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気候変動リスクと新しいGDP

「今年のGDP予想は...」等のニュースがすでに出回っている。GDPは私たちが経済状況を鑑みる上で外せない重要な経済指標の一つである。

GDPといっても実際は色々なバリエーションがある。しかし、近年それらの従来のGDPを大きく変える「環境インパクトを考慮したGDP」がOECDより提唱されている。そこで今回は、OECD等のデータを基に少し「環境インパクトを考慮したGDP」の日本の現状について調べてみた 

「環境インパクトを考慮したGDP」とは

従来のGDPと異なる点は大きく二つ。(1)負の経済影響(環境汚染等)も考慮する (図表のピンクのところ ) (2) 使用された自然資源、及びそれらを使用した際の効率性についても考慮する (図表の黄色、緑色のところ )

これまでは 

GDPは「労働力」「資本」「技術革新等(TFP)」の三点をメインにはかられていた。しかし「環境インパクトを考慮したGDP」は、以上の二つを追加で枠組みに取り込み、「経済的成長がどの程度環境への影響を犠牲にして遂げられたか」の視点から数値が計算されている。

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(OECD Greening Productivity Measurement)

つまり、この「環境インパクトを考慮したGDP」を向上させるには 従来のように資本や労働の「量」及び「生産性」を高めるかに加え、自然資産の使用における生産性を高めること、環境汚染の影響が少ない技術を用いて生産活動を行うことが必要である。

日本の場合

あまり最新のデータがなかったが...

1 環境への負の影響 (少ないほどいい)2 自然資源の使用量 (少ないほどいい)

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GDP成長率

オレンジが通常のGDP、青が環境への負の影響を考慮したGDP、灰色が 環境インパクトを考慮したGDP (Environmentally Adjusted Multifactor Productivity)

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黄色が環境インパクトを考慮したGDPの成長率 (高い方が良い)

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まあまあな気がする。そもそも最近のデータがないのであまり参考にならないが...

日本の「環境インパクトを考慮したGDP」だけ見ていていいのか

しかしここで注意すべきなのが "Pollution Haven" (汚染天国?)の存在である

環境汚染等への規制が厳しくなる中、日本企業の一部は海外のより規制が緩い地域に生産拠点を移転しているかもしれない

下記はOECDデータより、日本への輸入品の生産に使われた酸化炭素排出量である。この数値が高いということは、私たちは製品(例えば日本企業が日本向けの商品を海外で生産し日本へ再輸出する場合)を輸入することで、間接的に海外の環境汚染(輸入品を生産するために海外で放出された二酸化炭素)に寄与してしまっているということである

よっていくら日本の「環境インパクトを考慮したGDP」は改善したとしても、本当はただ他国のその数値を悪化させ、責任転嫁しているだけかもしれない

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よってこれらの regulation arbitrage(規制アービトラージ)の存在の可能性がある為、私たちは国レベルだけでなく他国と連携して環境法規制を推進していく必要があると思う。また、これらの新しい指標のように、経済指標を増やしたり、変更することで「環境問題」をより政策の枠組みに取り入れることが今後より一層期待されると考える。


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Reference

• Akira, Y. (2012) 所得格差と家庭のエネルギー需要.
• Bretschger, L. (2015) ‘Climate policy: Prices versus equity’, VOX CEPR’s Policy Portal. Available at: http://e-citations.ethbib.ethz.ch/view/pub:166137.
• Chancel, L. et al. (2015) Carbon and inequality: from Kyoto to Paris Trends in the global inequality of carbon emissions (1998-2013) & prospects for an equitable adaptation fund.
• Grossman, G. and Krueger, A. (1991) ‘Environmental Impacts of a North American Free Trade Agreement’, National Bureau of Economic Research, (3914). doi: 10.3386/w3914.
• Ministry of the Environment (2015) Submission of Japan’s Nationally Determined Contribution (NDC).
• OECD (2014) ‘Green growth: environmental policies and productivity can work together’, pp. 2014–2015. doi: 10.1371/journal.pgen.1000539.
• OECD (2018) Greening productivity measurement POLICY PERSPECTIVES environmentally adjusted multifactor productivity growth.
• Stavins, R. N. and Stowe, R. C. (2016) The Paris Agreement and Beyond: International Climate Change Policy Post-2020. Available at: http://belfercenter.ksg.harvard.edu/publication/26833. (Accessed: 28 May 2020).
• Tracker, C. A. (2020) Japan | Climate Action Tracker. Available at: https://climateactiontracker.org/countries/japan/ (Accessed: 27 May 2020).







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