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エッセイ

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#介護

「介護物語の美談」なんて書けない(4)慣れか?諦めか?それとも

前回(3)から随分、時間が経った。
この間、介護から解放されたわけでも、問題が減少したわけでもない。
なにか書くことで、ププン、ププンプンという日常の追体験をしてしまい、また苛立ち苦しくなる気しかしなくて、あえて書く気がしなかった。
ところがどっこいの強迫観念。「テキスト芸人」としては、死ぬまで書きつづけてしまう、いちど書いたらもう止まらない誰か助けて赤いハイヒール♪状態というわけで、綴ることから

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「介護物語の美談」なんて書けない(3) デイサービス通所が決まるまで

おいおいおい、こいつ意識もなくギターなんか弾いてるぜ。
爪弾いてたアルペジオはステアウエイ トゥ ヘヴンかぁ?
天国への階段、、、4ヶ月ぶりかな?
ぜんぜん指が動いてないじゃないか。
右も左もギプスで巻かれたように重い。
アレ以前は無意識に右指と左指がシンクロしてたのに。
あの日から俺の自由が狂わされたのだ。
痴呆老人らを見て見ぬふりをして得られていた自由が奪われたのさ。

4ヶ月まえ、、
「胸が

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「介護物語の美談」なんて書けない(2) 91歳の犬殺しドライバーの家族に思いを馳せつつ

たとえば、こんな感じ。

車を運転する91歳の認知症老人に娘を轢き殺されそうになった。
娘は犬の散歩で横断歩道を歩いていたのに。
娘はギリギリ助かったが犬は轢き殺された。
娘はトラウマに悩まされている。

ようやく探し出した加害者の認知症老人に娘の両親と祖父は迫る。
「娘が危うくはねられかけた。このことを、どう思っているのだ!!」と。
認知症老人に一人の女の子を轢き殺しそうになったこと、犬を轢き殺

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「介護物語の美談」なんか書けない(1)

イライラする〜
マジもうめっちゃイライラするっ!!

在宅介護での、3食の用意で自由な時が分断される。
日曜使役で休日一日がぶっ飛ぶ。

それにしてもこいつらときたら、、
おいおい、なんで雨のなか植木の水やりをしとんねん。
役所からの郵便物を持ち込んで隠すなよ。
下着ぐらい毎日着替えろよ。
おい、家中の電灯付けまくるなよ。
うるさい、テレビの音量85かよ!!
冷凍物を冷蔵に移して腐らせるなよ。

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慈愛あふるる「介護物語」なんて書けない(序)

 両親の介護生活がはじまり2ヶ月ほどが経った。
 介護突入の当初、テキスト芸人としては、かなり面白いネタを手に入れたと思った。

 両親共にかなりボケまくっていはいるが、「介護物語」ではオトボケ老人として書き上げ、そのお世話を人情とユーモアがあふれるヒューマンタッチなドラマに仕立てるなんて分けないさ、と高を括るのに「秒」もいらなかった。

 さらには、介護初心者が四苦八苦というより七転八倒しながら

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