた日 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その3

中野弥生町 plan-B で考えていた日 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その3

『ダム・ウェイター』に関わるのは初めてではない。

たしか1997年の暮れかそのあたりだと記憶しているのだが、なんせ自分の記憶が定かでないしWikipediaにも書いてない(笑)資料を漁れば出て来ると思うんだけど、まぁ現時点では1997年の晩秋から初冬あたりとしておく。

「イッキさん」という友人が演出・出演した『ダム・ウェイター』に音楽音響で参加したことがある。彼は私が演劇に関わり始めた作品で舞

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小林信彦『ビートルズの優しい夜』 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その2

小林信彦『ビートルズの優しい夜』 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その2

まだ家庭用ビデオカメラが普及するちょっと前、具体的には1983年なんだけど、私は友だちを集めて8ミリフィルムで映画を撮っていた。中学校一年生。ジャッキー・チェンのカンフー・アクション映画が人気があり、ブルース・リーの没後10年に合わせたリバイバルブームがあって、剣道や柔道をやっていたことも相俟って、香港のアクション映画みたいな安っぽい自主製作映画(というにもさらに安っぽい映画)を作っていた。

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館林美術館のこと 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その1

館林美術館のこと 演劇/微熱少年 vol.2 『料理昇降機/the dumb waiter』について その1

ワタクシが太田市に居を構え引っ越してきたのは2009年春。パートナーの出身地という以外に取り立てて縁故も土地勘も無い場所。新しい土地との出会いはワクワクするもので、時間の隙間隙間に周辺を散策していたとき、白鳥の飛来で有名な湖沼近くに素敵な建物を見つけた。それが館林美術館だった。

山間地出身のワタクシは、なかなかファインアートに触れる機会を持てなかったが、大学進学を目指して都内予備校に通い始めた際

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