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旅のうた(歌日本紀行)

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#旅のうた

(第18回)原監督と潮来笠、粋でいなせな若大将

(第18回)原監督と潮来笠、粋でいなせな若大将

 今年の日本シリーズはソフトバンクの圧勝で終わった。無念そうなジャイアンツ・原辰徳監督の顔がテレビに写った。私はなぜかこの人の顔を見ると、脳内にある音楽が流れる。『潮来笠』である。

 原監督のあの「グータッチ」のポーズと表情が実に粋でいなせな潮来笠。原監督と橋幸夫さんは世代も違い、見た目が似ているかどうかは個人の感じ方なので、強制はしないが、私のなかでは実に見事な脳内コラボとして存在する。

 

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(第16回) 「あずさ2号」と信濃大町の立ち食いそば

(第16回) 「あずさ2号」と信濃大町の立ち食いそば

 登山で有名な出版社「山と渓谷社」の創業90周年を記念した上映会の案内があった。神保町のミニシアターで「山岳映画」の大特集が組まれるという。井上靖原作『氷壁』なども上映される。たのしみな催しだ。

 もうだいぶ前のことになる。一時山岳小説にのめり込んでいた時期があった。厄年を迎えた、心身ともの「倦怠感」から、あらゆることに手がつかず、ただ「非日常」の感覚だけを追い求め、ベッドの中で、(過酷で尊くて

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(第15回) 欅坂46が歌う「渋谷川の新風景」

(第15回) 欅坂46が歌う「渋谷川の新風景」



稲荷橋付近の変貌しつつある渋谷川の景色。

 神宮の杜にきれいな水がある。明治神宮庭園内に湧き出る清正井(きよまさのいど)である。ここはずいぶんと前からパワースポットとして認知され、高感度女子たちの携帯待ち受け画面にもされている有名な場所で、ある川の源流のひとつになっている。渋谷川である。

 童謡『春の小川』がこの渋谷川をモデルにして生まれたというのは、ずいぶんと言われていることなので、ご存

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(第11回) みんな一度は埼玉にやられる

(第11回) みんな一度は埼玉にやられる

 このまえ、ある知り合いのおっさんが、カラオケで、八神純子の『思い出は美しすぎて』を熱唱していた。「なぜにおまえが」とツッコミを入れると、ドッとその場が湧いた。そう、いま世の中は「なぜにおまえが」に見張られている。

 たとえ同じコメントだとしても、知識人や有名人にならないと「その人が言う理由がない」ということで、世間には披露されず、たとえ革新的なアイデアだとしても、無名のクリエイターだと会議の遡

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(第10回)  象徴としてのフリーウエイ

(第10回) 象徴としてのフリーウエイ

 ユーミン(松任谷由実)の歌を扱うのはこの稿において二回目なので迷った。だが最近、ある本のことを思い出し、やはり触れておきたいと思うようになった。1985年に発行された、笠井潔のエッセイ集『象徴としてのフリーウエイ』(新時代社刊)である。笠井氏は反ポストモダン的思想家・評論家で、学生時代、彼の著作にかぶれていたわたしは、オンタイムでそれを読んだ。

 ユーミンの作品、『ひこうき雲』『ベルベット・イ

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(第7回) ”神田川”沿いの青春

(第7回) ”神田川”沿いの青春

↑新宿高層ビル群が間近に見える神田川沿いの風景。

 「神田川」

 言わずと知れた70年代フォークの名曲である。乱暴に言うと、「青春の象徴」「純愛の象徴」「絶望のような希望」、そんなところだと理解する。

 私はこの歌詞に歌われた時代よりは下の世代なので、青春とは、「キャベツばっかりを齧っていたり」(かぐや姫の別の歌詞)、いちいち銭湯に行かなければならないような「しんどい」もので、兄貴たちは、い

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(第6回)明治の情景が浮かぶ「無縁坂」を歩く

(第6回)明治の情景が浮かぶ「無縁坂」を歩く



無縁坂。不忍池方面から東大医学部方面を望む。

 この歌を最初に聞いた時に、なんて暗い歌なのだろうと思った。そして、いまはなんて素敵な歌なのだろうと思っている。この歌は、出会うたび、聞くたびに、人々にさまざまな思いを抱かせる。この歌の舞台になった『無縁坂』も、きっとまた、そんな場所なのだと思う。

 東京・上野の不忍池の西側に「無縁坂」は実在する。なんとも情感のある名前である。歌手のさだまさし

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