図1

「VUCA時代の思考と訓練」から

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三点に注目したい 
 1.論理的思考は、VUCA時代で戦うための「入場料」
 2.企業のドライバーや差別性は、「非線形的思考」でもたらされる
 3.教養は必須であり、情報ではなく、「自分の考え」が重要

関連代表記事 一般社団法人 日本経済団体連合会 2018年12月4日
www.keidanren.or.jp/policy/2018/113_honbun.html
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A 教育改革は必須である。そして、教師が不足している事実を認めないといけない。日本は相変わらず、師弟制のような孔子的思想にとらわれている。年上の方が「出来る」という「前提」で、ものごとを見ている。


B 言葉でVUCAというが、その本質を探ろうとしないのであれば、発するだけ無駄である。リテラシー教育と称し、リベラルアーツに重点を置いても、それがなぜ必要かを理解できねば、グローバルで戦える一流人財は育たない。日本の面白い特徴として、嘗ての躍進時代に、ホワイトカラーをブルーカラー化して戦力にするという戦術があった。当時にはマッチしておったが、今では、単なるコスト増のレガシーな仕組みでしかない。日本人として、世の中に人財を流動させるというのは、どういうことなのか?真摯に考える必要がある。


A 少し歴史を振り返ると、日本の大躍進時代は、効率化の時代でもあった。即ち、アメリカという明確な目標像が提示されていたため、そこに向けて合理的に効率的に突き進むことが主要戦略となった。ここで必用なことは、科学的で論理的な思考である。現場ベースでの思考に対して、経営レベルでのロジカルシンキングを加えていく。論理性を戦略的に強化する場合、入力が同じであれば出力が同じになる。即ち、業界として同質化していくのは言うまでもない。


B 入力⇒(BOX)⇒ 出力。科学的考察や論理的分析、そして理性的判断というのは、入力と出力を1:1で紐づける、即ち、再現性を上げ効率を高める策・思考形態である。よって、効率化するものの、企業戦略としての差別化要素が欠如するのは、いうまでもない。これの行き着く先は、同じような家電が陳列された家電量販店である。


A 入力と出力が1:1で紐づく処理を考えた場合に、差別化を実現させるには、コストと速度をいじる必要がでてくる。圧倒的に安く、そして、圧倒的に早く作ればよい。これを現場観点での改善フローも合わせて実現し作り込んできたのが日本であり、強烈な競争力を手に入れた。トヨタ式、カイゼン、Just In Time…などである。


B しかしながら、時代は変遷する。科学的で論理的な思考をベースにした場合、出力から入力を逆演算できる。即ち、リバースエンジニアリングである。更には、新興企業がOEMといった形態をとり、専業化することで、規模をとり価格を下げるという正の循環を実現してきた。鴻海のような企業が出現する中で、部品調達力等も含めて、安く・早く作る部分で真っ向勝負するのは非現実になっている。


A デジタル革命で起こったのは、時間や空間を自在に連結させることである。これにより、時代が変化する速度が明らかに早くなり、時代に刺激を与える変数が飛躍的に増加した。起きることは、入力が複雑化した影響で、出力という未来を捉えられなくなったということである。入力の数が増え、それぞれの入力因子の状態が次々と変わり、更に入力同士の相互依存関係が存在する。この高速で半ば量子的にも動く超複雑系がVUCAである。ある時間局面で区切り、「気合で」論理性で勝負したとしても、2つの問題が起こる。1つは、捕捉すべきファクトが相互依存・マルチ化しており、捕捉しきれないということ。2つは、分析終了時に時代が変わっているということ。表現をかえると、入力→(BOX)→出力において、「入力同士の相互作用も多分に存在し、何が正しい入力かわからない」という状態でもある。よって、出力を捕捉できない。


B 重要なことは、不確定で高速で動く環境をいかに捉え、どのような価値を世に届けるかということ。


A 別の観点では、プロダクト/サービス的充足度の向上した時代であり、消費者は「自分の生活や人生に対してどうしたいのか」という高度な判断軸で効用を感じることになる。単なる価格や機能では土俵にすら上がれない。個人の心情という不定形で不確定な要素を捉え、そこに価値を届け、効用を引き出す必要がある。


B このような時代において重要になるのが仮説思考であり、仮説思考を支える主要因子が直感や感性といった、人間的であり非線形な処理情報である。


A 人間的な非線形思考は非常に重要であるが、日本躍進という時代背景と、科学や理性にボコボコにされるという前提から、軽視されてきた。直感に対して理由を問うと「なんとなく」といった返答が返ってくる。ある意思決定現場において、科学的見解、理性的見解、そして人間的見解があった場合、人間的見解は責任が取れないため、即刻却下されることになる。


B VUCAへの対応やデジタルトランスフォーメーションというが、従来の論理的思考に合いやすい組織の形態を、非線形思考に適合する形態へと変えなければ、まずそれらには対応できない。やるべきは、「人間的な感性や直感」を頂点にして、これらを、科学・論理・理性でフルサポートするフォーメーションを組むことである。


A 騎馬戦の騎士の位置が人間的非線形性であり、それをがっちりと支えるのが、論理的で理性的な思考である。


B CEOが自ら感性・直感機能を担っても良いし、その能力がないのであれば、CEO直下に感性・直感統括を配置し、ここに権限を委譲するような組織構造が必用になってくる。


A VUCAに対応するには、人間性と論理性の両方で戦わないと言えない。

  X軸: 直感・インスピレーション ←→ 論理・科学
  Y軸: 感性 ←→ 理性

 このようなマトリクスを切ったときに、「論理科学 × 理性」と「直感 × 感性」を行き来する連続性が必用となり、共に一級スペックである必要がある。即ち、現状を知らねば直感は意味がない。直感や感性を利用しなければ、複雑系に対する解(仮説)を見出すのは困難となり、スピードが下がり、差別性が低下していく。


B 「思い」→「仮説」→「ファクト」→「仮説」→「ファクト」→…といった流れであり、「仮説」へと移行する段階で、感性や直感がフル活用されることになる。


A すべての根底にあるのが「思い」という項目。これは企業に対する最も重要なエンジンであり、差別化要素になっており、VUCA時代での必要性がますます高まっている。個人的に強烈な動機や生きる上での芯(軸)、或いは、「本当の」理念である。言うまでもないが、「思い」は人間的よそであり、合理的に判断されるものではない。

 

B ロジカルシンキングのような思考は必須であり、戦うための入場料といった位置付けである。冷静に考えると、論理的に理性的に問題を抽出し本質課題を見極め…と出来ている日本人が限りなく少ないことを考えれば、グローバルビジネスで戦う土俵にすら上がっていないことになる。まずは、きっちりとこの土俵にあがるべきでる。そして、土俵にあがる過程でも、「直感・感性」の重要性を認識しておく必要がある。


A 言葉を変えてみると、人間的非線形の力は、超複雑系から「みなが納得する」「みながやりたい!と心昂らせる」ような解を導出する力でもある。この人間的非線形の思考ルートにより、構想を練ることが可能となり、皆がイキイキ・ワクワクとするビジョンを示すことが可能となる。そして、ビジョンを実現させるために行動可能な戦略に落とし込むが、ここでも人間性は当然加味されることになる。このような感性や直感といった人間的非線形な成分は、近年ではデザイン思考といった言葉で語られることも多い。


B デザイン思考と称して、すぐにフレーム化するケースを度々目にするが、あれはお勧めしない。フレーム化していくと理解しやすくなるが、思考の非線形性がどんどんよわまっていく。むしろ、自らの感性を磨き、想像を膨らます練習をする方が良いだろう。感性を磨くためには、多くのアート、ポエム、或いは高尚な人間に触れることが必用である。そして、想像を膨らませ武器にするためには、多くの知見に向き合い考え、想像する必用がある。このような中で、自分の「軸」を醸成していく。


A 入力→(BOX)→出力と書いた場合に、出力が発想だとする。直感や感性といった人間的非線形思考はBOXに相当する。アートや哲学を学ぶことはこの非線形処理というBOX機能を鍛え上げてる状態である。BOX機能というのは、超複雑系から示唆を引き出す力である。そして、多くの知見を学ぶというのは、(BOX)の中に有効な手がかりの素を散りばめるようなものである。VUCA時代の入力が来た時に、ザクっとBOX内の手がかりを俯瞰し、非線形につなぎ合わせ、そこから示唆を得て、出力として出していく。


B まとめると、論理的思考・科学的思考・理性的判断…といった項目は、VUCA時代で戦うための入場料であり、最低限身に着けていないと話にならない要素である。その上で、感性や直感といった人間的非線形思考をフル活用する必要があり、アートや哲学などを通じて感性を磨きながら、多くの知見を得ていく必要がある。多くの知見というのは、芸術、文学、歴史、ビジネス、政治、経済、植物学、考古学…といった要素であり、概要を頭に入れる「のではなく」、其々に対して自分の「考えをもつ」ことを意味する。



*参考文献
 lifehacker 世界最高の授業。IDEOに学ぶ「デザイン思考」の真髄──2014.3.7 Night School
 デザイン思考が世界を変える TimBrown 早川書房
 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか 山口周 光文社新書

/2018.12.11 JK

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